死とは何か?悼むとは何か?
死とは何か?
生とは何か?
残された人にできることは何か?
そう悩む人は多い。
解答にはならないものの、一つの世界を見せてくれる本を紹介する。
悼む人 天童荒太
悼む(いたむ)
人の死をなげき悲しむこと
死とは忘れ去られること。何でもない死者として忘れ去られること。
そして悼むとは、覚えておくこと。
誰を愛し、誰に愛され、何を感謝されたかを心にとどめておくこと。
人を悼むことを続ける人と、周りの人の目を通して描かれていく作品である。
かなり冗長で半分くらいにしても十分な気はするものの、それを差し引いても良い作品である。
科学的に言えばすべての命は死んだら何もなくなる。
魂が残ったりしない。
しかし人の心の世界では、死んでもその人のことをしっかりと覚えている人がいる限り生き続ける。
誰からも忘れさられた瞬間のその人は完全に死ぬ。
この世の中にいたことを忘れさられる。
残された人ができることは、その人が亡くなったことを嘆き悲しみ、その人のことをいつまでも忘れないということである。
大切な人を亡くしてずっと深く悲しんでいる人に、「早く忘れなさい」というべきではない。
「いつまでも覚えて居たらいい」「いつでも思い出して泣いたらいい」、そういう寛容さを持った社会になって欲しい。