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県内無敗も気持ちは挑戦者          秋春夏3冠を手に入れてみせる       青森山田高校

撮影・文◎工藤璃子

涙の夏から重ねた努力

「このチームは去年の夏、泣いたところから始まりました」。
 昨夏の青森大会、ノーシードから頂点を狙っていた青森山田は順調に勝ち上がり、決勝戦を迎えた。
 相手は弘前学院聖愛。初回に3点先制、その後も追加点を挙げるなど、自分たちにいい流れがきていた。しかし6回に同点とされ、緊迫した状態で試合は終盤に突入する。
 8回ウラ、先頭打者への初球を捉えられ、打球は放物線を描いたまま外野スタンドへ。この一発に泣くこととなり、1点差のまま試合は終了した。

夏が近づき、選手たちの表情もより真剣に

 現3年生のなかには当時ベンチ入りしていたメンバーも多く、目の前で起きた光景や味わった悔しさは忘れることのできないものであっただろう。
 そのようななかでスタートした新チームは、次々と結果を残していく。昨秋の県大会を制し、東北大会では4強入り。県大会初戦では聖愛に完封勝ちし、先輩方のリベンジを果たすこともできた。
 それでも、慢心することはなかった。 
 主将の森川大輝(3年)曰く、「秋勝てたからといって春も絶対勝てるということはない」という気持ちで自分たちのレベルアップを図った。
 体力・バッティング・守備すべてのことにおいて数を意識。同時に、質も求めて冬場のトレーニングに励んだ。

この日は近隣球場と学校グラウンドに分かれて練習を行った


成長が見られた春、三本柱の存在

 迎えた春、成績としては秋と同じく県優勝・東北ベスト4だったが、大きな収穫があった。
 昨秋はエース・堀内友輔(3年)だけに頼るような状態だったが、他の投手陣も台頭。馬場大河(3年)や左腕・木村虎鉄(3年)、180cmの長身が武器の相馬皇士郎(3年)が力をつけてきたことで「ただでは倒れない粘り強さやしぶとさ、いい意味でのしつこさが出てきた」と、脇野浩平部長は評価。
 青森山田の信条である「守りからリズムをつくる」ことが確立されてきている。

脇野部長はノッカーだけでなく、ピッチャー役となることも

 チームで特に中心的な役割を担うのは堀内、森川、馬場の3人。それぞれどんな選手か、脇野部長に伺った。
 2年生の頃からエースとして活躍する堀内は、仲間からも一目置かれる存在。前向きな発言で、グラウンド内外問わずチームを支え、けん引しているという。
 主将の森川は、まさにチームの柱であり、顔。発する一言やとる行動ひとつに 明るさ・たくましさ・おおらかさがあって、彼なしではこのチームはないと言っても過言ではない。
 馬場は副主将を務めていて、投打の要。昨夏の最終打者としての悔しさは、彼だけが知るものだろう。故に「今年こそ」という想いは誰よりも強い。

左から順に堀内、森川、馬場


優勝へのカギは「バッティングの向上」

 この夏の優勝候補である青森山田は、大会までの残り少ない期間、打撃面の強化に力を入れている。
 東北大会準決勝で見られたように、相手とほぼ変わらないヒット数でも勝つことができなかった。
「打線がつながらなかったり得点圏にランナーがいるときに1本出なかったり、残塁が多かった」と森川主将。
 脇野部長も「打撃面はもう一段、二段アップさせたい」と話しており、全体練習のうち打撃練習に割く時間を多くして取り組んでいる。

夏までに打撃力をどこまで高められるか

 目指すところはもちろん。青森の頂点。特に今夏は3季連続優勝が懸かっている。
「チャレンジャーのつもりで、一戦必勝。今年こそ優勝旗を、91人全員の力で掴み取りたい」。
 その先に待ち受けるのは、5年ぶりの聖地。全員野球で駆け上がっていく。

練習後、おにぎりを頬張りながら


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