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水を酒だと思って飲む (スズキナオ) 〜『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』より公開! ⑦〜

こんな状況でも、楽しいお酒の飲み方はあるはず

若手飲酒シーンを牽引する人気ライターのパリッコ(『酒場っ子』)とスズキナオ(『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』)が編集、執筆を務める飲酒と生活の本『のみタイム』
1杯目は100頁以上にわたり「家飲みを楽しむ100のアイデア」について考えました。日常を楽しくする、使えるアイデアが満載!

2020年の前半、わたしたちはこんな「のみタイム」を過ごしていました。

086 水を酒だと思って飲む  (スズキナオ)

(パリッコ/スズキナオ『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』より)

 私の場合、家で飲んでいる間はちびちび、ダラダラと飲み続ける。誰かとオンライン飲みをする場合でも、ジョッキに薄めのチューハイを作って少しずつ飲んでいく。お酒を作るために何度も席を立つのも面倒だし、自然と酒量が減ってくる。で、適度なほろ酔い状態になったら、あとはすぐ寝てしまう。そんなこともあって二日酔いが減った。

 その一方、休肝日を作るのが難しい。家にいるとどうしても気持ちが窮屈になってくるので、せめて酒の楽しみだけは確保しておきたい。しかし、二日酔いという派手なかたちではないにせよ、やはり連日の酒が体に疲労を蓄積させていくことはあるだろう。うーむと悩み、苦肉の策として考えたのが「水を酒だと思って飲む」という方法。

 ここ最近の私は、台所でグラスに水を汲んできて、そこに甲類焼酎を適量注いで薄めの水割りを作って飲んでいたのだが、たまに「あれ? 焼酎入れたっけ? まだだっけ?」とわからなくなる。で、飲んで確かめてみても焼酎が入っているような入っていないような、釈然としない。だいたいかなり薄めに水割りを作るものだから、水と似た味なのである。ってことは……もう、水でいいんじゃない?

 試しに台所で水を汲み、おつまみのナッツの入った小皿とともに手元に並べる。アルコールなしのただの水である。いつも通りパソコンに向かい、ツイッターを見たり、ニュースをチェックしたりして、その合間にグビッとひと口、水を飲む。ナッツを少しほおばり、塩気を流すように、水を飲む。うむ、思ったより全然いけるぞ。自分をだませる。

 そもそも水って、ちゃんと味わうと少し甘い(気がする)。酒の持つ甘みが、すでに水にもあるのだ。まず重要なのは他のことをしながら飲むこと。私であれば深夜のインターネット徘徊だ。あえて興味を別の何かに向けることで”よそ見状態”が生まれる。よそ見をしながら飲めば水と酒の差はそれほど気にならない。あと、飲む水を常温にするのも大事かも。そのほうが酒っぽい甘みが感じられる気がする。「まったく酔わない」という点を除き、水はだいたい酒と同じであることがわかった。(ナ)

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パリッコ/スズキナオ(編著)
『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』
2020年8月5日発売 発行:スタンド・ブックス 本体1,500円(+税)ISBN:978-4-909048-09-7 C0095 A5変型判 並装 132p
カバーイラスト:石山さやか ロゴ:スケラッコ デザイン:戸塚泰雄

スズキナオ(編著)
1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『メシ通』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、パリッコとの共著に『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

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