2022年4月4日に刷新される東京証券取引所の市場区分
曲学阿世(きょくがくあせい)
→ 真理を曲げ世評にへつらい、人気を取ろうとすること。
世評にへつらっているかどうかは、施策を行った時点ではなんともいえない。
上手くいけば、手のひらを返して絶賛されることもあるし、上手くいかなければ、ほら見ろと罵られる。
ただ、なにもしないよりはマシだということは主張しておきたい。
そして、2022年4月4日に新たに変わろうとしている仕組みがある。
東京証券取引所の市場区分である。
4つの区分から3つに再編される東京証券取引所
市場第1部、市場第2部、マザーズ、ジャスダックという言葉を聞いたことがある人も多いと思うが、東京証券取引所の市場区分を指している。
くり返しになるが、この4つの区分が、2022年4月4日から、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つに再編される。
そして、プライム市場には1,841社、スタンダード市場は1,477社、グロース市場は459社が上場することになる。
ざっくり分別すると、全体の約半分の5割がプライム、4割がスタンダード、残りの1割がグロースという割合となるわけだ。
近年の歴史を振り返ると、2013年に東京証券取引所グループと大阪証券取引所が経営統合して、日本取引所グループが発足した。
ただ、これまでの市場区分は、それぞれの取引所の従前の区分をそのまま維持したものであったため、市場コンセプトが曖昧だと言われ続けていた。
また、投資家からは市場区分を投資の目安にするためにも、利便性の向上を目的とした基準の明確化が求められていたという事実もある。
加えて、この座組では上場企業の資金調達の非効率化にも繋がるので、企業価値向上の妨げになるとの意見もあった。
そんな、2013年の編成から10年近く続いたマーケットの意味合いが変わろうとしているのである。
市場第1部、いわゆる東証1部が最上位にあって、その次にある市場第1部、つまり東証2部が二番手の市場というのが一般的な解釈だ。
さらに、ベンチャー企業、スタートアップが上場するマーケットが、その下にあるマザーズやジャスダックだという認識の人も多いのではないだろうか。
ではなぜ、なんとなくではあるが、基準となってきた市場を再編する必要があるのだろうか。
その理由は、海外投資家を日本のマーケットにより巻き込んでいくためである。
日本市場の課題
日本のマーケットは海外から相手にされていないといった話を耳にしたことがある人もいるのではないだろうか。
昨今の実態は、国内株の売買状況の全体の6〜7割を海外投資家が占めている。
とはいえ、東京証券取引所は常に海外投資家たちから避難を受けていた。
国内取引所の統合や取引時間の延長、複雑かつ多様化する取引形態を可能にするシステム構築など、指摘されてきた課題の多くを克服してきたという実績がある。
だからといって、まだまだ全体の取引額を他の海外の大きなマーケットと比べると圧倒的に小さい。
海外マネーを日本市場にもっと投下しなければ、失われた20年とか30年といわれている日本に将来がないことは、マーケット関係者は十分理解しているわけだ。
今回の再編の大きな意味もそこにあり、まずはシンプルに新たな市場区分の名称が英語で統一したといったところだろうか。
プライム、スタンダード、グロースというわかりやすいネーミングだけでも海外投資家からすれば、プラスに転じるのではと期待されているわけだ。
新しい3つの区分紹介
プライム市場
まずは、最上位の位置付けとなる、プライム市場。
プライム市場に求められることは、なによりも世界経済をリードするという役割だ。
企業価値を向上させるため、海外投資家との日常的なコミュニケーションが不可欠となる。
そのため、流通株式時価総額はこれまでの市場第1部(東証一部)のときの10億円以上から100億円以上、流通株式比率も5%から35%以上に基準が引き上げられる。
この基準に加えて、今よりも一段高い水準のガバナンスが求められる。
スタンダード市場
次にくるのが、スタンダード市場だ。
スタンダードという言葉のとおり、日本経済の中核をなしていく企業がここに上場するということになる。
一定水準以上のガバナンスが必要なのは、プライム市場と同様で、流通株式時価総額は10億円以上、流通株式比率は25%以上が基準となる。
当然、プライム市場と比べると基準が低くなるとはいえ、持続的な成長と企業価値向上への積極的な取り組みが重視されることになる。
そして、新たな投資家行動の1つとなるのが、このスタンダード市場からプライム市場に移行可能な企業の選定がというところだ。
つまり、スタンダード市場からプライム市場というより基準の厳しい市場に上がることができる企業を探し出す能力が投資家にも求められるということだ。
グロース市場
そして3つ目の区分になる、グロース市場。
新たな挑戦を重ねる企業という意味で、ベンチャー、スタートアップと呼ばれる企業がここに上場することになる。
まさにグロースの意味どおり、今後の成長を特に重視し、高い成長可能性を実現するための事業計画や進捗の適時適切な開示が求められる。
相対的にリスクの高い企業がここに集まるということになるが、その一方で高いリターンを期待できるというメリットもある。
このグロース市場が盛り上がれば、日本が盛り上がるということにも繋がるだろう。
注目されるコーポレートガバナンス・コード
市場区分もだが、もう1つ、注目されているのが、コーポレートガバナンス・コードだ。
日本語訳すると、企業統治指針となるわけだが、定量的な目標を示す必要が出てくるというわけだ。
具体的には下記のような項目がある。
・取締役会が持つべきスキル
・気候変動リスク対応への情報開示
・女性や外国人等の幹部登用
・人権尊重および労働環境への配慮
今からの時代は、より変化の激しい時代で予測不可能なことも多々起こりうるとされている中、企業としての指針を明確に示すことが企業価値を大きくするという考え方だ。
グローバルで考えるなら、こういった意識の部分についても明確に示さなければ、海外投資家たちの心を動かすことは難しいだろう。
まとめ
およそ10年間続いた日本のマーケットが変わろうとしている。
これが吉と出るか凶と出るかは短期的な部分では判断できないだろう。
とはいえ、少しでもグローバリズムに向き合おうとする姿勢については十分に評価できると思う。
2022年4月4日からの日本マーケットにも改めて注目していきたいし、これ以上、世界基準との差を拡げてはいけない。
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植田 振一郎 Twitter
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