アメリカのスタートアップの55%は創業者が移民
またこのパターンかと、つい笑ってしまった四字熟語だ。
本当にこういった古き良きを訴えるようなニュアンスの残っている言葉は多い。
まあ、言わんとしていることはわかるのだが、圧倒的に時代が違うことを改めて主張しておこう。
苦学することは美学ではない。
インターネットの普及で誰もが簡単に情報にアクセスできる時代だ。
そんな時代においては、苦学することは美学ではない。
なぜなら、若手起業家が世界中で活躍しているからである。
注目の若手起業家たち
Forbes(フォーブス)は2022年11月29日、北アメリカの若手イノベーターを表彰する毎年恒例の30 UNDER 30リストを発表した。
このリストでは、世界のさまざまな問題の解決に挑む起業家を中心に30歳未満の人物を20分野から各30人、計600人を選出している。
12回目となる2022年は、選出された面々の多様性が際立った結果となっている。
ほぼ半数が有色人種だった他に、5分の1以上が移民で出身国の総数は46ヶ国に上った。
また、25歳未満のZ世代の割合は過去最高の22%だった。
そして、今年の600人が起業のために調達した資金の総計は53億ドル(約7,400億円)で、昨年の10億ドルの5倍という飛躍をみせている。
2022年の主な顔ぶれは下記のとおりだ。
安価で安全な卵子採取を実現する企業のGameto(ゲミト)を創業して4,000万ドルを調達した、ディナ・ラデンコビックは27歳だ。
温暖化問題に取り組む企業のHeirloom(エアルーム)を創業して5,300万ドルを調達した、ノア・マックイーンは26歳だ。
他にも、一般視聴者と批評家から高い評価を得たコメディードラマの一流シェフのファミリーレストランに出演するアイオウ・エディバリーは27歳だ。
また、NBAのフィラデルフィア・セブンティシクサーズに所属するジョエル・エンビードもリストに入っていて28歳だ。
このように北アメリカだけでも、これだけ注目されている若手起業家がいて、圧倒的な資金調達が行われている。
移民という重要なキーワード
サラッと流しているのだが、上述した内容の中に5分の1以上が移民で出身国の総数は46ヶ国に上ったという部分がある。
私はここに注目している。
そのキーワードは移民だ。
Forbes(フォーブス)の記事でこんな内容のものがある。
記事の冒頭に注目してもらいたい。
それは、評価額の極めて高いアメリカの株式非公開企業の多くは移民が創業した企業だというものだ。
NFAP(アメリカ政策財団)の調査報告によれば、ユニコーン企業と呼ばれる評価額10億ドル以上のアメリカのスタートアップのうち半数以上は、創業者のうち少なくとも1人が移民だという。
半数以上の具体的な数字は55%となっている。
2022年に創業したスペースXも急成長しているが、そのCEOは今や知らない人がいないであろう、イーロン・マスクだ。
イーロン・マスクも移民の1人で、南アフリカで生まれたマスクは10代後半でカナダへ移り、留学生としてアメリカへ来た。
その後、H-1B就労ビザを取得するとアメリカでで長期的な仕事ができるようになり、2002年にはアメリカの市民権を獲得している。
そんなイーロン・マスクがCEOのスペースXは、2016年に4,000人だった従業員数が、2022年には3倍の1万2,000人に達している。
また、2016年に120億ドルだった企業の評価額は、2022年に1,270億ドルまで上昇し、アメリカで最も評価額の高いユニコーン企業になった。
同時に移民創業のユニコーン企業の中で最も評価額の高い企業となったわけだ。
スペースXは、ロケット開発とペイロード(積載物)の軌道投入で数々の偉業を達成してきた。
ロケットとペイロード輸送の主要な競争相手は、ジェフ・ベゾスが創業したブルーオリジンだが、スペースXは軌道に投入した衛星によるインターネットサービスの提供にも事業を拡大している。
最近有名になったのが、スペースXのスターリンクだ。
そのシステムはウクライナで利用され、対ロシア戦争で効果を発揮しているという報道を耳にしたことがある人も多いだろう。
アイルランド生まれで、留学生としてアメリカに来たパトリックとジョンのコリソン兄弟によって、2010年に創業されたのがStripe(ストライプ)だ。
IT業界にいる人なら聞いたことがあると思うが、オンライン決済企業であるStripeは、当時20歳前後だった兄弟によって著しい急成長を遂げてきた。
2016年の段階では従業員が380人だったのが、2022年には7,000人を超えているという規模だ。
また、企業の評価額は2016年の50億ドルから、2022年には950億ドルに上昇している。
1986年にインドで生まれ、14歳のときにカナダに移住、2010年にサンフランシスコに移住したアプアバ・メフタは、2012年に生鮮食料品デリバリーのインスタカートを創業した。
2016年には従業員約300人、企業の評価額20億ドルだったインスタカートは、2022年には従業員3,000人、企業の評価額390億ドルにまで成長した。
メフタは2021年にはCEO職を退いたが、エグゼクティブ・チェアマンとして留まっている。
また、インスタカートは、2022年末までに新規株式公開を申請すると見られている。
創業者が移民のアメリカのユニコーン
上述したとおり、NFAPの調査報告では、移民が創業したアメリカのユニコーン企業の中で最も評価額の高い企業はスペースXの1,250億ドル。
次いでStripe(ストライプ)の950億ドル、Instacart(インスタカート)の390億ドルと続いている。
上記3社に続く企業は下記のとおりだ。
Databricks(データブリックス):380億ドル
Epic Games(エピックゲームズ):315億ドル
Miro(ミロ):175億ドル
Discord(ディスコード):150億ドル
Gopuff(ゴーパフ):150億ドル
Grammarly(グラマリー):130億ドル
Faire(フェア):125億9,000万ドル
Brex(ブレックス):123億ドル
こういった具合いに移民の創業した評価額10億ドル以上の企業は319社で、企業の評価額の合計は1兆2,000億ドルに上る。
ちなみに、この額は、ブラジル証券取引所(9,250億ドル)やマドリード証券取引所(7,270億ドル)など、いくつかの国の株式市場で上場している企業の価値合計を上回っている。
また、Moderna(モデルナ)、Cloudflare(クラウドフレア)、Zoom Video(ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ)といった2016年以降に買収された企業や株式公開した企業もある。
このあたりを含めると、移民が創業したアメリカのユニコーン企業の評価額合計は、さらに高い1兆5,000億ドルに達するという。
まとめ
最期に、苦学することは美学ではないという主張を改めてするわけだが、世の中には無限にチャンスが溢れている。
けれども、そのチャンスに気づかない人が大半で、それを時代のせいにしたり自分自身の可能性を捨てる言動をしていたりするわけだ。
アメリカという国が強い理由の1つが、こうやって新興のスタートアップが次々に生まれる環境が整っているということは避けてとおれない事実だろう。
苦学と努力も全くレイヤーが違う話で、そもそも成功できるチャンスが格段に増えている現代社会をしっかりと見た方がいい。
そして、そのチャンスを手に入れるかドブに捨てるかは、あなた自身の選択と決断なのである。
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