生産年齢人口の定義の限界と働き方の多様性による変化
家給人足(かきゅうじんそく)
→ 生活が豊かで安定していること。
豊かであることの定義は人ぞれぞれなのは、もはや書く必要もないだろう。
一般的に豊かであるということは、経済が成長していて人々の生活に余裕ができることを意味するだろう。
そうなると、日本が抱えている少子超高齢化問題も解決するかもしれない。
最も、結婚制度や子育てに関する制度を見直す必要はあるかもしれないが、やはり子育てには費用がかかるというところがネックになるのは間違いないだろう。
参考までに、以前書いたこちらの記事を掲載しておこう。
0歳〜22歳まで子ども1人を育てる場合にかかる費用
今回はもう少し、日本の人口のことについて深堀りしていこうと思う。
生産年齢人口の定義と意義の限界
地域の生産力を継続するためには労働力が重要だということは理解できるだろう。
つまり、経済を回すには労働力となる人が必要だということだ。
この労働力を評価する指標として、生産年齢人口という定義があって、15歳〜64歳までの人口を意味している。
その対にあるのが、65歳以上の高齢者人口という定義だ。
そして、高齢化率は高齢者/全人口で求められるので、高齢化率が高いということは分母の生産年齢人口が小さいということをになる。
ただ、この指標は少々ズレていることが指摘されている。
というのも、生産年齢人口が対象としている15歳からという指標を考えたときに、15歳から働き始める人は圧倒的に少数派だろう。
2020年の文部科学省の統計では、高校進学率が95%を超えており、大学進学率も50%を超えている。
となると、生産年齢人口のうち20歳前半までは、就学のため労働市場に参加していない人口が相当数存在するということになる。
また、20歳代後半からの人口も実際に就業しているとは限らない点にも注意が必要だ。
要するに、生産年齢人口は実際に生産に従事しているという指標ではなく、単に年齢的な基準でカウントされた定義および指標であるといえる。
地域の生産力が継続できるかを見極めるには、年齢に関わらず、実際に就業をしてモノやサービスを作り出している人口が基準にならなければならないということだ。
働き方の多様性による変化
それから、年齢に関わらずという目線と同様に重要になってくるのが、性別に関わらずというところだ。
先述した大学進学率が50%を超えるという統計だが、この性別内訳をみると、男性の大学進学率が57.7%に対して、女性大学進学率は短大まで含めると58.6%となっている。
このデータから、男女間での高等教育を受けるところでの差はほぼなく、その後の労働者としての生産性にも差はないという見方ができる。
日本経済の根本はモノづくりだという声も聞こえるが、実際はほとんどがサービス業であることもポイントだ。
2019年度の国内総生産(GDP)によると、農林水産業が中心である第1次産業は1%、製造業中心の第2次産業は26%となっている。
いわゆるモノづくりのカテゴリの第1次産業と第2次産業を2つ合わせても30%に満たない。
一方で、サービス業を中心とした第3次産業は残りの73%を占めている。
このことからも、女性も就業して活躍できるサービス関連の産業が現代の日本経済の中心となっていることが理解できる。
女性の活躍の場を拡げていくことが、日本経済の活路を見出すことになる可能性があることを知っておきたい。
出生率1.8を達成している北欧から学べること
女性の活躍の場を拡げていくことと同時に考えなければいけないのが、超少子高齢化社会についてだ。
2015年9月に当時の安倍政権下で叫ばれたアベノミクスでは、希望出生率1.8の実現も掲げられた。
人口減少を食い止めなければいけないということは十分に理解できる。
そんな中、厚生労働省が2021年6月4日に発表した2020年の人口動態統計によると、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.34だった。
前年の2019年から0.02ポイント下がり、5年連続の低下となったということで、まるで達成できていない。
では、出生率1.8は不可能な数値なのかというと、必ずしもそうではない。
実際に出生率1.8を達成している国も存在し、北欧福祉国家のノルウェー、スウェーデン、デンマークなどが挙げられる。
例えば、ノルウェーでは育児休業中に元の給与の80%が保証され、1年間仕事を休むことができる。
それから、復職時に女性が休業前と同じポジションで働くことができるということも安心材料となっている。
他にも、男性の子育てのための育児休業が割り当てられている、パパ・クオータが設けられていることも覚えておくといいだろう。
その結果、ノルウェーの統計局の調査では、大学を卒業した女性の方が40歳時点で子どもを持っている割合が高いという。
まとめ
stak社の拠点は広島だということは何度も述べていると思うが、そんな中国地方の中核都市である広島と東北地方の中核都市である仙台を比較したデータがある。
両都市の出生率にスポットを当てると、1995年のランキングでは広島県は32位で、宮城県は36位と大きな差はなかった。
ところが、2020年のランキングでは、広島県が16位で宮城県は46位と大きな開きが生まれている。
この差がどこに生じているのかというと、子どもの数が増えるにしたがって出産した女性の就業率が増加しているかどうかという点だ。
結局、女性就業率の増加がポイントになっているということになる。
2020年4月時点の厚生労働省が発表している都道府県別待機児童率を比較しても、広島県が0.06%に対して宮城県は0.76%と10倍の開きがあることもわかる。
なにも地元である広島が仙台よりも優秀な地方都市であるということをアピールしているわけではない。
社会も多様化に上手くリンクしていかなければ、経済の発展もないということを改めて認識する必要があるということを主張したいのである。
それだけ、少子化という問題は根が深いということはしっかりと理解しておくべきだ。
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