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おしどり夫婦の由来である鳥に隠された浮気という真実

関関雎鳩(かんかんしょきゅう)
閑閑は鳥ののどかな声で、夫婦の仲が非常によいこと。

おしどり夫婦という言葉がある。

言わずもがな、仲睦まじい夫婦のことを指す言葉だ。

その由来は、中国の故事の鴛鴦(エンオウ)の契りだといわれている。

鴛(エン)はオスのオシドリ、鴦(オウ)はメスのオシドリのことを指す。

そんな鴛鴦の契りの概略は下記のとおりだ。

中国の宋の王が、ある家来の美しい妻を奪い取り、その家来は自殺した。

それを知った妻も夫と同じ墓に入れてほしいと遺言を残して自殺した。

ところが、王はわざと二人の墓を別々に隣り合わせに作った。

すると、それぞれの墓から木が生えて枝や根が絡み合うほどに成長した。

そこにオシドリのつがいが巣を作り、寄り添って鳴き続けたという。

その根本には、まずオシドリが開けた環境である水辺に生息し、かつオスとメスの差が大きい鳥であるため夫婦のペアが見た目にわかりやすかったということがあるだろう。

また、木の洞を巣にし、オスはメスが卵を産み落とすまではメスのそばから離れないという習性があることも理由の1つだとされている。

おしどり夫婦を揺るがす真実

鳥類の多くは、ペアが協力して子供を育てる。

二羽が仲良く寄り添う様子から、鳥の夫婦はお互いに忠実で浮気などしないと長年考えられてきた。

そんな姿が、おしどり夫婦という言葉を生み出したわけだが、DNAを使って親子関係を調べる研究ができるようになると一変することになる。

研究者たちが鳥の親子関係を調べた結果、なんと90%以上の種で父親と血の繋がっていない子、つがい外子を育てていることがわかったのである。

そして、鳥類の浮気率はスズメなどの陸鳥で高く、アホウドリなどの海鳥では低いと言われている。

その理由は、海鳥が陸鳥に比べて長生きでペアが長く続くことや、ヒナの巣立ちのために両親の協力が不可欠であることにあると考えられている。

また、同じ種の鳥でも、個体数や餌の量など繁殖する場所の環境によって、浮気する割合が異なることもわかったのである。

なぜ鳥は浮気してつがい外子をつくるのか

オスにとって、つがい外子をつくる利点は、つがいではない相手との間に子供をつくることで、その年に残す子孫の数を増やせることだ。

とはいえ、同時に自分のつがい相手のメスが他のオスと浮気してしまうリスクもある。

つまり、オスは自分のつがい相手を守ることと、他のメスと浮気して子孫をたくさん残すこととの間でバランスをとりながら行動していると考えられている。

一方で、メスが1年に産む卵の数は種ごと決まっており、交尾する相手によって産卵数が決まるわけではない。

ということは、つがい外子はメスにとってどんなメリットがあるのだろうか疑問が出てくる。

その答えについては、研究者たちはたくさんの仮説を立ててきた。

その中の有名な仮説の1つに、良い遺伝子仮説というのがある。

なんとなくイメージがつくと思うが、メスがつがい相手のオスよりも良い遺伝子を持つオスと交尾することで、良い遺伝子を持った子孫を残すという説だ。

例えば、ツバメは尾の長いツバメは良い遺伝子を持っていることが知られているので、子育てするつがいを選ぶときには、とてもモテる。

ということは当然、つがい外交尾の相手としても尾の長いオスが選ばれやすいという。

ツバメのメスは、より良い遺伝子を持った尾の長いオスと浮気して子孫を残そうとしていることが、ほぼほぼ確実だとされているのである。

とはいえ、ツバメのように浮気の理由がわかりやすい種もいれば、まだまだ理由がわかっていない鳥もたくさんいるのが現状だ。

無人島での浮気調査

日本の周辺で繁殖する海鳥に、オオミズナギドリという鳥がいる。

アホウドリの仲間で、カラスくらいの大きさの彼らは、一夫一妻で1年に1羽のひなを育てる。

ところが、繁殖地でたくさんの相手と交尾する様子がたびたび観察されており、浮気が頻繁に起きているのではないかと考えられてきた鳥でもある。

そんな中、浮気の実態調査に乗り出したのが、坂尾美帆氏である。

彼女はオオミズナギドリ繁殖地のうちの1つである岩手県にある船越大島という無人島で調査を行った。

夜行性の海鳥の行動は、肉眼では観察することができない。

さらに、オオミズナギドリは巣穴を掘って生活しているため、彼らの普段の生活を覗くには特殊な道具が必要だった。

赤外線カメラ等を駆使して苦労して追いかけた結果、見事に浮気現場の撮影に成功している。


また、DNAによる親子鑑定の結果、10〜20%の父親はつがい外子を育てていることがわかったそうだ。

それから、浮気されてしまったオスは、そうでないオスに比べるとクチバシと羽の長さが短いということがこの調査で初めて明らかになったという。

海鳥にとってクチバシはとても重要な器官だ。

オス同士が喧嘩する時もクチバシが重要だといわれている。

また、羽の長さや形は海鳥の飛翔行動に大きな影響を与えることがわかっている。

このことから、もしかするとオオミズナギドリにとってクチバシや羽の長さは体の強さの指標となっているのかもしれないと彼女は語っている。

クチバシの短いオスが魅力的でないために浮気されたのか、それとも体が小さいために他のオスからメスを守れなかったのかについてはエビデンスがない。

加えて、メスの浮気相手が誰だったかを特定することはとても難しく、メスが本当に魅力的だとされるクチバシや羽が長いオスと浮気していたのかも決定打がない。

20%もつがい外父性が起きる島でオスはどうやって自分の父性を守っているのかもわかっていない。

ということで、まだまだ謎だらけのオオミズナギドリの浮気を引き続き調査している彼女に注目していきたい。

まとめ

おしどり夫婦という言葉から、鳥たちは仲睦まじくカップルや夫婦でいると思われがちだ。

けれども、実際は本能的に浮気をしているというエビデンスが多々出ている。

そもそも、人間の視点から動物にも倫理があると考えている時点でズレている気もするが、これが実態だ。

仲睦まじいという形容詞も使い方が重要になってくると思う今日この頃である。


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植田 振一郎 Twitter

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