2023年問題を抱えるオフィスビルの今
意味深長(いみしんちょう)
→ 人の行動や文章などの意味が趣が非常に深く含みがあること。
よく考えればその行動をしてはいけないと誰もがわかることがある。
それでも惰性で行った結果が当然ネガティブに働くことがある。
そして、その責任は誰にあるわけでもない。
そんな状況が不動産市場、とりわけオフィスビル市場でも起きている、起きようとしている。
東京都心のオフィスビル市場
コロナ禍以前は、ビルオーナーである貸し手が優位だったオフィスビルに大きな変化が訪れている。
すっかり空室が増え、借り手優位になっているのである。
一般的に、オフィスビルの賃料が上昇トレンドから下降トレンドになるのが、5%の空室率とされている。
つまり、5%以上の空室率になると、賃料が下がってくるという傾向にあるということだ。
それが今、新築のオフィスビルの空室率が約9%になっている。
さらにこれはずっといわれていることだが、不動産業界は2030年問題を抱えている。
東京都心のオフィス空室率と賃料
オフィス仲介の三鬼商事の発表によると、東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の基準階面積100坪以上の大型オフィスビルの平均空室率が5.9%になったとのことだ。
2021年5月末の時点での空室率で、平均空室率は15ヶ月連続の上昇で、6年9ヶ月ぶりの高水準となっている。
その原因は、新型コロナウイルスによるもので、テレワークの推進などでオフィスが不要になったことにある。
オフィス需要の低下に伴い、大企業を中心に拠点集約が行われた結果、大型解約が相次いでいる。
東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)全体の空室面積が4月末からの1ヶ月、で約1万9,000坪増加している。
前述したとおり、空室率が5%を超えてくると、賃料が下降トレンドに入る。
それを裏付けるように、平均賃料は坪単価が2万1,249円となっている。
2020年8月の2万2,822円以降、10ヶ月連続で下がっていて、まだまだ歯止めが効かないという見方が強い。
新築オフィスビルの現状
注目しないといけないのは、築1年以内の新築オフィスビルである。
平均空室率は1年前の20年5月末と比較すると、1.85%から8.97%と7.12%も上昇しているのである。
既存オフィスビルの1.63%から5.86%の4.23%の上昇に比べると圧倒的に高い。
平均賃料も新築は坪単価が3万2,235円から2万9,757円の2,478円の下落で、3万円を切った。
こちらも既存オフィスビルと比較すると、2万2,587円から2万1,134円の1,453円の下落で幅が大きい。
2021年に東京都心で竣工された注目の新築オフィスビルには下記の2つがある。
・世界貿易センタービルディング南館(港区浜松町)
・常盤橋タワー(千代田区大手町)
最新の稼働状況は、世界貿易センタービルディング南館が8割程度、常盤橋タワーについては9割程度とのことだ。
前者は浜松町駅直結で、後者は三菱地所のお墨付きということで、いずれも竣工の瞬間に満床となってもおかしくない物件だ。
それが、埋まっていないということに危機感を抱いているという。
この傾向は、なにも新築の大型オフィスビルのみならず、中小規模の新築オフィスビルも同じ状況になっている。
野村不動産が展開するPMOという中規模ビルも、新築ビルであってもテナント募集中ということだ。
不動産業界が抱える2023年問題
リモートが進み、大型のオフィスを持たなくても企業が稼働することがわかった。
一定の企業はコロナ収束後には戻るかもしれないが、コロナ前ほどにはオフィスビルが埋まらないという予測が圧倒的に多い。
そんな中、不動産業界は2023年問題を抱えている。
2023年に新築オフィスビルが大量に竣工されるのである。
オフィス仲介の三幸エステートのグループ会社オフィスビル総合研究所が2021年5月に発表した予測がある。
少なくとも空室率は2023年1月~3月でピークに達するという。
その後、2024年1月~3月までわずかに下がるが、ほぼ横ばい。
賃料も2024年1月〜3月まで下落し続けて、借り手優位の状況が強まるという予測である。
変化に対応してきたオフィスビル
こんな状況の中、オフィスビルオーナー側も少しずつ対応が変わってきている部分もある。
例えば、居抜きのオフィス物件が増えているということだ。
居抜きというのは、前に入っていたテナントの内装はそのままで備品もそのまま使うことである。
通常、オフィスビルを退去するときには、原状回復義務という元の状態に戻しなさいという契約が織り込まれている。
このまっさらに戻す状態をスケルトンというのだが、この原状回復にもお金がかかる。
状況にもよるが、1坪あたり10万円はかかるので、100坪のオフィスビルを借りていたとしたら1,000万円かかるわけである。
また、このスケルトンの状態から新規で入るテナントは、自己負担で内装や備品を揃える必要がある。
その工事費がだいたい坪単価で20万円から30万円かかるので、100坪なら2,000万円から3,000万円かかる計算になる。
この原状回復義務というのは、明らかに不動産業界の慣習でというよくわからない部分でもある。
オフィスを退去するというのは、もちろん業績拡大で大きくキレイな場所へ移動するということもあるだろう。
一方で、業績が悪化して縮小するという企業も当然あるわけで、そうなると少しでも費用を抑えたい。
そこをそのまま借りたいという企業がいれば、そのまま貸せばいいのだが、一旦スケルトンに戻すという意味不明な作業が入る。
このミスマッチにようやく流動性が生まれてきたということだろう。
古い業界であればあるほど、変化が起こりにくく、なにか大きなきっかけがなければ動かない。
生産性や科学的根拠がなくても慣習でという一言で進めてしまう悪しき文化がある。
不動産業界はその最たるものであることを、stak社の営業をしているとよくわかる。
コロナは確かに大きな損失も出したが、大きく変化のときを生み出したのかもしれない。
stak社や他のスタートアップにとっての躍進の予兆になるよう前進あるのみである。
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植田 振一郎 Twitter
株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。