中国と日本のスーパーシティに対する温度差と実態
慧可断臂(えかだんぴ)
→ 断臂は腕を切り落とす意で、断固たる決意をいう。
断固たる決意というものは個のレベルでは可能であっても、いざ組織になると全く稼働しないことがしばしばある。
ただ、その理由はたった1つしかないと思う。
リーダーシップを取って自己犠牲を伴って先頭に立つという断固たる決意を持った人がいない結果だ。
そんなニュースがまた1つ出てきた。
これは、stakという企業のCEOである以上、見逃せない記事だったので書いていこうと思う。
漂流し始めた「スーパーシティ」構想、すれ違う国と自治体
(出典:日経ビジネス)
記事の冒頭が全てを物語っているが、国の「スーパーシティ」構想が漂流し始めたという。
応募した31の自治体グループが全て再提案を求められたというのである。
スーパーシティとは?
スーパーシティという言葉はどのくらいの認知があるのもだろうか。
stakのようなIoTデバイスの企画、製造、販売を行っていると避けて通れないのがスーパーシティ、あるいはスーパーシティ構想である。
その流れを作ったのは、今や世界第2位のGDPを誇る中華人民共和国といっていいだろう。
2017年4月に習近平国家主席の肝いりで始まったのがスーパーシティだ。
河北雄安新区というエリアを深セン経済特区、上海浦東新区に次ぐ21世紀初めての全国規模の新区構想と位置づけたのである。
中国では経済発展に伴い都市化が急速に進展していて、都市化率は2000年の36,2%から2019年には60,9%まで上昇している。
そして、2010年から中国政府は都市化戦略を実施し、都市化率の上昇だけでなく、都市発展の質の向上にも注力してきた。
中国の政府主導のもと、生活環境改善、インテリジェント化、安全と健康、住みやすさ、継続的発展といった具合に様々な面で進化している。
今後、新インフラ投資施策によりさらに重視されているのが、下記のジャンルだ。
・5G(5th Generation)
・AI(Artificial Intelligence)
・データセンターなどの新型インフラの強化
・都市建設のスマート化
こういったインフラが整うことによって、健康、安全、住みやすさといった、いわゆるのQoL(Quality of Life)はさらに重視されていく。
そして、新インフラ投資施策は首都の北京、上海、広州などの大都市から中小都市にまで拡大している。
このように、世界から注目されている河北雄安新区は、未来都市という名称で中国の都市発展の中で追求してきたこと、トレンド、グリーン、スマート、人文、創新といった理念で設計され建設が進んでいる。
中国のスーパーシティにあって日本のスーパーシティにないもの
着々と進んでいる中国のスーパーシティの一方で、冒頭の記事に戻るのだが、日本ではどのエリアを特区にすることすら決まっていない。
くり返しになるが、2017年4月に中国は河北雄安新区をスーパーシティに指定した。
その後、建設計画に基づき、実際に2020年からスマートシティの建設がスタートしている。
都市部の伝統的なインフラとデジタルインフラの同時構築で、フィジカルの世界とバーチャルの空間を融合するデジタルツインシティの構築に向けて、大規模かつ実質的建設を本格的に開始しているのだ。
デジタルインフラは、1つのセンターと4つのプラットフォームを中心にした枠組で推進している。
1つのセンターと4つのプラットフォームとは、下記のとおりだ。
・都市コンピューティング(クラウド)センター
・ブロックデータプラットフォーム
・モノのインターネット(IoT)統合オープンプラットフォーム
・ビデオネットワークプラットフォーム
・都市情報モデル(CIM:Construction Information Modeling)プラットフォーム
プラットフォームに搭載する施設管理、交通、物流、エネルギーなどのスマート化の応用について、雄安市民サービスセンターをモデル地区に未来へのシナリオを模索している。
同センターの敷地内では、未来都市の雛形になるべく、2020年からの取り組みが始まっている。
プロジェクトの一環として下記のようなものがある。
・5G通信・路車協調の機能を備えたスマート街路灯の導入
・5G応用モデルエリアの構築や多様なシーンに対応するV2X(Vehicle to X:車と道路の協調モデル)プロジェクト
(参考:中国の未来都市 雄安新区)
話を日本に戻そう。
日本では国家主導でなにが行われているかといえば、全くなにも進んでいないのが現状だ。
中国ではとっくにスタートされているプロジェクトが多々あるのに対して、ほぼゼロというスピード感のなさは問題だ。
目まぐるしい進歩のテクノロジーの世界では1年という期間はかなりの差がつく。
その原因は、冒頭に述べたとおりで、自己犠牲を伴う覚悟のあるリーダーがいないことに尽きるだろう。
まとめ
とはいえ、悲観することもないと思っている。
というのも、国家主導でなくても民間企業でDXに真剣に向き合っている企業が少なからず出てきているからである。
例えば、こんな事例もある。
オルビス、無人搬送車330台導入 コロナ下の通販拡大で
(出典:日本経済新聞)
少子超高齢化社会の日本で人手不足が叫ばれ続けている中、感度の高い企業のトップはリスクを負ってでも前進することを選ぶ。
そんな企業がどんどん出てくればいいし、stakも最期の最期まで諦めることなく、理想を現実にしていこうと思っている。
とはいえ、規制緩和といった国家の力も必ず必要になる。
個人的にはスーパーシティに広島の東広島市が立候補しており、是が非でも特区を勝ち取って欲しいと思っている。
単純な地元びいきではなく、東広島市は本当に最適なエリアだと考えているし、そもそものゆかりがあるので、stakの拠点も少しずつ移していく計画がある。
このことについても少しずつ公開していく予定なので、引き続きstakにも注目してもらいたい。
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植田 振一郎 Twitter
株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。