コストパフォーマンスに変わる新しい概念タイパとは?
寡聞浅学(かぶんせんがく)
→ 自分を謙遜して、見識が狭く学識が浅いこと。
偉そうにする必要もないが、謙遜しすぎる必要もないように思う。
個人的には、ストレートに物事をはっきり言ってもらえる方が嬉しいというか、時間効率がいいのでありがたい。
変に謙遜し合っている場面に出くわすと、なんだか気持ち悪く感じてしまう自分がいる。
そんな感覚が間違っていないというか、新しい価値観が生まれているようだ。
コストパフォーマンスはもう古い?
飲食店の評価ポイントの1つとして定着したコストパフォーマンス、通称コスパという概念がある。
コストパフォーマンスとは、ある対象物の費用(コスト)とその効果(パフォーマンス)を比較したレベルを指すのだが、これだとわかりにくい。
飲食店の例を挙げるなら、食事も美味しくてスタッフのサービスも素晴らしいのに手頃な料金だというお店はまさにコストパフォーマンスが高いお店となるわけだ。
ただ、このコスパという言葉は乱発されすぎたようにも感じる。
飲食店のみならず、あらゆる場面でコスパという言葉が蔓延し、本来の価値がある部分が欠落して、安ければいいといった概念に近くなったように思う。
そんな中、新たな概念が世の中に浸透しつつある。
タイムパフォーマンスという新たな概念とは?
コストパフォーマンスが意味するところの費用対効果とは一線を画した新しい概念が、タイムパフォーマンスである。
通称タイパというワードでも浸透しつつあるこの概念は、時間対効果を意味するものだ。
その背景にあるのが、おうち時間の増加だ。
消費者の変化に気づいた企業は、コストではなく時間を軸にした差異化にシフトチェンジし始めている。
食事、学習、車、スポーツの分野でタイパというワードを軸にした戦略が既に動き始めている。
食に関するタイパ
リモートワークによるおうち時間の増加により、単身世帯の若者を中心に食事をできるだけはやくすませたいというニーズが高まっている。
そんな中で定着しているのが、デリバリーサービスだ。
そして、冷凍食品の分野も伸びている。
nosh(ナッシュ)というサービスをご存知だろうか。
私も実際に使っているサービスの1つなのだが、noshで注文すると1食分の主菜と副菜が入った冷凍パックが届く。
60種類以上のメニューの中から選ぶのだが、6個以上から注文ができ、そのままレンジで温めればすぐに食べられるという画期的なサービスだ。
レンジで温めるだけというとクオリティを心配する人も多いと思うが、これが美味しくて栄養面のバランスもきちんと考えられているのである。
注文も自分のペースに合わせられるのでとても便利で、あっという間に私も最上位のランクになった。
何人かに薦めたが、全員良かったと言ってくれている。
ちょっと調べてみると、2020年1月に約18万食だったnosh社の月間販売食数は、2021年11月には約150万食まで拡大したという。
約2年間で10倍近い伸びというのだから素晴らしい。
とにかく、手軽でかつ健康的というテーマにあった、まさに食のタイパの代表例だといえる。
勉強のタイパ
2020年度の累計会員数が前年度から84万人増えて約194万人になった絶好調のサービスがある。
リクルートが展開しているスタディサプリだ。
オンライン学習が定着しているというのもあるが、動画コンテンツの作り方を変えたことが定着した理由の1つだと分析されている。
その根幹にあるのが、短時間の動画を次々に見るのが習慣になっているというものだ。
受験向けの講座は別にしても、基礎的な講座は5~6分の尺にして、学ぶポイントも1本につき1~2個に絞り込むことを原則にしたのである。
もともとは、受験サプリというサービス名で2012年に始めた当初は、50分程度の動画を見てもらう形式だったことを考えると大幅なモデルチェンジだ。
高校生向けのコンテンツも10~30分程度と短くしており、通学時間や授業の合間などのちょっとした時間にも見られることがポイントなのである。
10分集中して勉強したら10分休憩するといった細切れで勉強するスタンスが広まっており、倍速視聴機能を利用しているユーザが6割いるというデータも面白い。
まさに、学習のタイパの事例である。
車のタイパ
若者のクルマ離れの原因の1つに、購入時の煩雑さがあるのではないかと考えた企業がある。
ホンダの販売会社、ホンダセールスオペレーションジャパンである。
2021年10月4日に開始したのは、国内の自動車メーカーで初となるオンラインストアのHonda ON(ホンダオン)だ。
商談や見積もり、査定、契約までの購入手続きをオンライン上で進められるもので、まず新車のサブスクリプションサービスを対象に始めている。
開始から2ヶ月を経て、ホンダオンの利用者に占める30代以下の割合は4割以上に上るそうだ。
店舗では30代以下の割合が2割前後にとどまることを考えれば成功しているとみていいだろう。
徹底しているのは、選択肢が多すぎると納得して選択しようといろいろなことを調べるのに時間がかかるため、悩ませないことだという。
これもまた、タイパの好例であり自動車業界にも拡がりを見せている。
スポーツのタイパ
悩ませないということで、ゴルフ業界にもタイパを重視した企業がある。
2021年8月のJR新宿駅近くのファッションビルに、スポーツ用品大手のアルペンが新業態のゴルフ用品専門店をオープンさせたのである。
その名も、初心者専用ゴルフ5。
20~30代の若者を新規顧客として取り込むことが狙いで、わかりやすさに重点を置いている。
細かい情報まで入れていくとややこしいと考えてしまう人も出てくるため、ゴルフを楽しめるようになるまでの最短距離を進めるようにガイドすることを徹底しているのだ。
スポーツ界にもタイパの波が来ている。
まとめ
タイパの時代がきている。
それも1つの業界ではなく、様々な業界に一斉に訪れている。
コストパフォーマンスだけを重視していてはもはや時代遅れで、タイムパフォーマンス、つまりはタイパもしっかり視野に入れた戦略が求められている。
【Twitterのfollowお願いします】
植田 振一郎 Twitter