線状降水帯など雨の強さの基準について
ここ数年、すっかり日本全国のどこでも激しい雨が降るという印象がついたように思う。
メディアでも線状降水帯といった言葉を頻繁に聞くようになった。
とはいえ、案外、雨に関するワードというのは知っているようで知らないように思う。
例えば、降水量という言葉の意味をあなたは誰にもわかるように説明できるだろうか。
ということで、今回のテーマは雨だ。
今さら聞けない降水量ってなぁに?
まずは、先述した降水量についてだ。
降水量とは、降った雨がどこにも流れ出ることなく、その場所に溜まった場合の水の深さを表している。
単位はmm(ミリメートル)が使われるのは周知の事実だろう。
また、降水量はアメダスや気象台で観測時刻までの一定の時間の間に観測された数値で、10分、1時間、12時間などがある。
前1時間の降水量が一般的で、例えば10時の降水量が7mmとなっていた場合、9時から10時までの間に観測された降水量が7mmということになる。
そんな降水量の測り方だが、転倒ます型雨量計という計測器が使用されている。
この転倒ます型雨量計には、雨を計測する0.5mmのますが2つあり、ますに雨が0.5mm貯まると1回転倒し、降水量0.5ミリが観測されるという仕様になっている。
それから、空から降ってくるものには雨だけではないという点にも注意が必要だ。
他にも雪、みぞれ、あられ、ひょうといった自然現象がある。
雪やあられは固体の状態で降ってくるので、溶けない場合は電熱で暖めて水の状態に戻してから水分の量を測って降水量を観測しているということも、併せて知っておくといいだろう。
雨の強さの基準
とまあ、降水量という言葉については理解できたとしても、天気予報で1時間に20mmの雨だと報道されたとして、その雨の強さがどんなものなのか、いまいちピンとこないのではないだろうか。
ということで、ザックリだが1時間の雨量とその関係をまとめてみた。
予報用語:やや強い雨
人の受けるイメージ:ザーザーと降る
人への影響:地面からの跳ね返りで足元が濡れる
屋内での影響:雨の音で話し声が良く聞き取れない
屋外の様子:地面一面に水たまりができる
運転中の印象:強めのワイパー設定
災害発生状況:長く続く時は注意が必要
予報用語:強い雨
人の受けるイメージ:どしゃ降り
人への影響:傘をさしていても濡れる
屋内での影響:寝ている人の半数くらいが雨に気づく
屋外の様子:地面一面に水たまりができる
運転中の印象:ワイパーを速くしても見づらい
災害発生状況:側溝、下水、小さな川が溢れ、小規模の崖崩れが始まる
予報用語:激しい雨
人の受けるイメージ:バケツをひっくり返したように降る
人への影響:傘をさしていても濡れる
屋内での影響:寝ている人の半数くらいが雨に気づく
屋外の様子:道路が川のようになる
運転中の印象:車輪と路面の間に水膜が生じブレーキが効かなくなるハイドロプレーニング現象が起きる
災害発生状況:山崩れや崖崩れが起きやすくなり、下水管から雨水が溢れ、危険地帯では避難の準備が必要
予報用語:非常に激しい雨
人の受けるイメージ:滝のようにゴーゴーと降り続く
人への影響:傘は全く役に立たなくなる
屋内での影響:寝ている人の半数くらいが雨に気づく
屋外の様子:水しぶきであたり一面が白っぽくなり視界が悪くなる
運転中の印象:車の運転は危険
災害発生状況:地下室や地下街に雨水が流れ込む場合があり、マンホールから水が噴出、多くの災害が発生する
予報用語:猛烈な雨
人の受けるイメージ:息苦しくなるような圧迫感があり恐怖を感じる
人への影響:傘は全く役に立たなくなる
屋内での影響:寝ている人の半数くらいが雨に気づく
屋外の様子:水しぶきであたり一面が白っぽくなり視界が悪くなる
運転中の印象:車の運転は危険
災害発生状況:雨による大規模な災害の発生する危険な状態で厳重な警戒が必要
今さら聞けない線状降水帯ってなぁに?
冒頭に書いたが、ここ数年、線状降水帯というワードをよく耳にするようになった。
この線状降水帯とは、次々と発生する発達した雨雲である積乱雲が列をなして組織化した積乱雲群によって、数時間に渡ってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される雨域のことをいう。
線状降水帯は線状に伸びて、その長さは50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水を伴う雨域になる。
そして、線状降水帯が発生した雨域で毎年のように顕著な大雨が発生し、数多くの甚大な災害が生じているというわけだ。
そんな災害対策の一環として、気象庁では産学官連携で、線状降水帯による大雨について早めの避難に繋げるため、スーパーコンピュータ富岳の活用が始まっている。
富岳を使った線状降水帯予測を開始して、少しでも未然に被害を防ごうという取り組みである。
線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけフローは下記のとおりだ。
顕著な大雨に関する気象情報の発表基準を満たすような線状降水帯による大雨の可能性がある程度高いことが予想された場合、警戒レベル相当情報を補足する解説情報として発表される。
呼びかけでは、大雨予想の際に発表される全般気象情報、地方気象情報、府県気象情報に、線状降水帯発生の可能性について言及する。
対象となる区域は、全国を11ブロックに分けた地方予報区の単位など、◯◯地方といった表現で記述することになっている。
また、見出しのみの発表の場合もある。
線状降水帯の呼びかけが発表されたときの対応
それでは、呼びかけが発表されたときに、私たちはどんな対応をすればいいのだろうか。
まず、呼びかけは、大雨災害発生の危険度が急激に高まることがあるため、心構えを一段高めることを目的としている。
呼びかけだけで即座に避難行動をとるのではなく、大雨災害に対する危機感をはやめに持つということが大切なのだ。
気象庁は例として、ハザードマップ、避難所、避難経路の確認などの行動を挙げている。
それから、自治体が発令する避難情報や、大雨警報やキキクル(危険度分布)などの防災気象情報と併せて活用し、自ら避難の判断をすることが重要なのである。
そして、呼びかけは、顕著な大雨に関する気象情報の発表基準を満たすような線状降水帯の可能性に関して発表されるとされている。
ということで、顕著な大雨に関する気象情報とはどういった基準なのかについても書いておこう。
顕著な大雨に関する気象情報の発表基準は、以下の条件を全て満たした場合に発表される。
1解析雨量(5kmメッシュ)において前3時間積算降水量が100mm以上の分布域の面積が500km
1.の形状が線状(長軸・短軸比2.5以上)
1.の領域内の前3時間積算降水量最大値が150mm以上
1.の領域内の土砂キキクル(危険度分布)において土砂災害警戒情報の基準を実況で超過
4. については、かつ大雨特別警報の土壌雨量指数基準値への到達割合8割以上という条件、または洪水キキクル(洪水警報の危険度分布)において警報基準を大きく超過した基準を実況で超過という条件もある。
なお、大雨による災害発生の危険度が急激に高まっている中で、線状の降水帯により非常に激しい雨が同じ場所で実際に降り続いている状況を線状降水帯というキーワードを使っていると認識すればいい。
警戒レベル相当情報を補足する情報で、警戒レベル4相当以上の状況で発表されることも併せて知っておくといいだろう。
まとめ
なんとなく雨の基準というか、降水量がどれくらいの感覚なのか、線状降水帯とはなんなのかは理解してもらえたと思う。
それでは、最後に実際にどれくらいの雨が溜まっているのか、簡単な計算問題も出しておこう。
たとえば、1平方メートルの地面に1mmの雨が降ったときの量はどれくらいになるか、わかるだろうか。
1平方メートルは1m×1mなので、1m×1m×1mm、つまり100cm×100cm×0.1cm = 1,000立方センチメートルなので、1リットルになるというのが正解だ。
とはいえ、やはり天気予報で1時間に1mmの雨が降ったと言われても、いまいちどのくらいの量が降ったのかわかりにくい。
1時間に1ミリの雨は10分間で約0.17リットルになので、大体コップ1杯くらいの量だ。
これを頭の上からかぶると、結構濡れてしまうと思うかもしれないが、実際はどれくらいの範囲で降っているかということが重要になる。
広い範囲でコップ1杯分の水をかぶっても大して濡れないというわけだ。
ということで、1時間に3〜5mmの雨になると、道路に水たまりができ、10mmの雨になると道路全体が水びたしになり、外を歩くと足元が濡れるというくらいの感覚を持っておくといいだろう。
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