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危険が迫ったときスローモーションなる理由

焦眉之急(しょうびのきゅう)
→ 危険が切迫していること。

危険が迫っているとき、スローモーションになるという経験をしたことがあるだろうか。

よく聞く話の1つだと思うが、かくいう私も実際にスローモーションを味わったことがある1人だ。

仔細は覚えていないが、小学校の高学年か中学生の頃だったと思う。

自転車に乗っていて、ハンドルになにか荷物をかけて走行していた。

そして勢いよくスピードを上げ始めたときに、その荷物が自転車の前輪に絡まってロックがかかった状態になった。

経験した人はわかると思うが、その状態になると自然に自転車の後輪が浮いて後輪が自分の身体を追い越す。

つまり、一回転する形でそのまま転倒した。

幸い大した怪我にはならなかったと記憶しているが、確実に記憶に残っているのが、一回転するときの景色がスローモーションだったということだ。

そして、この現象を「タキプシア」ということを知った。

タキプシアってなぁに?

タキプシアは、危険な状況などの極端なストレス状況下で時間がゆっくり進んでいるように感じる現象を指す。

この言葉はギリシャ語の「tachys(高速)」と「psyche(心)」から派生している。

そのメカニズムを概説すると、脳はこれらの状況で特別に活性化され、一般的には見逃すかもしれない情報を捉えるために一時的に高速化する。

このメカニズムの具体例として、とある研究がある。

その研究の内容は、被験者に30メートルの高さから自由落下する経験をさせた結果、彼らは自分たちの落下時間を実際の時間よりも長く感じたと報告したのである。

つまり、被験者の脳は極度の恐怖状態で情報をよりはやく、より詳細に処理し、これが時間が遅く進んでいるかのような感覚を生じさせたというわけだ。

しかし、これは主観的な経験であり、他の人も同じ時間の流れを感じるわけではない。

例えば、あなたが危険な状況にあるときに時間が遅く進んでいるように感じても、それを見ている他の人は同じ時間の流れを感じないということだ。

要するに、タキプシアは脳の内部的な時間の知覚の変化を示しているというわけだ。

とはいえ、このメカニズムについては、まだまだ未解の部分も多く研究が進行中だというのが実際のところだ。

その要因としては、ストレス反応の一部としてアドレナリンの放出が関与している可能性が示唆されている。

アドレナリンは、心拍数を増加させ、感覚を鋭敏にし、脳の情報処理能力を一時的に強化することで、時間の経過を遅く感じさせる。

また、感情的な出来事はより詳細に記憶されるため、後から振り返るとそれが時間をかけて起こったかのように思える可能性もある。

これらの理論はまだ確認されていないが、タキプシアの研究は人間の脳と時間知覚の関係についての理解を深める可能性を持っているのである。

情報処理速度によって感じ方が変わる理由

タキプシアによって時間がゆっくりに感じる理由を、下記のように述べた。

それは、脳が極度の恐怖状態で情報をよりはやく、より詳細に処理し、これが時間が遅く進んでいるかのような感覚を生じさせたというものだ。

つまり、情報処理速度がはやく、かつ詳細になるというわけだが、そうなると、むしろ時間ははやく感じるのではないかという疑問を抱いた人はいないだろうか。

かくいう私もその1人なので、ここの感覚について解説していこう。

私たちの時間知覚は、脳が処理する情報の量と深度に影響を受けると考えられている。

つまり、脳が大量の情報を高速に処理しているとき、実際の時間と比較してより多くの時間が経過したかのように感じるのである。

その最たる例が、危険な状況などでアドレナリンが放出されるときというわけだ。

これがタキプシア現象の一部を説明しているのは上述したとおりだ。

よりわかりやすくイメージするために例を挙げると、ある映画を見ているとき、その映画が特にエキサイティングで多くの出来事が詰まっているときは、映画の時間が長く感じられる。

一方で、あまりエキサイティングな出来事がない映画は、その時間が短く感じられる。

これがまさに脳が処理する情報の量が時間知覚に影響を与えることを示している。

また、アドレナリンの放出により、感覚が鋭敏になり、一見したところどうでもよさそうなディテールまで目に入るようになることがある。

このように情報が増えると、それら全てを処理し終えるまでの時間が長く感じられる。

つまり、通常の状況と比べて情報の処理速度が上がったとしても、その分、処理すべき情報の量も増えているので、結果として処理が追いつかず時間が遅く進んでいるように感じるというわけだ。

タキプシアと似たような現象

タキプシアと似たような現象は他にもある。

その1つが、チック・トック現象だ。

チック・トック現象

チック・トック現象が起きる原因は、新しい経験が時間を長く感じさせる現象で、脳が新しい情報を処理するのに多くのリソースを必要とするためだ。

初めての遠足や旅行を経験したとき、1日がとても長く感じたという経験があるという人も多いだろう。

新しい場所を探検したり、新しい友だちと遊んだり、美味しいごはんを食べたりすると、その日がいつもより長く感じられる。

なぜかというと、脳は新しい経験や情報を処理するときに、たくさんの仕事をする。

新しいことを学んだり、見たり、感じたりするとき、脳はそれを記憶したり理解したりするためにたくさんのエネルギーを使う。

そして、脳がたくさんの仕事をするとき、時間がゆっくり進んでいるように感じる。

これをチック・トック現象と呼ぶわけだ。

新しいことを経験するときには、脳がたくさんの情報を処理するため、その処理に時間がかかるので、時間が長く感じられるのである。

逆に、同じ日常の生活を送っているときや、お馴染みの場所で過ごしているときは、脳があまり新しい情報を処理しないため、時間がはやく過ぎていくように感じる。

つまり、新しい経験をたくさんすると、1日が長く楽しく充実したと感じられるというわけだ。

もう1つ、ダウンロード現象も紹介しておこう。

ダウンロード現象

ダウンロード現象とは、高齢者は時間がよりはやく過ぎていくように感じることがよくあるというものだ。

これは生涯の経験が増えるにつれて、新しい出来事が少なくなり、時間がはやく過ぎるように感じることが原因だとされている。

幼い頃に新しいオモチャをもらったときや、楽しみにしていたクリスマスの日を待つのは、とても長く感じたという経験があるの人もいるのではないだろうか。

その理由は、新しいことや特別なことを体験すると、それが長く感じられるからだ。

それが大人になっていくに連れて、様々な経験を重ねていくので、毎日があっという間に過ぎていくと感じることが多くなる。

これが、ダウンロード現象だ。

なぜ、大人は時間がはやく過ぎていくように感じるのだろうか。

その理由は、大人になると同じようなことをくり返し経験することが多くなるからだ。

新しいオモチャをもらうことや楽しみにしていたクリスマスのような新鮮な体験が少なくなると、脳は新しい情報をあまり処理しなくなる。

その結果、時間がはやく進んでいくように感じるというわけだ。

例えば、同じ道を毎日学校に通っていると、その道のりははやく感じられる。

でも、初めて遠くの親戚の家に行くときは、同じ時間でも長く感じるというわけだ。

これも同じ理由で、新しい経験をするときは時間が長く感じられるからである。

つまり、新しいことをたくさん経験すると、時間がゆっくりと進んでいるように感じられるということになる。

とどのつまり、大人になると新しい体験が減るため時間がはやく過ぎていくように感じてしまうというのが、ダウンロード現象なのだ。

まとめ

最期にこんな経験をしたことがあるという人も多いだろうという事例を挙げておこう。

それは、旅行で目的地に到着するまでよりも旅行終わりに家に帰るときの時間の方がはやく感じたことがあるというものだ。

まさにこれがタキプシア、チック・トック現象、ダウンロード現象の混合のようなものだということだ。

どんな旅になるのかというときのワクワク感が脳の処理速度を上げる代わりに処理が追いつかなくなるのが、旅の始まり。

旅行を終えて家に帰るだけという日常に戻ることだけを処理すればいい状態になるのが、旅の終わり。

大切なことは、人生もこれに似ていると思うことだ。

毎日刺激のない日常を送れば時間ははやく過ぎ去り、毎日刺激的な日常を送っていれば時間はゆっくりと流れる。

あっという間に時間が経っていると感じている人は、充実しているようで実はただただ日常に追われているだけの日々を過ごしているだけなのかもしれない。

一度きりの人生だ。

私は、ダウンロード現象を感じる年齢が少しでも遅くなるような人生を歩んでいきたいと思う。


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株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。