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結婚の歴史と婚姻数の推移

月下氷人(げっかひょうじん)
→ 結婚の仲人、媒酌人。

未婚者が増えているということと少子化は密接に関わっていることは理解できるだろう。

結婚への価値観が変わっていることは多くのメディアで頻繁に取り上げられているし、かくいう私も未婚者の1人だ。

その理由は様々あるのだが、総合的に判断するとメリットよりもデメリットの方が大きいということになると思う。

とはいえ、少子化の問題に対して興味がないわけではなく、むしろ子どもを増やしていくことには積極的にすべきだと考えている。

ということで、そもそも結婚という概念が生まれた歴史と近代の婚姻数がどのように推移しているのか、調べてみることにした。

結婚の起源

人の祖先は類人猿であることは書くまでもないだろう。

そして、類人猿に結婚という概念はないということも、なんとなく理解できるというか特段異論はないはずだ。

結婚に大きく関わる、類人猿と人類の違いについて、人類学者であるヘレン・E・フィッシャーは2点を挙げている。

1つは人間が直立二足歩行することで、もう1つは女性には発情期がないことだ。

ここで勘違いしてはいけないのは、発情期と性欲は別だということだ。

直立二足歩行することによって人は道具をより巧みに仕えるようになった一方で女性の骨盤の形が変化し産道が狭くなった。

そのため、大きな赤ちゃんが産道を通過することが困難になり難産が増えたことで、出産によって命を落とす母親が増えるという現象が起きた。

そして、従来より未熟な状態の小さな赤ちゃんが産まれた場合、母子が無事であるために早産の遺伝子をもつ母子が増えていった。

この状態で起きた問題が、未熟な赤ちゃんは歩行もままならないため、母親である女性が自分の身と赤ちゃんを外敵から守らないといけないということだ。

当然、出産後の女性なので外敵から身を守ることでも精一杯なのに、食べ物を手に入れることも必要になる。

つまり、母子が自分たちの力だけで生き残るということが難しくなったというわけだ。

そこで、特定の男性に守ってもらう、性の契約ともいえる、結婚が必要になったというのが結婚の起源だといわれている。

また、発情期のことにも少々触れたが、こちらも少なからず影響を与えているという。

というのも、類人猿のオスは発情期のメスに近寄り交尾する。

発情期のメスはたくさんの食べ物をオスから受け取ることができ、オスが傍にいるので守ってもらえるというメリットがある。

とはいえ、これは発情期の期間限定で、常にオスがいて守ってくれる状況とは異なる。

それが結婚となると違ってくるというのも結婚という概念が生まれた理由の1つだというわけだ。

時代によって異なる結婚精度

類人猿の時代から人が社会を形成していくと、結婚という形式が次第に確固たるものに変遷していく。

その最たる部分が、一夫一妻制ということだろう。

実はこの制度は古くからあり、平安時代ですら結婚は基本的には一夫一妻だった。

源氏物語といった平安時代の文学作品では1人の男に複数の妻のような女性がいるという状態が当たり前で、天皇には多くの女性が競って嫁いだという事実がある。

このことから、一夫多妻制の印象を持っている人も多いと思うが、平安時代の文学作品などに登場する妻は現代でいうところの妻とは異なる点に注意が必要だ。

例えば、源氏物語の主人公である光源氏にとって現代と同じ意味で妻といえるのは葵上と女三ノ宮の2人だけだ。

いやいや複数いるじゃないかというツッコミをもらいそうだが、葵上の死後に女三ノ宮が妻の立場を後継しているので、正式な妻は実際には常に1人だった。

現代とは異なり、確かに身分の高い男性はたくさんの妻のような女性を持つことは可能だったが、実は平安時代も現代と変わらず正式な妻は1人で、既に一夫一妻制だったのである。

一方で離婚は今よりも全然フランクなものだったという。

というのも、妻のような立場の女性が多々いたことが起因している。

男性の気持ち次第で自分の立場が左右されるので、特に子供がいないと非常に女性の身の上は危ういものだったのである。

また、この時代は平均寿命が短く、出産で命を落としやすいという事情から必然的に多くの男性が再婚をくり返していたという現状もある。

鎌倉時代以降の結婚について

その後、鎌倉時代に入ると、婿取婚の形をとりながらも相当期間の後に夫方に居住するなど、次第にそれまでの母系型家族の形が崩れていくことになる。

それに伴い父権が絶対的なものとなっていき、必然的な形として嫁取婚という概念が生まれていく。

そして、嫁取婚が行われるようになったのは室町時代からといわれている。

家と家との結びつきという色が濃くなり、武家などでは当たり前のように政略結婚が行なわれていくという流れだ。

婚礼における礼法も整えられ、色直し、引出物、里帰りなど、現代でもお馴染みのしきたりも、この時期に生まれている。

さらに江戸時代に入ると、仲人、見合いなども結婚に関するカルチャーが拡がっていく。

結婚が一生ものという概念が生まれたのが、明治時代に入ってからだと思い込んでいる人が案外多いようだ。

ところが、統計のある国の中では、日本が明治の半ばまでは最も離婚の多い国だったというデータがあるほど、結婚が一生ものという考え方は近代の価値観なのである。

その原因は、親同士が子の結婚を決めることで、特に女性はかなりの若さで結婚させられたため上手くいかないという場合が多かったとされている。

では、どのタイミングで結婚が一生ものという概念になったかというと、一説には1898年(明治31年)に定められた民法が日本の離婚率低下に貢献したといわれている。

この民法は差別的な家長制度優位なもので、女性は結婚前は父親に従い、結婚後は夫に従うよう求められている。

さらには、女は婚姻によって無能力者となるという現在だと大炎上間違いなしの取り決めであった。

結婚した後は、家事や育児に従事することしか許されないため、離婚後に自立して生活するのが難しくなっていくという男尊女卑の考え方が結婚を一生ものという概念を生み出したといえる。

少子化社会対策白書から読み解く婚姻数の推移

内閣府が発表している少子化社会対策白書というものがある。

2022年7月8日現在の最新資料は下記からアクセスできる。

婚姻・出産の状況

内閣府

婚姻件数は、第1次ベビーブーム世代が25歳前後の年齢を迎えた1970年〜1974年 にかけて年間100万組を超えた。

1972年に1,099,984組が婚姻したというのがピークで、当時の婚姻率(人口千人当たりの婚姻件数)も概ね10.0以上だった。

その後は、婚姻件数、婚姻率とも に低下傾向となり、1978年以降2010年までは、婚姻件数はおおよそ年間70万組台で増減をくり返しながら推移してきた。

そして、2011年以降、年間60万組台で低下を続け、2018年に初めて60万組台を割り込んだ。

2019年は令和への改元のタイミングで婚姻するという、いわゆる令和婚の影響もあり、59万9,007組(対前年比12,526組増)と7年ぶりに前年より増加した。

ところが、2020年は52万5,507組と再び低下すると、過去最低を更新した。

婚姻率も4.3で過去最低となり、1970年代前半と比べると半分程度の水準となっているのが現状だ。

一方で、未婚率を年齢(5歳階級)別にみると、 2020年の30~34歳では、男性はおよそ2人に1人(47.4%)、女性はおよそ3人に1人(35.2%)が未婚となっている。

また、同年の35~39歳では、男性はおよそ3人に1人(34.5%)、 女性はおよそ4人に1人(23.6%)が未婚となっている。

長期的にみると未婚率は上昇傾向が続いているが、男性の25~29歳、30~34歳、35~39歳、女性の30~34歳、35~39歳 においては、2015年の前回調査と比較して横ばいの状態だ。

未婚化の進行も顕著で、50歳時の未婚割合は1970年は、男性1.7%、女性3.3%であった。

その後、男性は一貫して上昇する一方で、女性は1990年まで横ばいだったが、以降上昇を続け、2015年の国勢調査では男性24.8%、女性14.9%となっていた。

それが最新の調査報告の2020年は、男性28.3%、女性17.8%と、それぞれ上昇している。

晩婚化および晩産化の進行について

平均初婚年齢は、長期的にみると夫と妻ともに上昇を続け、晩婚化が進行している。

2020年で、夫が31.0歳、妻が29.4歳となって おり、1985年と比較すると、夫は2.8歳、妻は3.9歳上昇しているという結果だ。

また、出生時の母親の平均年齢を出生順位別にみると、2020年は、第1子が30.7歳、第2子が32.8歳、第3子が33.9歳と近年は横ばいの状態だ。

ちなみに、1985年と比較すると第1子では4.0歳、第2子では3.7歳、 第3子では2.5歳それぞれ上昇している。

夫婦の完結出生児数(結婚持続期間が15~19年の初婚同士の夫婦の平均出生子供数)をみると、1970年代〜2002年までは、2.2人前後で安定的に推移していた。

ところが、2005年から減少傾向となり、2015年には1.94と過去最低となっている。

結婚に対する意識

いずれ結婚するつもりだと答えた未婚者(18~34歳)の割合は、2015年調査で男性85.7%、女性89.3%となっている。

これは、過去30年間を見ても若干の低下はあるが、男女ともに依然として高い水準を維持しているという結果だ。

また、未婚者(25~34歳)に独身でいる理由を尋ねると、下記のような回答となっている。

  • 男女ともに適当な相手にめぐり会わない:男性 45.3%、女性 51.2%

  • まだ必要性を感じない:男性 29.5%

  • 結婚資金が足りない:男性 29.1%

  • 自由さや気楽さを失いたくない:女性 31.2%

  • まだ必要性を感じない:女性 23.9%

さらに、過去の調査と比較すると、 男女ともに異性と上手く付き合えないという理由が増加傾向にあり、女性では仕事や学業に打ち込みたいとか、結婚資金が足りないという理由も増加傾向にある。

まとめ

こうして見ていくと、古くからある結婚という文化というか概念も時代に合わせて適宜ルールを変更しているように改めて感じてしまう。

もっと手軽にというか、一度結婚してしまうと様々な誓約が暗黙のルール的に発生してしまうのは、やはりネガティブになってしまうのも頷ける。

これもまたくり返しになるが、結婚、つまり婚姻と少子化は密接な関係にあり、どこかで下げ止まるとは思うが、そうなったときの社会がどうなるのか、考えただけでもゾッとする。

私自身が、ふとしたタイミングで結婚することはあるのだろうか。


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