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一般企業の不動産取得にざわつく不動産業界

横行跋扈(おうこうばっこ)
→ のさばってわがまま気ままに振る舞うこと。

時代の寵児という言葉がある。

その時代にあった能力を発揮し、人々からもてはやされることをいう。

時代によって求められるものや人気の出るものは変遷し、同時に人々の価値観も変わっていく。

テクノロジーの進化も相まって、その変遷するスピードが圧倒的に上がっている。

そしてまた1つ、とある業界の定説が覆されようとしている。

不動産業界に突如現れた一般企業の正体とは?

2021年9月3日に衝撃のニュースが不動産業界を駆け抜けた。

電通本社ビル売却が発表されたのだが、電通本社ビルのある汐留地区の不動産をめぐる話はまだまだ尽きていない。

ミネベアミツミ「異次元価格」で大型ビル取得の訳

(出典:東洋経済Plus)

次の舞台になったのは、電通本社ビルからほど近い日本通運本社ビルである。

日本通運は2021年10月より、千代田区に建設した新築ビルに本社や支店を集約すると発表している。

汐留の本社ビルは売却されるため、2021年7月に入札にかけられた。

2003年竣工とやや築年数は経過しているが、都心部かつ地上28階建ての大型ビルとあって、多くの不動産会社やファンドが食指を動かした。

ところが、2021年9月に入って買い手企業の名前が伝わると、不動産関係者は一様に驚いた。


入札に参加したデベロッパーや不動産ファンドの見立てでは、500億円が精一杯で実際の入札は300億円程度のところが多かった。

そんな中で、約700億円の提示をした企業があったというのだ。

その企業として有力視されているのが、ベアリング大手のミネベアミツミである。

一般企業が不動産を買う理由

不動産売買において、主役になるのはデベロッパーや不動産ファンドである。

その目論見は、投資でしかない。

土地と建物という現物があるので、金融機関のフォローもつきやすいし、経済が発展するときには必ずといっていいほど不動産業界も同時に大きく成長する。

その名残りはずっと続いており、人が集まる都心部ではずっと不動産の売買がくり返されている。

そのロジックは至って簡単で、安く仕入れて高く売るのビジネスの超基本が根幹にある。

例えば、とあるビルを買う際には、そのビルの収益価値を決めて、いくらで買えばいくらで転売できるか、あるいは保有した際にどれくらいで回収できるかを判断するというものだ。

その生業をずっとやってきたのが、デベロッパーや不動産ファンドということだ。


ところが、ときに今回のミネベアミツミ社のように、突然一般企業が入札に入ってくる場合がある。

それも、収益性とか価値とかを無視して、圧倒的な価格で入札してくる。

その背景には絶対にそのビルが欲しいという意思があるのは当然だが、今回のミネベアミツミ社が日本通運本社ビルを欲しがる理由があるとのこと。

紹介した記事に書いてあるが、旧ミネベアと旧ミツミ電機が経営統合して、そのグループ会社がまとめて入居できる大型オフィスビルを欲しているというのである。


そして、こういった流れが、少しずつ増えているというのである。

2021年3月期に東急四谷ビルが売りに出されたときも、複数社のデベロッパーや不動産ファンドが入札をした。

東急四谷ビルの簿価は100億円に対して、多くが200億円前後を提示する中、300億円弱で入札した企業がある。

それは、有限会社サンズという、PC周辺機器メーカーのエレコム創業者の資産管理会社である。

当社がこの物件を購入した理由は不明だが、一般企業がサクッと横からビルを買っていったという事例の1つだ。

古くから不動産業界にいるデベロッパーや不動産ファンドにとっては異次元の価格でも、非不動産会社は独自のロジックで取引を成立させていく。

それが次の相場を形成し、不動産業界も追随せざるをえなくなれば、不動産市場は新たな局面を迎えるかもしれない。

オフィスビル市場は崩壊するのかという疑問

新型コロナウイルスのパンデミックがリモートという言葉を世間に浸透させた。

その結果、都心のオフィスビルの空室率が上昇しているということは、何度も書いてきている。

そこにこういったオフィスビル売却の話が出てくるとなると、市場が縮小していっているような錯覚を受ける。

けれども、売り手がいるのに対して、買い手がしっかりついている。

ここがポイントになることは見落としてはいけない。

つまり、買い手がいるということは、ニーズがあるということの証である。


それから、仮に空室率が上がっていったとしても、賃料を下げれば今まで手が出せなかった企業が単純にハイグレードのビルに入居できるとなると、移らない理由がない。

もっというと、リモートワークが進んでいるので、オフィスビルが必要なくなるというロジックは単純すぎる。

リモートワークの実施率は、2021年4月に⽇本⽣産性本部が発表したデータによると、2020年5月の実施率は全国的に31.5%だったが、2021年4月は19.2%となっている。

他のデータも多少の差はあれど、せいぜい20〜25%のリモートワーク実施率となっている。

この背景は至って単純で、人はなかなか慣習を変えることはできないということだろう。

ここからもオフィス需要の低迷というのは限定的になると私は考えている。

まとめ

オフィス需要が減れば不動産市場にはマイナスになることは間違いない。

ただ、とりわけ、大型ビルに関していえば、その心配はないように思う。

くり返しになるが、賃料を下げることで近隣のビルからテナントを誘導できる。

リモートワークが進んでいない企業にとっては割安で一流ビルに入れるのだから、転居しない理由がない。

となると、テナントを奪われた近隣のビルは、さらにスペックの低いビルからテナントを奪うことになるので、業界全体で壮大な玉突きが発生する。


では、競争力を失ったビルは更地になるのかというと、ここもそう単純ではないだろう。

中には更地になって都市開発されるところもあるだろうが、マンションになったりと形を変えて新たな市場を形成する。

そんな動きが不動産業界で起きていくのではないかと予想している。


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植田 振一郎 Twitter

株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。