
英語④ 英会話の勉強方法
英語が話せるようになるために
はじめに
英語の勉強のやり方については、
① 精読のやり方
② 音読のやり方
③ 英作文の勉強方法
④ 英会話の勉強方法
の4つに分けて紹介しています。
「① 精読のやり方」と「② 音読のやり方」では主にリーディングとリスニングの習得について、
「③ 英作文の勉強方法」ではライティングの習得について書きました。
「④ 英会話の勉強方法」はこれまでと比べてもずば抜けて難しく、
また「① 精読のやり方」と「② 音読のやり方」と「③ 英作文の勉強方法」の内容を理解できてあることが前提の箇所が多々ありますので、
先にお読みいただき、少しでもいいので実践いただいてからご覧いただきますようお願いします!
それでは英語がスラスラと話せるようになるために、
まずは「英語が話せる」という状態がどういうものかを知るところから始めましょう。
ゴールを知ることで、そこに到達するための道筋が見えてくるものです。
「英語が話せる」とは
みなさんは英語で会話してみようと試みた経験があるでしょうか。
中学や高校によってはネイティブスピーカーと会話する機会があったかもしれませんし、もしかしたら海外に旅行したことがあるかもしれません、あるいは外国人観光客にいきなり道を尋ねられたことがあるかもしれません。
なんでも構いません。
そんなとき、咄嗟に英語が口から出てきましたか?
英語力によらず、ペラペラと話せてしまう人もいると思います。
どんな能力にも得意苦手があって当然なので、
細かい英語の文法とかは苦手だけど「何とかして伝えよう!」となった途端にとてつもない能力が開花する、そんな特性の人も当然いらっしゃるでしょう。
あるいは、なんとなくノリで、雰囲気で、勢いで、身振り手振りで、なんなら9割以上日本語で話したけど伝わったようだ、みたいな経験ができた人もいらっしゃるでしょう。
どちらも素晴らしいスキルです。
天性のものも含まれるかと思います。
そして絶対に、ないよりはあった方がいいスキルです。
ところが、そうではない人も多くいるはずです。
なんなら、そうではない人の方が圧倒的多数派でしょう。
まず「英語で話しかけられた!」というだけで全身が緊張状態になり、頭が真っ白になって、そもそも話しかけられた内容を聞き取るだけでも精一杯で、質問の答えを考えようとしても思考力が低下していて、普段日本語であればとっくに返事を終えているだろう時間が経過してもあたふたしているだけで、結局「えと、、あの、、その、、」くらいしか言えないまま「この人は英語が通じない人だ」と判断されて諦められる。
僕は何度も経験があります。
いま読んでいる人には、考えただけで恐ろしい気持ちになりながら、同感の頷きで首が取れそうな人が数多くいるのではないかと想像しています。
安心してください。
この note は、そんなみなさんの英語学習を想定して書いた記事です。
さて、このような体験に基づいて考えると、「英語が話せる」が実は単純なものではないことに嫌でも気づかされるでしょう。
英語が得意なわけではないのに難なく話せる人もいる。
英語の実力はあるはずなのに全く話せない人もいる。
なぜ、ただ道案内をするだけの英語が作れなくなってしまうのか。
なぜ、思考力が低下してしまって何も考えられなくなってしまうのか。
どうやら「英語で話せる」には、
「英語力」以上の要素がたくさん含まれているようです。
僕なりに分析した「英語で話せる」ために必要なスキルを3つに分けて説明します。
そのためには先に、みなさんが得意であろう日本語で話しているときの頭の状態を客観的に理解してもらいたいと考えます。
「日本語が話せる」とは
今回も、お読みいただいている方の母語が日本語であるという想定で説明させていただきます。
そうではない方におかれましては、不快な思いをさせてしまい大変申し訳ございません。
以降の「日本語」の部分をご自身の母語に置き換えてお読みくださいますと幸いです。
それでは、普段あまりストレスを感じることなく会話できている日本語は、どのように用いられているのかを分析してみましょう。
日本語運用能力
まずは当然、日本語それ自体の力が最低限、必要になりますよね。
日本語の語彙力が十分にあり、適切に日本語の文法に則ることができる。
意識的であろうとなかろうと、いずれにしてもこんな状態であるはずです。
母語が日本語であるならば、あまり苦労せずとも習得できた人が多いのではないでしょうか。
決して「語彙や文法が身についていなければ言語は話せない」ということを強調したいわけではなく、少なくともスラスラと話せる日本語は、語彙と文法が身についてあるという前提の再認識までです。
「話す」は母語でも難しい
では、言語として日本語を運用する能力が最低限備わっていたとして、それだけで「日本語で話す」は容易にできるものなのでしょうか。
「話す」という行為が求められるシチュエーションを2つ用意してみましたので、少し想像してみてください。
①倫理の授業中、「大学に進学して学ぶ意義はなにか」というテーマで15分間、班で自由に話し合うよう指示された。
②国語の授業で読んだ文章について、どのようなことを感じたか、またどのようなことを考えたか、何人か教室の前で自分の意見を発表してもらうため、15分でまとめるよう指示された。
どうでしょうか。
いま、みなさんはどんな気分ですか?
こういった類の課題が大好きで、思い切り議論したいし、できればみんなの前で発表したい、こんな風に考える人もいるでしょう。
あるいは、こんなことをさせられる授業やこんなことを言い出す先生が大っ嫌いで、絶望してしまう人もいるでしょう。
①のシチュエーションでも②のシチュエーションでも、いずれにせよ、少なくともみなさんの脳に働いたであろう感覚が「緊張」です。
この緊張が好きで楽しめる人と、苦痛に感じる人がいるというだけの話ではないかと僕は認識しています。
まず第一に、この緊張は思考力を通常よりも低下させる場合があります。
得意なはずの日本語であっても緊張するのですから、それが外国語になったら、なおさら緊張しやすいはずですよね。
それに、そもそも外国語を聞いて理解しようとしたり、外国語で言いたいことを表現しようとしたり、これだけで脳にはとんでもない負荷がかかっているわけですから、緊張と負荷の合わせ技をくらったら、まともに思考できなくなっても当然なのです。
次に、①のシチュエーションを考えてみると、思考するスピードが求められる状況であると言えるでしょう。
班で話し合うなかでは、「○○さんの意見はなんですか?」という問いであればもしかしたら事前に準備した内容を答えることで乗り切れるとしても、例えば「いまの△△さんの意見について○○さんはどう思いますか?」みたいに問いかけられたとしたら、そこから1分2分かけて悩むわけにはいかないですよね。
このリアクションの速さがなければなかなか成立しないのが、言語を「会話」という形式で用いる際の難しさと言えるでしょう。これは、自由に使いこなせる日本語であっても難しく感じることがあるはずです。
仮に日本語であれば容易に追いつけるとしても、これが外国語となるとスピードについていけなくなるのは、いたって普通のことでしょう。
さらに、①と②のどちらのシチュエーションでも、そもそも「あなたが伝えたい意見」がなければ「話す」という行為は成立しないということが、「話す」が難しい原因として挙げられます。
日本語の能力がどれだけ優れていたとしても、また考える時間がどれだけたっぷり用意されていたとしても、そもそも「あなたの考え」がなかったとしたら、話す言葉を作ることなんてできませんよね。
コミュニケーションにおける言語は、
「相手が伝えたい内容を言葉に変換して受け取る」
あるいは、
「自分が伝えたい内容を言葉に変換して差し出す」
ための媒体として機能します。
いわゆる「言語運用能力」が卓越していても、伝えたい自分の考えがないならば、言語はあまりにも無力な存在として立ち現われます。
このように、「日本語で話す」という普段自然とできている行為でも、どういう状態であるかを整理すると、さまざまな要素が入り組んだ複雑な行為であると気づいていただけたかと思います。
説得力のある言葉
では、日本語運用能力が備わっていて、それも、ゆったりと思考できる余力があり、スムーズにコミュニケーションできるスピード感が伴ったレベルまで持ち上げられたとして、しかも、日本語に乗せて伝えたいあなたの考えが確立していたとしましょう。
はたして、ただただ「日本語」が機能していればそれで十分でしょうか。
例えばこんな状況を想像してみたらどうでしょう。
あなたが読んだ本や、あなたが観た映画が、いかに素晴らしいものであったかを友人に伝えたい。
心を寄せている人と何度か食事をして良い雰囲気になったので、より深い関係になりたいと打ち明ける愛の告白をしたい。
いま持っているパソコンはまだ使えなくはないが、最新機種のパソコンに買い替えてもらえるよう親に交渉したい。
全く身に覚えのない内容で先生に呼び出されて叱られそうになっているので、自分は悪くないと釈明したい。
教室でふざけてボール遊びをしていたらついつい力が入って校舎の窓ガラスを割ってしまったため、担任の先生に謝罪したい。
これらは決して、ただ言語能力さえあれば気持ちを伝えられるような性格ではありませんよね。
伝えたい内容を意味が間違いなく伝わるように的確に表現することと、相手の心を動かして説得できることとでは、大きな違いがあります。
状況によって話す順序や文体は、相応しい形式が異なるはずです。
意識せずとも、みなさんも自然と使い分けているのです。
イントネーション・プロミネンス
さて、ここまで「どんな言葉を使うか(どの単語を用いて話す内容を作るか)」という点に着目して述べてきました。
いってしまえばこれまでの観点でみた「話す」は、言いたい内容を書き起こして手紙で表現する作業との違いがほとんどありません。
もうひとつ、文字にして伝えることと、音にして伝えることの違いにも着目しておきましょう。
出身地による方言の違いは当然あるはずですが、母語である日本語は正しい発音で話せるに決まっていると考える方が多いと想像します。
その通り、間違いないでしょう。
しかし細かく見ていくと、実はそんなに単純な話ではないようです。
どんどん細分化していくと、声色の違いも相手への影響に際を生みますし、表情や姿勢やジェスチャーによっても伝わり方は大きく変化します。
声色や表情や姿勢やジェスチャーの使い方が非常に上手な人にとって、コミュニケーションは格段にやりやすく感じるはずです。うまく機能すれば、不足している言語運用能力を補って意思疎通を可能にしてしまう場合も十分に考えられます。
しかしこの note では、こうしたスキルについて掘り下げることはしません。
この note では、言語として適切に伝えるために必要な発話のスキルを
・プロナンシエーション(単語の発音)
・アクセント(単語の強勢)
・イントネーション・プロミネンス(文章の抑揚・強勢)
の3つで捉えるものとして定義します。
単語レベルで機能するプロナンシエーションとアクセントについては後ほど説明しますのでひとまず置いておくとして、文章単位で機能するイントネーションとプロミネンスについて考えてみましょう。
まずはイントネーションからですね。
例えばこんな会話があったとしましょう。
「今日の朝ごはんは美味しかった?」
「今日の朝ごはんは美味しかった。」
発せられた単語はまったく同じなのに、一方は疑問文であり、もう一方が対する返事であると区別することができるのはなぜでしょうか。
文章として書かれてあればクエスチョンマークで判断できるかもしれません。
これが会話であるならば、私たちは違いをイントネーションによって判断しているわけです。
日本語の場合は、語尾を高い音で発話することで疑問であるという意図を伝えることができます。
こういったイントネーションの仕組みやルールが、英語にも同様にあるのです。
イントネーションの基本的なルールは2つだけです。
・クローズド・クエスチョン( Do you ~ ~ ? のように Yes / No で答える質問)の語尾は高く持ち上げて発声する。
・オープン・クエスチョン( What is ~ ~ ? のように具体的な内容を答える質問)の語尾は低く下げて発声する。
これらは恐らく英語の授業でも教わったのではないでしょうか。
基本的なルールが2個しかないことは、イントネーションの方法は2パターンしかないことを意味しているわけではありません。
実際にニュアンスを的確に伝えるために、無数といっていいほどのイントネーションが存在しています。
理屈だけで理解しきれない感覚的なものも多く含まれる使い分けなので、ごちゃごちゃ説明してもわかりづらいでしょうし、どれだけ詳細に丁寧に伝えようとしたところで説明しきれる性格のものではありません。
実際に伝えたいニュアンスを理解したうえで、そのニュアンスを伝えるためにどのように発声しているかを知る、そしてその発声方法を完璧にコピーする、という試みを繰り返す中でしか身につかないものです。
続いてプロミネンスです。
同様に日本語の例文を用いて考えてみましょう。
「わたしは昨日頭が痛くてずっと寝ていたんだ」というセリフを想像してみてください。
こんなもの誰でも同じ言い方になるじゃないかと思うかもしれません。
しかし、みなさんは自然とこんな使い分けをしているはずです。
例えば、
「そういえば今週学校休んでた日があったよね。ノート貸してあげるよ、いつだったっけ?」
「わたしは昨日頭が痛くてずっと寝ていたんだ」
「なんだか顔色が悪いようにみえるけど、どこか具合悪いの?」
「わたしは昨日頭が痛くてずっと寝ていたんだ」
「昨日ぜんぜん連絡返してくれなかったけどどうしてたの?」
「わたしは昨日頭が痛くてずっと寝ていたんだ」
みたいな感じです。
どうでしょうか、脳内で自然と再生できたのではないでしょうか。
発話に際してはこのような抑揚の違い、つまりイントネーションやプロミネンスには、同じ言葉であっても伝えたい内容を異なるものにする効果があるのです。
そしてコミュニケーションができるためには、自然とこうした区別ができていなくてはなりません。
イントネーションやプロミネンスのないセリフをちょっとだけ想像してみてください。
ひと昔前のロボットが喋るようなイメージで、
「ワタシハキノウアタマガイタクテズットネテイタンダ」
と話したとしましょう。
仮にプロナンシエーションもアクセントも完璧だったとしても、イントネーションやプロミネンスがなければ、恐らくあなたが伝えたい内容を的確に伝えることはできません。
「意味」が伝わったとしても、
「意図」が伝わらないからです。
さて、ここまで「日本語が話せる」について、
・日本語を十分に余裕をもって運用できる
・伝えたい自分の意見がある
・説得力のある言葉を作成できる
・抑揚を使い分けられる
という観点からお伝えしてきました。
簡単そうに見えて、細分化していくと、実に難しい作業を普段からこなしているわけですね。
「話す」という行為がどのようなものか、明確にイメージできてきたかと思います。
同時に「英語が話せる」という行為についても、どのようなことが求められるのか想像できたのではないでしょうか。
大変お待たせしました。
それでは、「英語が話せる」という状態をどのように作っていけばよいのかの説明に移っていきましょう。
英借文
まずは言語運用能力ですね。
英語で話せるようになるためには少なくとも、日本語で頭に浮かんでいるであろう伝えたい内容を絶対に通じると断言できる英語に変換できるスキルが備わってなくてはなりません。
基本はライティングと同じ
基本となる考え方は「③ 英作文の勉強方法」で説明した「英借文」と同じで差し支えありません。
ここでひとつ、個人的な考えを強調しておきます。
「ライティングで絶対に通じると断言できる英語は、そのまま話すだけでスピーキングとして絶対に通じる英語である」ということです。
なにを急に当然のことを、とお思いになったかもしれません。
僕がなにを言いたいかというと、
この手の話をすると必ずと言っていいほど湧いて出てくるのがネイティブ厨であるということです。
アメリカではこう話した方がナチュラルだ。
アメリカではその話し方だとダサくてバカにされる。
アメリカではこんな表現の方がかっこよくて好まれる。
アメリカではこう発音するのがクールだ。
日本人の英語は堅苦しく聞こえるからもっとフランクに話すべきだ。
日本人は学校で文法ばかり習うから英語が話せない、もっと生きた英語を身につけないと。
みなさんも耳にしたことのある言葉があったのではないでしょうか。
正直、これらの言葉に僕は嫌悪感を覚えます。
そして、こうした言葉がうざったくて仕方がないと感じるのは僕だけではないはずです。
なにも、決してこれらの言葉が間違っていると言いたいわけではありません。
確かに的を射ている部分もあるでしょう。
恐らくこのような発言をしている人たちは、きっと本心で訴えており、良かれと思って発信してくれているのだと思います。
ただ、僕にはこれらの言葉が英語学習者に呪いをかける言葉だと確信します。
理由は2点です。
ひとつは、
英語を勉強するモチベーションを大きく削いでしまうという点です。
どれほど懸命に学んでいたとしても、水を差す言葉に聞こえてしまうことでしょう。
「学校でこんなにたくさん勉強しているのに、このまま続けてもアメリカでは通用しないかもしれないのか、、」
「英語ができるようになってきたと思っていたけど、かっこ悪い英語だったんだ、だとしたら学び直さなくては、、」
「日本の学校で教わる英語は間違っているから下手に学ばない方がいいんだ。」
こんな気持ちにさせられた経験はないでしょうか。
ここに断言します。
ダサくて構いません。
英語を話せるようになることを目指すのであれば、間違いなく通じることが最優先です。
なぜなら、
僕らは外国語として英語を学んでいる外国人だからです。
なぜいきなり、かっこよさから求めるのでしょうか。
なぜ、伝えたい内容を的確に伝えられるようになる前に流暢な発音を求めるのでしょうか。
コミュニケートしたい内容を英語に変換できない状態なのに、なぜいきなり英語でコミュニケーションしようとしはじめるのでしょうか。
はっきりと申し上げましょう。
かっこ悪くてもいいじゃないですか。
ネイティブじゃないんですもの。仕方のないことです。
美しい発音でペラペラと英語で会話できるのはとても魅力的でかっこよく感じられることでしょう。ですが、その ”かっこいい英語” で話している内容が全く面白くないものであったり、相手を説得して納得させられるものではなかったりしたとすれば、それははたして本当に ”かっこいい英語” なのでしょうか?
それより、表現が拙かったとしても、発音がダサかったとしても、カタコトの話し方であっても、慣れない英語を駆使して、伝えたい内容を理路整然と話すことで聞いている人を納得させられることの方が、日本人としてよっぽどかっこいいと思いませんか?
もうひとつが、
仮に、先に挙げた呪いの言葉がすべて正しかったとして、そうであったからといって生きた英語を学べる環境に身を置くのは難しいという点です。
そんな環境を用意しようと思ったならば、
まず、莫大な費用が必要でしょう。
それから、莫大な時間が必要です。
こうした環境を用意できない人にとっては、これらの言葉は絶望的な宣言に聞こえるでしょう。
「あなたは綺麗な英語を話せるようには決してなれないから諦めてくれ」と言われているようなものです。
生きた英語から学ぶスタイルをはじめから否定したいわけでは全くありません。
例えば、
自身や家族が急な海外赴任を命じられた場合や、
海外留学やネイティブスピーカーによる英会話教室や家庭教師といった機会を容易に得られる場合には、
きっとその環境で素晴らしい学びを得られるはずです。
英語圏の文化を肌で感じ取り、まずはネイティブスピーカーとコミュニケーションできるようになってから、そのうえで伝えたい内容をしっかりと表現できるようになるという手順は、人によっては寧ろ理想的とも言えるかもしれません。
スピーキングの一点張りであっても、気づいたらリーディングもリスニングもライティングもできるようになる可能性が大いにあります。
ただ、
この学び方が、全員が選択すべき相応しいものであると考える人がいらっしゃるならば、僕は否定したい。
真に英語を学ぶためにはアメリカに行かなくてはいけない、なんて暴論を許容したくない。
これが僕の伝えたかったことです。
あなたがリーディングとリスニングとライティングを真摯に学んだうえで、絶対に通じると断言できる英語を作文できるようになったとします。
作文した英語の文章を一語ずつゆっくり、はっきりと発音して話したと想像してみてください。
どうですか? あなたの考えは100%伝わるはずだと思いませんか?
あなたは日本の英語教育をうまく使いこなすことで、リーディングとリスニングとライティングができるようになるのです。
与えられた環境をフル活用してみましょう。
あるいは、優秀な指導者や相性のいい先生と巡り会えず、どうしても良い環境を用意できなかったとしても、本屋さんに行けば素晴らしい教材がたくさんあります。
もっと言うならば、あなたは少なくともこの文章を読んでいるのだから「① 精読のやり方」「② 音読のやり方」「③ 英作文の勉強方法」「④ 英会話の勉強方法」の全部にアクセスできるわけです。さらに僕の TikTok を見ればおすすめの教材も紹介してもらえるじゃあないですか。
なんたる幸運。
僕の文章に出会えたというだけで、あなたはすでに良い環境を手にしているのです。
リーディングとリスニングとライティングを真摯に学んだうえで、絶対に通じると断言できる英語を作文できるようになること。
まずはこの状態を本気で目指してみてほしいです。
瞬発的な英借文
はじめのうちは、どれだけゆっくりでも構いません。
いや、構わないというより、ゆっくりでないとできないはずです。
「③ 英作文の勉強方法」の手順に従って、適切に英作文してみてください。
自分のレベルにあわせて英検やIELTSのライティングの題材を持ってきてもいいですし、大学受験に英作文が求められるのなら入試の過去問を用いてもいいでしょう。
まずはじっくり悩んで考えて、英作文を完成させます。
「英借文」で実践してみせたように、とにかく日本語で噛み砕いて言い換えて、できる限り平易な英語にしましょう。
英会話における英借文のゴールは、
この作業を瞬発的に、しかも頭の中でできるようになるところにあります。
とんでもなく難しそうな行為だと感じられるのではないでしょうか。
はい、その通り、とんでもなく難しいです。
ですが、身につけるための手順はあります。
「② 音読のやり方」で学んだ方法を思い出してみてください。
英作文においてもやはり、同様の学習方法が大いに活躍します。
まず、自分で英作文して作った文章を音読します。
覚えていますでしょうか、音読は脳に負荷をかける作業です。
じっくりと日本語で思考して作りあげた英文を、日本語を排除した脳で意味が追いかけられるようにするのです。
実践してみると、きっと驚くはずです。
どうしてかというと、音読があまりに簡単だと気づくからです。
例えばこんな文章を挙げてみます。
The significance of learning a foreign language lies not only in understanding what is written or spoken in it but also in recognizing, by thinking in that language, the difference between the way of thinking in one language and that in another.
読んだ記憶があるはずですよね?
ちなみにこの文章は僕が作文したものです。
そして、書いてある内容も僕個人の意見であり本心です。
もちろん、こんな文章をいきなりサラサラと書き始めたわけではありません。
頭を捻りながら、どうすれば通じる英語表現になるだろうか、どうすれば言いたい内容が適切に伝わるだろうか、悩んで悩んでようやくできあがったものです。
ところが、いざ完成した英文を音読したならば、まるではじめから頭にあった英語であるかのようにスルスルと脳が動くのです。
なんなら、音読を数回繰り返した後には暗唱できてしまっていました。
推測の域を出ませんが、恐らく理由は2点です。
ひとつは、本心が書かれてある自分の意見だから。
もうひとつは、自分で作文した文章だから。
時間をかけて作りあげた文章だったとしても、やはり自分の思考回路の癖みたいなものは変わらないものです。
できあがった英語表現は、誰よりも自分にとってパッと出てきやすい自然な表現で書かれてある文章になりやすいことでしょう。
復習としては、なにも見ない状態で暗唱できるところを目指します。
音読の直後にできてしまったなら、もう完成です。そこで勉強を終えて構わないです。
いきなり暗唱が難しく感じられるようであれば、英作文を添削してくれたネイティブスピーカーや英語の先生に音読してもらって、スマホかなにかで録音させてもらいましょう。
この音源さえあれば、オーバーラッピングもシャドウイングもできるようになりますね。
もちろんリスニングまでやってもいいでしょうけど、個人的にはシャドウイングから暗唱に移行できるといいかと思います。
リーディングからリスニングに至る手順が
リーディング→音読→オーバーラッピング→シャドウイング→リスニング
であるなら、
ライティングからスピーキングに至る手順は
ライティング→音読→オーバーラッピング→シャドウイング→スピーキング(暗唱)
といった具合です。
自分が書いた英文を音読して、最終的に諳でスラスラと言えるようになること。
この作業が、伝えたい内容を瞬時に英語に変換するための頭の使い方の訓練になります。
ここをライティングの復習のゴールにしてみてください。
論理構成
続いて、言いたいことを説得力がある形で伝えるための論理構成です。
お伝えする内容は、ほとんど「③ 英作文の勉強方法」の「パラグラフライティング」で説明したものと重なりますので、サクッと軽めにいきましょう。
「言いたいこと」を持つ
そもそもあなたの言いたいこと、考え、意見、主張、こういったものが明確にないならば、そもそも英会話ができるようになりたいという根幹の目的が揺らいでしまうはずです。
英会話の学習においては、あなたの「言いたいこと」を明確にしながら進めるよう心がけましょう。
自分の立場や主張をどのように明確にするかは、近いうちに執筆する予定である「倫理の勉強方法」で触れてみようと考えていますが、ひとまずここでは置いておきましょう。
「言いたいこと」を明確にするために、少なくとも英語学習として実践してもらいたいことがあります。
英作文のなかでも、特に意見論述の形式の自由英作文になるべく多く取り組んでください。
意見の内容についてはもちろん、試験中であれば自分の知っている英語表現の範囲内でうまく英借文できるように適宜、本心と異なる立場で書いてもらって構いません。寧ろ点数を取るためにもそうしていただきたいです。
しかし練習の段階であるならば、あなた自身の本心で意見論述していただきたいのです。
難しく感じたなら英検3級のライティングから始めるとやりやすいと思います。
実際に普段の会話のなかで誰かに質問されたと想定して、主張も、そう考える理由も、すべて自分が本当に考えた意見だけで英作文してみましょう。
必要に応じては周辺知識を確認するために調べ物をしていただいて構いません。寧ろ大歓迎です。じっくり考えて、集めたいろいろな情報を踏まえたうえで、あなたの意見を英語で論述してみましょう。
基本は「パラグラフライティング」
意見論述の形式の自由英作文は、「③ 英作文の勉強方法」でお伝えしたとおり、パラグラフライティングの作法に則ってもらって構いません。
そして、スピーキングのために音読して暗唱するのも、パラグラフライティングで書かれたもので構いません。
そのまま英会話として使えるようになってもらいます。
理由をひと言で説明するなら、外国人として不慣れな外国語で意見を主張するシチュエーションを想定する必要があるからです。
外国語だからこそ「結論ファースト」
日本語でなにかを主張したいなら、誰かを説得したいなら、状況にあわせて話の展開を好きに組み立てていただいて結構です。
いわゆるオチを最後に持ってきたり、
一方的に要求しているわけではない旨や反省している旨を伝えるために時間をかけて丁寧に譲歩してから主張したり、
シチュエーションに応じた自由な論理構成で話せることでしょう。
しかし、英語となると勝手が異なるのではないでしょうか。
相手にとっての英語もやはり第2言語である場合と、相手がネイティブスピーカーである場合と、どちらも想定しなくてはなりません。
会話の形態は1対1かもしれなければ、複数人での会話かもしれません。
自分が英語が苦手であることを理解してくれているコミュニティもあれば、そうではない場合だってあります。
うまく英語を聞き取れなかったり、うまく英語に変換するのがみんなより遅かったりする可能性が高いので、自然な会話の流れから取り残されることも多々あるはずです。
だからこそ、殊、英語で話す際には結論ファーストを心がけてみてください。
慣れてくると、案外難しくないものです。
というのも、つまるところいつ中断することになっても構わない話し方ができればいいだけなのです。
堅苦しい英作文でも、ぜんぜん身近な話題でも、結局は同様です。
ひとつ具体的なシチュエーションを想像してみましょうか。
アメリカに留学中、友人から「今日のランチはなにが食べたい?」と尋ねられたとします。
そうしたら、瞬間後には意見論述の英作文が求められたと捉えてみます。
まずは主張からですね。
「マクドナルドのハンバーガーが食べたい」みたいな結論から話しはじめるのです。
もしここで以降の発言の機会が奪われてしまったとしても、あなたは自分の意見を伝えたうえで相手の質問に答えているのですから、なんら問題はないはずですよね。
そのまま話していても構わない雰囲気であれば、あるいは「なぜマクドナルドなのか?」と問われたら、続きを話せばいいだけなのです。
主張に対する直接的な理由や根拠などですよね。トピックは1文で説明するのです。
「本場アメリカのマクドナルドに行きたいから」みたいな感じでしょうか。
納得してもらえたならクリアです。それ以上に細かいことは無理に話さなくてもいいですし、マクドナルドに向かう途中やハンバーガーを食べている最中にゆっくり説明してもいいですね。
話題が広がるようなら「日本にもマクドナルドはたくさんある」「僕はマクドナルドのハンバーガーが好きだ」「せっかくアメリカに来たから日本とアメリカのマクドナルドの違いを知りたい」といったサポートセンテンスを話すと楽しいでしょうし、「日本の店舗ではアメリカと違ってこんな仕組みで注文する」「メニューやサイズが日本とではこんなふうに違う」「どっちの味の方が好き」といった実際の気づきを話したり、「アメリカの企業であるマクドナルドが日本でどのように店舗展開していったか」「マクドナルドと日本マクドナルドの経営方針の違い」みたいなことを調べながら説明してみたりすることができたなら、あなただけでなく一緒にランチを食べるアメリカ人の友人にとっても発見がある面白い会話になるかもしれません。
ランチを決めるという、割とどうでもいい会話であっても通用してくれますし、なんならパラグラフライティングの枠組みに思い切り頼ることで、寧ろ安心して話し始められるのではないでしょうか。
これは、例えば大学の講義中に意見を求められた場合を想定したならば、なおさら役に立つものであることは少し想像しただけでお分かりいただけるはずです。
だから、スピーキングの練習をするならパラグラフライティングの作法で書いた文章を用いるのが好ましいのです。
ライティングの練習の延長として取り組むことができて効率がいいだけでなく、暗唱することで優先順位の高いトピックから話すことが自然とできるようになっていきます。
「聞き取れる英語」で話す
さて、いよいよ総仕上げですね。
話すべき言葉は、もう作れるようになりました。
ですが、せっかくいい内容の言葉を、伝わる英語の文章で、説得力のある構成で組み立てたのに、一生懸命話しても聞き取ってもらえなかったら悲しいですよね。
このフェーズで習得を目指すものは2つです。
ひとつは聞き取ってもらえる英語で話せるようになること。
まずはこちらが先です。
そのうえでもうひとつが、
できることならかっこよく話せるようになること。
先ほど少しだけ話題にした、プロナンシエーション、アクセント、イントネーション、プロミネンスの4つについてそれぞれ説明していきます。
プロナンシエーション
プロナンシエーションとは、単語をどのように発音するかというものです。
国際基準に則るならば、発音記号というものを用いて表記されるものになります。
辞書を引いたときや、スマホで英単語を検索したときに、こんなものを見たことはないでしょうか。
pronunciation noun
/prəˌnʌnsiˈeɪʃn/
この下段にあるような、「/」と「/」で挟まれたものが発音記号です。
実はここ数年、中学や高校の英語の授業で発音記号を教えないという方針をとることが多くなっているようです。
なぜでしょうか。
邪推だと言われればそれまでですが、それなりの確信をもって、大学入試センター試験から大学入学共通テストに移行したからではないかと考えています。
というのも、センター試験の英語では発音とアクセントが出題されていたのです。
ところが共通テストになってからは、発音もアクセントも出題されなくなってしまいました。
「入試に出るなら教えて、入試に出ないなら教えない。」
仮に僕の推測が正しいのだとしたら、あまりに短絡的で呆れた思考回路ですよね。教育職員免許状を持った教師であっても、いや、教育職員免許状を持った教師であるからこそ、見下げ果てたものです。
なんのために英語を教えているのかという目的が完全に抜け落ちてしまっていて、英語教育が試験に合格するための手段でしかなくなってしまっています。
どうか、僕の考えが邪推であり、発音記号を教えていない理由が別のもっと本質的なところに基づいていることを願うばかりです。
若干話が逸脱してしまいましたが、プロナンシエーションを学ぶためにはスペルとプロナンシエーションの対応関係を把握することが求められます。
このような発音学習法をフォニックスといいます。
フォニックスは演繹的な方法との相性がいい学習方法です。
まずは英語のすべての発音記号について、顎や舌や唇をどのように配置して、どんな風に動かしながら発声するかを覚えます。これだけで、英単語の発音記号を見れば、書かれてある記号に対応する音を続けて発声することで、どんな単語も読めるようになります。
次に、文字と発音記号の対応関係の法則を覚えていきます。
このアルファベットはこの発音記号と対応する、アルファベットがこう並ぶとこの発音記号に対応する、という関係性を学びます。
これが演繹的なフォニックスです。
実際に発音できるようになるところまで想定するならば、音を区別して認識できる耳の良さも必要でしょうし、口の付近の筋肉や骨格の動きを再現するための器用さやセンスも含まれる領域なため個人差は大きいと思いますが、発音記号との対応関係を整理するだけであれば案外すぐに習得できてしまうものです。
おすすめの教材をひとつ紹介しておきますね。
スペルに基づいて構成されていて、スペルに対応した発音を練習することができる参考書です。
学び終えることができたときには、例外を除いてほとんどすべての英単語を正しいプロナンシエーションで読むことができるようになっているはずです。
もちろん、帰納的に学ぶ方法をとっても構いません。
出会うすべての文章をリスニングできる状態にする過程で、音とスペルの関係に意識をほんの少し向けておくだけでも、どのように対応しているかを身につけることができるはずです。
その場合、単語帳や辞書を見た際に、それぞれの発音記号を正しい発音に置き換えられるようにしておくことで正確に伝わる発音に近づきやすくなると思います。
発音記号を学べるおすすめの教材もひとつ紹介します。
個人的には使い方は自由で構わないと思っておりますが、ざっくり2つの方法を想定しておきます。
ひとつは発音記号と音との関係を体系的に学ぶ方法です。
著書として想定されている学習方法ですね。頭から通して学んでいき、すべての発音記号を見て音を再現できる状態を作り上げてしまいましょう。
そうすれば今後の英語学習において、英単語帳であっても発音記号さえ掲載されているものであれば正しい発音を想像できますし、不安があれば実際の音声と照らして答え合わせしてみることで、より確実なものとすることができるでしょう。
もうひとつが辞書的な用い方です。
この教材を用いてしっかり学んでいくというよりは、どのように発音すればいいかわからない単語や英文に出会ったときに発音記号を調べて発音の仕方を確認するために活用するという方法です。
どちらであっても帰納的な学習との相性が良く効果的だと考えます。
どの学び方でも構いません。
好みでもいいですし、これまでの学習で演繹的な学び方と帰納的な学び方の定着の仕方に応じてもいいでしょう、ご自身に適しているだろう勉強法をお選びください。
アクセント
続いてはアクセントです。
単語を発音する際、どのシラブル(音節:母音がひとつずつ含まれるように区切った音の単位)を強く読むかというものです。
これも実は、(例外は数多くあるものの)スペルとの関係性で自ずと決まる性質があります。
単語の語末がどのような形であるかによって、後ろから何個目のシラブルにアクセントが置かれるかが決まるという法則があるので、この仕組みを把握できていれば、おおよその英単語のアクセントを判断できるようになります。
間違っても、
「全部の単語のアクセントを覚えるんだ!」
なんて途方もない作業をする必要はありません。
英語としての発音の癖のようなものをなんとなく理解してもらうところを作ってもらうために、どのタイミングでもどの難易度でも構わないので、英単語を学習する際に100語~200語ほど、いろんな品詞が含まれるようにアクセントを確認できれば、ひとまずは問題ないでしょう。
その後もがむしゃらに丸暗記を続けても、もちろん構わないのですが、ある程度の法則を理解してあるかどうかで学びやすさは大きく変わることと思います。「こんな風にアルファベットが並んでいたらこのあたりにアクセントが来ることが多いらしい」というルールを把握していきましょう。
そうすれば、あとはルールで説明できない形の単語や、いわゆる「例外」のものを、ひとつひとつ整理していくことになります。
例外と聞くと嬉しくない人が多いと思いますが、例外に出会ったとしても「例外だから丸暗記!」と認識するしかないか、あるいは「こんなルールがあるけれど、この単語だけはルールが適用されない例外だ」と認識できるかでは、例外に対する許容度合いが違ってくるような気がするのです。
そのために単語の形とアクセントの位置を学ぶことができる教材をひとつ紹介いたします。
直前にも申し上げましたが、やはり言語ですから、プロナンシエーションにもアクセントにも法則どおりいかない例外がどうしてもあります。
語学における例外について2点、お伝えします。
ひとつは、例外である単語には、およそどの単語帳であっても発音やアクセントに注意する旨の文言やマークが付いていることです。これまでの学習では軽く読み流してしまっていたかもしれませんが、ぜひとも意識して発音記号やアクセントの位置に着目してみましょう。音声を確認しながら声に出してみてもいいですね。例外に関しては気づきやすい配慮がなされているものなので、出会うたびに頷くことができれば十分ではないか、というのが個人的な見解です。
もうひとつが、日常生活のなかで普段なかなか使われることのない単語ほど法則どおりである可能性が高いということです。英語を学び始めた頃の英文法(be動詞の使い方とか基本動詞の活用とかです!)でも体感したことと想像しますが、いきなり大量の例外ばかり見せられると挫折しそうになってしまいますよね。ですが学習を進めれば進めるほど特殊な例外に出会う機会は少なくなったのではないでしょうか。例外とされるような英単語は、単語帳に載っているもののうち特に重要で頻出の英単語として見たり聞いたりしたことがある単語ばかりだと思います。
例外とは嫌なものと感じられてしまうかもしれませんが、
あまり細かくこだわりすぎずに、どうやらほとんどの場合はこうなるらしいと、大きな法則性を大雑把でいいので身につけていただけるといいのではないかと考えます。
イントネーション
次にイントネーションです。
プロナンシエーションもアクセントも「通じるか通じないか」の領域を定めるものなので、通じていないようであれば何度でも言い直せばいいでしょうし、どうしても難しい場合は書いて見せれば伝わるでしょう。コミュニケーションにおいては、筆談してはいけないなんてルールはありませんから。
しかしイントネーションやプロミネンスは「どのような意図で話しているか」を定めるものなので、場合によってはプロナンシエーションやアクセントより厄介な存在になりますし、誤解が生じた際の解決策がないという状態になってしまう可能性もあります。
と、まるで脅しのように聞こえてしまったかもしれませんが、そこまで心配することはありません。
おいおれの筋肉、イントネーションは大事なのかい、大事じゃないのかい、どっちなんだい、と思われたかもしれません。
変な伝え方をしてしまい申し訳ありません。
なにが言いたいかというと、イントネーションやプロミネンスの基本的な考え方は英語でも日本語でも大きくは変わらないということです。
もちろん機能が同じであるという意味ではなく、少なくとも英語と日本語であればどちらも、高い音で大きな声でゆっくり話される箇所が強調されるという点では大きく変わらないという意味です。
これが、英語のリズムのなかでどのような抑揚となって表れるかを実際に発声しながら体験すれば、あえて意識せずとも自然とできるようになると考えています。
プロミネンス
最後にプロミネンスです。
これはある意味で単純なものであり、またある意味では非常に面倒くさい存在です。
というのも、文章だけを見ても正しいプロミネンスはわからないからです。
少し余談を挟みます。
本文中で、大学入学共通テストの英語の試験では発音とアクセントが廃止されてしまった旨をお話ししました。
実を言うと、2009年までの大学入試センター試験では毎年プロミネンスが出題されていたのです。
最後の年に出題されたプロミネンスの問題を見てみましょう。
次の文において,話者が太字で示した語を特に強調して発音した場合,話者が伝えようとした意図はどれが最も適当か。下の①~④のうちから一つ選べ。
Max's mother told him to do his math homework immediately.
① It is this subject that should be done now.
② It was not his father who urged Max to study.
③ Max tend to leave things until the last moment.
④ Max will not do anything without instructions.
次の文において,強く発音する部分を最も適当に示しているのはどれか。下の①~④のうちから一つ選べ。強く発音する部分は●で示してある。
While holding down the button C, press both D and F for five seconds. Oh, dear. It's so complicated that I feel confused just reading the manual.
● ● ● ● ● ●
① It's so complicated that I feel confused just reading the manual.
● ● ● ● ● ●
② It's so complicated that I feel confused just reading the manual.
● ● ● ● ● ●
③ It's so complicated that I feel confused just reading the manual.
● ● ● ● ● ●
④ It's so complicated that I feel confused just reading the manual.
この問題を見てどう感じるでしょうか。
ある人にとってはあまりに簡単に感じられるはずです。
特に、時間制限が非常に厳しい中で大量の情報を処理できなければならない最近の共通テストの練習をしている、もしくは、してきたという人にとっては、あまりに容易で時間も要さない性格の設問に、腹立たしささえ覚えるかもしれませんね。
そしてまたある人にとっては非常に難しく感じられるはずです。
なにをどう考えればいいのか、どうすれば正解にたどり着くことができるか、皆目見当がつかないという人がいて当然です。
なぜならこれは、もはや英語の試験ではないからです。
もちろん英語で書かれている内容を理解できていることが前提にはなりますが、あくまで問われているのは英文法でも英単語でもありませんよね。
文脈に基づいて内容を把握したとしたら、
このように話されている言葉はどんな意図なのか、
あるいはこんな意図を伝えるためにはどのような話し方をするか、
自然なものはどれか、聞かれているのです。
掲載した2問を見てみて、あまりにも簡単だと思われた場合には、そのまま次に進んでください。
もし難しく感じられた場合には、大学入試センター試験が始まってから2009年までの、少なくとも15年分のプロミネンスの問題を確認することができるので、まずは英語の意味を理解したうえで意図を汲み取る練習をやってみましょう。
実際にプロミネンスの仕組みを(もちろんプロミネンスそれ自体がうまくできる必要はないですので「ある単語を強調すること」と「ある意図を伝えること」の対応関連が分かるという点で)把握できるところを目指します。
そのうえで具体的な発声の練習方法に取り組んでみてください。
練習方法
イントネーションやプロミネンスは「どのような意図で話しているか」を決めるとお伝えしました。
これが非常に大切な考え方です。
裏を返せば、イントネーションやプロミネンスについてこれ以外には特に考えなくてもいいと言ってもいいかもしれないくらいです。
練習としては、文の意味を把握したうえで、前の文との繋がりを意識して、強調すべき箇所が実際にどんなイントネーションやプロミネンスで話されているかを真似る、という方法を提案します。
具体的には、
① 1文だけ音声を再生して聞き取る
② 音声を停止してスクリプトを見ながら1文を真似して発声する
③ ①と②を何度か繰り返す
④ 慣れてきたらスクリプトを見ずに発声する
⑤ できるようになったら次の文に進む
という練習方法です。
先ほど僕はイントネーションやプロミネンスを学ぶ際は「どのような意図で話しているか」が大切だと言いました。
文章の意味をきちんと理解できていて、しかも文脈のなかで文章全体と各文の関係が把握できていることが求められるわけです。
さて、なにか思い出すことがあるのではないでしょうか。
「② 音読のやりかた」で嫌というほど繰り返し説明しつづけた内容は、結局のところ意味が追いかけられる状態であることを確認し続けてほしい、というものでしたよね。
リーディング→音読→オーバーラッピング→シャドウイング→リスニング
この手順を、ただの作業として取り組むのではなく、意味を理解できる状態のまま持ち上げていく訓練をしていただいているのだとしたら、イントネーションやプロミネンスの学習方法は同一直線上に置けると思いませんか?
リスニングまでやってからでもいいですが、
シャドウイングから分岐して取り組んでもいいと思いますし、
イントネーションやプロミネンスの練習をしてからリスニングしてもいいかと思います。
この辺りは好みや得意苦手によって選んでもいいですし、
リスニングやスピーキングの必要性や優先度に応じて調整してもいいでしょう。
意味を理解しながらシャドウイングができていれば、意味を理解しながらイントネーションとプロミネンスも、もうすぐそこまで見えてきています。
イメージできましたか?
これを反復して実践できれば、正しい発音で伝わるように話すことが、まもなくできるようになります!
フィードバック
ライティングと同様に、スピーキングの学習も最後はやはり、実際に話してみて第三者にチェックしてもらうことが大切です。
どれだけ完璧にコピーできたつもりでも、ネイティブスピーカーが聞いたら英語として通じない発音であったり、通じなくはないけれど違和感があったりするものです。
実際に話してみて、
まずは英語自体が通じるものであるかどうか、
そして音として通じるかどうか、
そのうえで聞きやすくて綺麗な発音かどうかをチェックしてもらい、
完璧ではないのならどう聞こえるか、改善すべき箇所はどこか、どのように練習するのが効果的か、アドバイスをもらうことができれば学習はうんと進めやすくなります。
理解ある人とゆっくり会話する
これまでお伝えしてきたように、会話は日本語であっても難しさがたくさん潜んでいるものですし、ましてや外国語で会話しようとしているのですから、はじめはうまくいかなくて当然です。
「わたしは日本語のネイティブであり、英語は学習途中で、スピーキングは学び始めたばかりである」という旨を理解して協力してくれる指導者に出会うことができたなら、本当に幸運なことです。
必ずしも英語学習の専門家である必要はありませんが、このようなスタンスを守って学びやすい環境を整えてくれるのは専門家であることが多いでしょう。
理解してくれる人でさえあれば、英語が堪能な知り合いや友人であっても構いません。
信頼できる「理解ある人」を見つけて、少しずつ英語で会話する練習をしてみましょう。
広い世界へ
ここまでくれば、あとは程度の差にしかすぎません。
「これくらいまでできていないと会話してはいけない」なんていうラインはありませんので、ある程度まで身についたなら続きは実践する中で向上させていくのみです。
これは別にスピーキングに限らず、もはやこれまでお伝えしてきた「英語学習に必要なもの」の全部が同じ状況になっているはずなのです。
語彙であっても「語彙が完璧な人」なんて存在しませんよね、どこまでいっても知らない単語には出会い続けるものです。
英文法も発音も例外はつきものですので、完璧な状態なんてありえなく、やはり学び続けることになります。
スピーキングも同様にスタートラインに立てたという風に理解してみて、昨日より今日、今日より明日と、少しずつ成長することができれば、気づいたときには想像していた場所よりはるか高い位置にいたりするものなのです。
海外に行って生活してみてもいいでしょう。
海外の大学に通ってみてもいいでしょう。
そんな仰々しいところまでいかなくとも、困っていそうな外国人観光客らしき人を見かけたら積極的に声をかけてみたり、同じ志を持つ友人と英語で会話してみたり、いまの生活を大きく変えないままでも試してみる機会を作ることはできるはずです。
あなたの活躍の場は、ぐんと大きくなりました。
広い世界へ、あなたの才能を、個性を、魅力を、存分に伝えてあげてください。
英語学習の全体像

英語の勉強のやり方については、
① 精読のやり方
② 音読のやり方
③ 英作文の勉強方法
④ 英会話の勉強方法
の4つに分けて紹介してまいりました。
すると、3つの学習手順が見えてきたのではないでしょうか。
リーディングとして取り組んだ英文を、リスニングでも理解できるようになる。
リーディングとして取り組んだ英文を、音声を真似て発音できるようになる。
ライティングとして取り組んだ英文を、繰り返し音読して暗唱できるようになる。
これら3つがうまく回るようになれば、英語の力はメキメキ伸びます。
リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングで、それぞれ身につけるべきスキルが違っていても、結局のところ同じ英語というひとつの言語なので、すべては繋がっています。
どのような手順で、どのように繋げていけば、スムーズに進められるのではないかと僕なりに考えた英語の勉強方法を提案したものです。
必ずしも、ここでお示しした勉強法が最強だと謳いたいわけではありません。
僕にとって最強であったとしても、それがあなたにとってもやはり最強であるとは限らないのは当然ですよね。
自分の特性をよく見つめて分析しながら、実際にいくつかの方法を実践してみて検証したうえで、最終的にはあなたにとっての最適な勉強法を見出してほしい。
その際、「こんな勉強のやり方で英語を学んだ人がいるんだな、試してみようかな」という経験のひとつとして、僕の記事がなにか少しでもお役に立てるようなら、僕にとっても大きな幸せです。
さいごに
お疲れさまでした。
① 精読のやり方
② 音読のやり方
③ 英作文の勉強方法
④ 英会話の勉強方法
これらを学んでいただきました。
いかがだったでしょうか。
誰かにとってはまさに求めていた情報であったと思いますし、また別の誰かにとっては全く当てはまらない情報だったなんてこともあるでしょう。
いずれにせよ、
英語という言語について、
英語を学ぶという行為について、
言語を学ぶにあたっての態度について
言語を使いこなすことができるという状態について、
考えるきっかけとなり、
「英語を習得するための方法論」以上の学びがあったならば、嬉しい限りです。
ご覧いただけたみなさまが、言語の力を駆使して思考することにより、地理的にも観念的にも、広い世界へと突き進んでいけますように。
みなさまの今後のご活躍をお祈り申し上げます。
「英語の勉強法」シリーズはこれにて、本当の本当に最後になりますが、僕の記事をご覧いただけたこと、最後まで辛抱強くお付き合いくださったこと、心より感謝申し上げます。