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潮風
日曜日
朝起きてやはり二つの写真展を
見ておきたいと思いたち
福岡へ向かう
のんびりのんびり下道を走りながら
高速道路はいつもつまらなくて
好きな場所で止まり風景を愛でることもできず
それならば早起きしてでも
目的地までの車窓を楽しみながら
帰りものんびりと糸島から唐津へ
日が傾き始めた砂浜に腰掛け
潮風に当たりしばらく
この浜は波乗りで長男が足繁く
通っているところ
海を見渡すが彼らしき人はおらず
潮風に吹かれると故郷を思い出す
島にいた頃は早く島を出たいと
願っていたのに
時が経ち思い出を
静かに温め続けていると
嫌な思い出は沈殿し
上澄み液だけをすくい上げながら
都合のよい
望郷の念だけを強めてゆく
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椅子を並べ海風に当たりながら
海を眺めているお二人
のんびり何かしらお話をしている
実はこんな時間が時として
必要なのかもしれないと
われに思う
一期一会
悔いのない時間をと思えば思うほど
エンジンの空ぶかしのように
エネルギーが消費されていく
ニュートラルな時間
無の時間も大切なのだよと
いつの間に入ったか
靴を脱ぎ砂を落とす
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