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タイムマシンがあったなら
長崎に原子爆弾が投下されて数年後の長崎
白衣を着た青年の父がいる(左端)
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この時の父はいつか会う
僕のことをまだ知らない
タイムマシンがあったなら
今の私よりも年下の
この日の父に会ってみたい
何を話したいかって?
未来の出来事は話さない
階段の途中であなたが
ガラスで指を切り大事することも
一緒に猟に行った夜
大きな流星(火球)が海の向こうに
落ちていき一瞬空がぱっと明るくなり
二人で興奮することも
二人で釣りに行って
何度も瀬に釣り針を引っ掛けて
苦虫を噛み潰したような
顔をすることも
結局 小値賀島に帰り
母と出会うことも
当時無医村だった宇久島に渡ることも
戦時中の癖
早飯の癖がずっと
なおらないことも
みんなあなたには告げはしない
爆死した叔父のことを
少しだけ聞きたい
父がどんな風に兄を探し
原子野を歩いたのかを
少しだけ聞きたい
最後までそれを話すことはなかった父
原爆が投下されて約80年
この写真が長崎市のどこかで写されたものだと
判明
写真の裏の鉛筆書きを見つけた