『日本と難民問題』メンバーコラム#1
本日からSTAGEメンバーによるコラムを連載します。
外国人に係る事象や諸問題、日本の社会問題など、多様なトピックを今後投稿していきます。
異なる関心・専門性を持つメンバーらによって書かれるコラムを是非お楽しみください!
第1回目のコラムは、STAGE学生代表の佐藤が担当します。
私は今回「日本と難民問題」というトピックで、あまり知られていない「難民」という存在に焦点を当て、定義の解説や日本の難民受け入れの現状・問題点などを紹介します。
難民とは?
みなさんは「難民」とはどのような人を指すかご存じですか?
難民条約では、難民とは下記のように定義されています。
※難民条約…
難民の取り扱いに関する最小限の人道的基準を設定した国際条約。2018年時点で146の当時国。日本も加盟済み。
難民と移民の違いは?
それでは「難民」とよく聞く「移民」は何が違うのでしょうか?
移民に正確な法的定義はありませんが、一般的に移民とは「移住の理由・法的地位に関係なく定住国を変更した人」を指します。
移住の理由は仕事、勉強、家族同行など様々です。留学生や外国人労働者も「移民」と言うことができます。
つまり、移民は自発的に移動する人々、難民は紛争・迫害などのやむを得ない理由で移動する人々をそれぞれ指すという点で、定義に違いがあることが分かります。
世界の難民情勢
世界の78人に1人が難民という事実に驚きますよね。
難民の出身国・受け入れ国共に中東地域に多いことが分かります。
日本の難民問題①「低い難民認定率」
それでは日本の難民事情はどのようなものでしょうか?
一般的に日本は「難民の受け入れに消極的である」と言われていて、その理由は難民認定率の低さにあります。
上のグラフは、2021年の難民認定数の各国比較です。
G7諸国の中でも日本の難民認定率はかなり低いことが分かります。
背景①:認定基準が厳しい
日本で難民認定が少ない理由の一つは、他国よりも「難民」の定義が厳しく設定されていることです。
日本では「迫害」の定義が命・身体の自由を奪われることに限定されていて、精神や宗教の自由は含まれません。
さらに「母国の政府から個人的に狙われていなければ難民ではない」という独自定義もされています。
このような日本独自の難民認定基準によって、難民受け入れ数が少なくなっています。
背景②:申し込み手続きが難しい
二つ目の理由として、難民申請手続きの複雑さが挙げられます。
難民申請を行う外国人には日本語での証拠書類の提出が求められます。
さらに母国で迫害を受けたことを立証するための客観的な証拠が必要であり、その立証責任が申請者本人に課されます。
これらのことから申請手続きのハードルの高さが伺えます。
日本の難民問題②「長期収容の問題」
日本では難民申請中の人は入国者収容施設に収容される場合があり、近年その収容期間の長期化や施設側の収容者への対応が大きな問題となっています。
日本で在留資格を持たない、または失った外国人は、入国管理局の外国人収容所に収容されます。
この中には難民申請が不認定となり在留資格がなくなってしまった人なども含まれます。
収容期間の長期化の背景としては、下記のような理由が挙げられます。
2021年3月、スリランカ出身の女性が名古屋入管で亡くなった事件は記憶に新しいです。
入管施設内の実情は外部からは不透明な部分が多いですが、2007年以降、収容中に亡くなった人が17人もいることから(内5人は自殺)、施設側の収容者への対応が問題視されています。
まとめ:私たちにできること
今回日本の難民事情を調べてみると、難民受け入れに積極的とは言えない日本の現状を明らかにすることができました。
しかしながら定義や手続きを緩めることで「偽装難民」の増加など新たな問題も懸念されることから、私は「難民受け入れのハードルを下げるべきだ」と一概に主張することもできないと感じます。
私たちにできることはまず「情報を知ること」ではないでしょうか。
入管における長期収容の問題に関しては特に、国民一人一人の関心の低さが変わらない状況に表れていると感じます。
Youtubeで「入管」と検索するだけでも、多くの情報を知ることができます。
私はもっと多くの人に、日本における難民や外国人に関する状況に関心を持ってほしいです。
そして日本人にとっても外国人にとっても暮らしやすい日本にするために、できるアクションを一緒に考え起こしていきたいです。
執筆者:佐藤 なごみ
東京の大学4年生。大学ではアジア地域研究を専攻し、東南アジアの開発やジェンダー問題などに関心がある。
STAGEの母体となるNPO法人「MP研究会」で外国人の就労支援に関わるアルバイトを行っている。
最後までお読みいただきありがとうございました!
次回の記事もお楽しみに!
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