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スポーツライフスタイルブランド ’47が描く “ファン” と共に歩むブランド戦略

ボストン・レッドソックスの本拠地「フェンウェイパーク」のスーベニアショップからスタートした’47(フォーティーセブン)。アメリカのベースボールファンがファミリーで着用し、球場に行く際のマストアイテムとして浸透している同ブランドが2015年に日本で卸事業を開始して8年。

その後、セレクトショップやアウトドアブランドとの取り組みをスタートし、現在では直営店の販売を中心に、野球ファンのみならずファッションアイテムとしても浸透してきています。複数のNPB球団との公式スポンサー契約も締結し、勢いを増す’47が次に仕掛ける取り組みは何なのか?事業統括役員の伊達さんにお話をお伺いしてきました。


’47の日本における立ち位置

— 2015年日本上陸という事で、まだ上陸して8年程度。ベースボールキャップブランドとしては認知度は上がってきているのでしょうか?

伊達:2016年にMLBのライセンスキャップの販売を開始し、直営店展開とブランディングに注力しだして3、4年になります。そこから、順調に伸びていますが、ブランド認知という点ではまだまだこれからです。お客様の中には「’47だから」とキャップを着用している訳ではなく、デザインが可愛いから、球団のファンだから購入したという方もたくさんいらっしゃいます。

アメリカでは選手が着用するキャップは別ブランドさん、ファンキャップは’47という棲み分けがあることから、人々のライフスタイルに浸透している存在となってます。日本でもそのようにお客様にとって身近な存在である事を目指しています。そして、日常アイテムだからこそ手に取りやすい価格設定にもしています。MLBのキャップライセンシーは3社ありますが、日本では2社のみです。

イタリア移民の双子、アーサーとヘンリーがブランドを創設

— 認知されるための施策で重要視しているものはありますでしょうか?

伊達:今一番大切にしていることはショップの展開です。お客様とコミュニケーションを取り、創業者の想いから、ブランドの背景となるストーリーを知って頂く場所としてとても意味のある場所だと思っています。
オフィシャルストアやSNSも同様ですね。Instagramやメールマガジン・モバイルアプリのような自社媒体による積極的な発信も、ブランド認知に重要な要素だと考えています。

その他、蔦屋書店さんでのポップアップショップの展開や雑誌媒体への出稿等、認知のための種まきも大切にしています。実は、商品特性上、当初はメンズへのリーチが主体でした。その後、2020年頃より一般のお客様に認知いただくためのマーケティング活動を戦略的に開始し、’47の特性から主に女性を含むファミリー層へのコミュニケーションを強化した事で、アウトドアやレジャーのシーンへ徐々に浸透していきました。

代官山蔦屋書店でのPOPUPイベント

また、新型コロナウィルスの発生を機にお客様の習慣も大きく変化しました。リモートワークが増え、数少ない通勤時にはカジュアルな服装で職場へ行く事が習慣化されました。その環境の中で女性がキャップを被って外出するという需要が増え、ベースボールキャップが女性のワードローブとして定着し始めたことも、後押しになったと考えています。結果、それまで約1割ほどだった女性のお客様の比率は3割以上に増えております。

また、現在も日本の球団との取り組みは継続しており、特に屋外球場のプロ野球ファンへの認知と球場での販売を重視してきました。新型コロナウィルスの発生により、お客様がスタジアムに行けなくなった期間も ありましたが、今年はスタジアムへの動員が回復し、NPBのセールスも回復。今はスポーツ軸、ライフスタイル軸両方を大切に考えています。

プロ野球球場でのキャップ展開

— 千葉ロッテマリーンズに続き、2023年は横浜DeNAベイスターズとの公式スポンサー契約を締結しました。これによる野球ファンからの引き合い増加など、影響はあるのでしょうか?

伊達:現在育てているところですが、認知度が上がっている感覚はあります。球場で販売されているキャップはほぼ’47なので手にとって頂きやすいのですが、まだまだ多くの方が球団商品だからという理由で購入されますし、ブランドのことを認知して購入する方が少ないのも事実です。ですから、「’47だから買う」「’47を着用して球場へ行く」という人をもっと増やしたいです。その為に球場で’47のスタッフが直接コミュニケーションを取る事もあります。

アメリカの’47のファンのように、たくさんの方に友人やファミリーと球場での時間を楽しんで欲しいです。同じ想いを持っているパートナー球団(横浜DeNAベイスターズ・千葉ロッテマリーンズ)とよりそのようなシーンを育てていきたいですし、その他の球場でも多くの野球ファンの方々に手にとって頂きたいと思っております。

小売業における販売戦略

— スタートは卸業中心でしたが、小売事業の強化に至った背景について教えてください。

伊達:「ブランドのことを深く知ってもらいたい。」という思いが強く、発信できる場所をちゃんと作りたかったというのが最大の理由です。創業者のHistoryや築き上げてきたCulture。また、商品への強い想いやその特性を伝えられる場所として直営店の展開は不可欠でした。

また、卸販売では、商品ラインナップにも限界があります。直営店の展開をしてからは「こんなにバリエーションがあるんですね。」とお客様から言われる事が増えました。これらの経験から、逆に卸では「どういう見せ方をすれば良いか?」のお話ができるようになりましたので相乗効果も感じております。

’47として初の直営店舗として二子玉川に誕生した’47 Tokyoは、2023年9月に1周年を迎えた

また、当初より卸を大きく広げたいという思いは方針としてありませんでした。社内では卸のルールを「1業態1パートナー」で考えていましたが、それでは店舗数は頭打ちになります。並行してポップアップショップでテスト販売していましたが、さまざまな場所で非常に良い反響を頂き、ポテンシャルが高い事も感じておりました。それなら自分たちでちゃんと伝えることができる直営店でブランドを広げていこうと。

もちろん直営を強化していくことはリソース的にも金銭的にも負担は大きくなりますが、お客様への発信の濃さとダイレクトにキャッチできるお声や情報は有意義ですから、直営店はこれからも大切に1つ1つ積み上げていきたいです。

— コラボ施策が見られますが、コラボ先の選定基準などはありますでしょうか?

伊達:2つありまして、1つ目は「自社のターゲットに近いお客様」2つ目は「これから目指したい領域」です。
例えば、Helinoxのキャンプチェアのコラボは、キャンプ・アウトドアが好きな方へ向けての施策ですが、ターゲットが近いと判断しての事でした。とは言え、今は直営店や通常商品の発信が優先ですので、積極的にコラボを仕掛けている訳ではありません。じっくりとブランドを育てていく中で、良い出会いやご縁があった際にお取り組みをしています。

プレスルームには、コラボアイテム他、様々な限定グッズが展示されている

最近ではThe Rising Sun Coffeeというコーヒーショップとコラボしましたが、「日常」というキーワードがコンセプトにあり、’47と同様、人々のライフスタイルに寄り添った活動をされていましたので、マッチするのではと思いました。

NANGAとの取り組みでは、彼らの使っている素材を’47のキャップで使用していますが、アウトドアシーンで使っていただくシーンが広がったと感じています。結果的に双方で大変人気となっていますし、今では彼らのインライン商品として扱ってもらえています。似た様な事例では、GREGORYとのコラボですね。こちらも「登山に行く人がかぶれるキャップはないか?」というお話になり、ソロテックスを採用してキャップを製作しました。これがシワになりにくく重宝されていまして、定番商品になりました。

このように、お客様に日常的に使ってもらえる事が目的であり、コラボがきっかけで’47自体に興味を持って頂けるようになるのが目標ですね。

— ファッションスタイルとしては、どのようなジャンルを想定して作られているのでしょうか?

伊達:オンラインストアを含めた直営店では「タブロイド」を配布して、スタイルを発信しています。また、タブロイドを発刊しているもう1つの理由は、’47が創業時、ボストンで新聞販売からスタートしているというストーリーが背景にあります。

各シーズンごとにタブロイドを発刊

ターゲットとしている30-40代のお客様、そして現在一番購買層が多い20代後半などの若い人たちにもっと日常的にキャップを被って欲しいという思いがあり、タブロイドに掲載しているファッションスタイルもなるべくそういった年齢層の方々の「日常」がテーマになっています。

‘47のお客様は今までキャップをあまりかぶった事のない、キレイめ、ベーシック系のお客様も多いですので、キャップには何を合わせたら良いか?という質問が、やはり店頭でよくあります。’47らしいファッションスタイルのご提案として、タブロイドを活用して接客に活かしています。

ファッションディレクターの金子恵治さんのインタビューも掲載

— ベースボールキャップをECで購入する際に、課題になりやすい事は何でしょうか?また、その課題をどう解決しているのか?についても教えてください。

伊達:例えば、’47の特性であるウォッシュがかかった商品に関しては「色褪せているのでは?」と不安になられるお客様がいらっしゃいますので、商品詳細ページの説明文にお客様が不安に思うであろう内容はあらかじめ記載しています。

大きな視点だと、アメリカでは’47は「スポーツライフスタイルブランド」という概念が浸透しています。北米4大スポーツ(MLB・NFL・NBA・NHL)のチームが各都市にあり、365日スポーツに触れる事ができますし、誰もが贔屓にしているチームが存在します。

それに対し、日本は日常的にスポーツに触れる環境がそれほどありません。「スポーツ」と聞くと、観るより「Do(する)」を想起するのかと個人的には感じております。スポーツ観戦、またはテレビやサブスクリプションを通しての視聴の機会はアメリカより圧倒的に少なく、スポーツライフスタイルという概念とは結びつきにくい。そのような理由からも、日本人のライフシーンのビジュアルをメインにお客様に提案しています。本国のビジュアルはもちろんあるのですが、日本の文化・ライフスタイルに置き換えたイメージで提案することで、よりご自身の日常に取り入れやすく思っていただけると嬉しいですね。

—リピート施策で工夫されている事はありますでしょうか?

伊達:カラーバリエーションの提案や形・シルエットのこだわりへの理解を深めてもらえるようなコンテンツを用意しています。

’47クリーンナップ・’47フランチャイズ・’47 MVP・’47キャプテンなどのモデルがある。
参考:https://www.47brand.co.jp/pages/headwear-style-guide

その結果、違う色味、違うシルエットのアイテムの需要が喚起され、リピートの購入に繋がっています。それぞれのモデル×球団数のバリエーションがある訳ですし。また、手洗い推奨ですが、キャップが洗えるという事はもっと知って頂きたいです。その分消耗もしていきますが、複数のキャップを使い回す事で物持ちが良くなります。シーズンの移り変わりに沿って素材を変えて、より季節性を重視したものを選択して欲しいという思いもあります。そのあたりはファッションのシーズンと同じ考え方です。

Appify・VIPの活用と今後の展望

— Appify・VIPを導入した経緯・理由があれば教えてください。

伊達:(Appifyを導入した背景として)抽選販売がしたかったという経緯はありますが、大きな目的としては、顧客の方向けにリピート施策をやりたかったためです。元々、リピーターの購買は非常に多く、5割を占めていましたが、お客様にもう一度何かを購入して頂く為にどうしたらいいか?を検討していました。

メールマガジンでの発信も行っていますが、それ一本では物足りないと感じており、リーチしやすく、お客様の情報を得やすく、コミュニケーションが取れるツールを探したところ、Appify・VIPというサービスに行きつきました。

’47公式アプリ

今年度からは、VIPを利用してリワードプログラムもスタートしています。今以上に’47を好きな人を増やしたい。楽しめる場所を作りたい。その為に必要な機能がAppifyとVIPにはあります。今後はリワードプログラムがあるということを積極的に発信し、お客様にさらにお買い物を楽しんで頂ける環境作りをしていきたいです。

FUN CLAB REWARD(リワードプログラム)

— VIP導入に際して、早い段階でリワードプログラムを盛り込みました。その狙いと今後の展望について教えてください。

伊達:現在、関東で直営店が2店舗ありますが、リピートしてくださるお客様が増えてきました。今後はもっとたくさんの方に頻度高く来て頂ける場所を作っていきたいのが最大の目標です。

その一環として、’47のリピーターになって「これは凄い!」と思っていただけるイベントを提供したいと考えています。例えば、球場を貸し切ったり、商業施設の広場でMLB開幕に向けてのトークショーのようなイベント開催ができれば面白いですね。去年は松坂大輔さんを呼んでのトークショーもやっているのですが、そのようなイベントを頻度高く開催していきたいです。そのようなイベントのご招待をリワードでご用意する事を検討しています。

過去には神宮球場を貸し切ってイベントを開催

今後増えていくであろう店舗でも、会員ステージごとにメリットをご提供できると良いですね。Appify・VIPの機能を使い、ブランドを体現できる場所を今後もたくさん作っていきたいです。

’47 FAN CLUB(会員ランク特典)

編集後記

お話の中で強く感じられる、中の人たちの一貫したブランドへの愛。

「創業者の想いをもっとお客様に知って欲しい」
「シルエットのこだわりがこんなにもたくさんある」
「ブランドの背景となるライフスタイルを知るともっと生活が豊かになる」

ブランドを運営する方々がそのような強い思いを抱いているからこそ、それが日々のサービスにも反映されています。WEB上でそれらを完全に表現するのは、技術的にまだ不可能なのかもしれませんが、いかに理想に近づける事ができるか。その不断の努力が支援側のサービスレベルまでも成長させています。

文化を形成し、お客様の生活に変化を与える。思いの強さだけ変化の度合いも強い。そんな’47のお客様を飽きさせない取り組みが今後も楽しみです。

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