店長さんの栄転
行きつけの洋服屋さんの店長さんが、本社に行ってしまった。急なことで、挨拶もできなかった。私は、その店長さんとは、よくしゃべる仲で、店長さんは私の名前を知っていたし、私はその店の常連客で、けっこう服を買っている。ちょっと背が高くて、明るくておしゃべりで、私だけでなく、どんなお客さんとも親しくしゃべる、いい人だった。店長さんがいなくなったあと、買い物に行って、試着をしようとしたら、ブラウスの、ボタンがとじたまんま渡されて、ああ、あの店長さんだったら、ボタンを全部はずして渡してくれたに違いない、と思って、もう店長さんはいないんだな、と寂しさを実感した。
大きな会社だと、仕事ができる人はあちこちから引っ張られる。本社に行くってことは栄転なんだと思う。でも、店員さんも言ってたけど、その店長さんはお店でお客さんの相手をするがすごく好きだった。本社で何をやってるのか知らないけど、一日中パソコンに向かうような仕事は、店長さんには向いてないんじゃないかなぁ。でも、どうしようもできない。意外とそういう事務仕事もこなせちゃうのかもしれない。もう会えないのは寂しいけど、与えられた場所で、長所を生かして働いていてほしいなあと思う。