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「私をくいとめて」はお一人様で見るべき映画かも

2021年2本目の映画は「私をくいとめて」を見てきました。
「私をくいとめて」は2017年の公開されたオタクの女性が恋しながら、妄想の中で本音を爆発させる恋愛コメディ映画の「勝手にふるえてろ」と同じ、綿矢りさ×大九明子のタッグの作品です。

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簡単なあらすじですが、長年彼氏もおらず、親友も結婚し、人がいない31歳みつ子(のん)は脳内のもう一人の自分(声:中村倫也)を相談役としてお一人様生活に不満なく過ごしていた。しかし、ある日、家の近所で取引先の年下の営業マン多田くん(林遣都)と出会い、流れで彼のご飯を作ってあげるという不思議な関係となる。みつ子はひとりを生活を楽しみつつも、不器用ながらも多田くんへ恋にふみだそうとする物語。
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予告編しか見ていなかったので、勝手に恋愛要素が強目の内容かと思っていたが、眩しいきゃぴきゃぴ感はなく、独身のアラサーにとって強く共感させられる映画だなという印象を受けました。

まず31歳という設定が絶妙。
20代の仕事もプライベートも理想を求めて頑張るエネルギッシュな姿はなく、ある程度仕事も慣れてきて、少し落ち着き出す年齢である31歳。
結婚していれば環境の変化はあるが、まだ未婚で彼氏・彼女もいない、どちらかといえば周りの友人が結婚や転職でそばにいた友人が減っていくことを実感する年齢。
いわゆるお一人様になりやすい年齢。


みつ子はお一人様であることに開き直り、お一人様でも新しい経験はしたいといろんなお一人様へ調整する姿は男性の自分にとってもかなり共感させられた。
もう一人の自分であるAに話しかけるシーンは最初少し違和感を感じていたけど、自分自身のことを振り返った際に、何かうまくいかなかった時に、「あの時あーすれば結果が違ったんではないか」と独り言でつぶやいていることを思い出すと自分の中にもAのような相談役が実はいるのかもしれないと気付かされた。

そして、強く突き刺さったのは親友の皐月とのシーン。
結婚して住む場所が変わっても親友は親友と思い、久々に会って見るが、
そこには今までみたいな下らない話で盛り上がっていた親友はいなくなっており、自分だけが何も変わっていないことを痛感させられる苦い経験を思い出したな。


また、このキャスト陣が良く、みつ子と関わるキャスト間の会話シーンが凄く良買った。特に職場の先輩にあたるノゾミとのシーンはお互い信頼し合っているためか、ノーストレスのやりとりがどこか心地よくでずっと見てられるなと思った。
ノゾミの「みんな生まれながらのお一人様なんだよ。人といるためには努力が必要。」のセリフは名言で、どれだけ気が合う人で会っても、一緒にいるとなると努力は必須だなと昔同棲した時を思いださせられた。

あと、登場シーンは少ないけど商店街のコロッケ屋の岡野陽一がとにかく最高。
ただニヤニヤしているだけなんだけど、そこにいやらしさはなく、見ていてこっちがホッコリする絶妙なニヤニヤだった。

綿矢りさ×大九明子のコンビは前作「勝手にふるえてろ」も好きで、今作も期待していましたけど、想像以上に好きな映画でした。勝手にふるえてろでは妄想の世界で本音を吐きまくる姿が印象的だったけど、今作ではもう一人の自分と会話するという、妄想世界と現実をリンクさせる映画を作ったらこのお二人のタッグは最強かもしれない。

個人差はあるけど、お一人様にとっては共感箇所が多い作品。
コロナによって人と会えない状態がまだ続きますが、落ち着くまでは自分なりのお一人様を楽しんで、そして、コロナが落ち着いた時はみつ子のように恋に踏み出したいと感じました。
まずは、最初のお一人様活動としてこの映画を一人映画館で味わって欲しいかな。


見終わった帰り道のBGMは「君は天然色」で決まり、本当に名曲です。


あと今作のパンフレットも非常に素晴らしかった。各キャスト、原作者、監督のインタビューはもちろん、衣装や美術のスタッフのコメントやお一人様を楽しむ図鑑がのっていたりと、充実した内容で購入して満足の一冊でした。
映画のパンフレットが工夫されると本当に嬉しいし、その映画もさらに好きなる。


今作はコロナの影響で、撮影が中止したり、脚本が修正を行なったと記事を見ました。なんとか上映まで出来、結果、2020年の東京国際映画祭では観客賞を受賞したという。どんな状況でも工夫して撮影を進めた映画って凄い。見れてよかった。
コロナでも映画は負けないでほしい。

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