「発達障害」と診断されることについて考える

子どものための精神医学(滝川一廣著)を読み、この名著をシェアしたいと強く思ったので書き記す。

途中私なりの仮説も挟むが、そちらは高速で読み飛ばして頂いて構わない。
この本の内容は、全ての「診断を前に悩み苦しむ親御さん」にとって何かしらの心の拠り所になると確信したので、ぜひ引用部だけでも目を通して頂ければと願う(後半に引用をまとめる)

前提として、私は”発達障害をもつ子ども達“のコミュニケーションを支援する言語聴覚士という仕事をしている。

日本でも平成17年に発達障害支援法が制定された期を境に、その用語が広く知れ渡るようになった(逆にいうと、これまでずっと存在していたのに概念として発表されたのが最近ということ)

発達障害の中には、知的能力障害群、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害(AD/HD)、限局性学習障害、運動障害群(発達性協調運動障害etc)などが含まれる。

私自身、多くの発達障害と「診断」された子ども達・親御さんと出会ってきた。また最近は0〜3歳に特化した発達支援も始めたことで、診断がつく前の子ども達に出会う機会も増えてきた。

その中で、発達障害と診断されることは、子どもにとってメリットが大きいと感じている。

もちろん診断がつくというのは簡単なことではない。2歳の我が子に診断がつく親御さんの不安もたくさん目にしてきたし、10歳になって初めてそれを知らされた時の子どもの葛藤もみた。

それでも、デメリット<メリットと思っている。

<メリット>

・ワガママな子と誤解されない
(特性上、器用にできない事があると理解される)
・特性にあった支援を検討される(学校・保育園)
・公的サービスが受けられる(手帳や受給者証の申請)
・既に悩んできた人の歩みを参考にできる
・名付けられることで漠然とした不安が解消される
・親がむやみに自分を責めない、周囲から責められない

<デメリット>

・診断名=個人の全てと誤解される

項目数としては少ないが、様々な医療福祉の現場に出入りする中で、このデメリットが見え隠れする現実は否めない。

「自閉症のAくん」「ADHDのBくん」というように、診断名があたかもその子の全てだと考えられる場合があるようだ。診断名があるからといって「自閉症だから仕方ないよね」で片付けられることは悲しい。

一言で自閉症といっても千差万別。やりとり行為を行えるが少々一方通行な発言が多い子もいれば、全く他人との共同遊びができない子もいる。

そして、症状も変化していく。様々な環境要因や経験により、障害がない子と同様、未来は未知なのだ。私は、療育は「日々更新されるオーダーメイド」であることが望ましいと考えている。

話を戻すが、以下滝川先生の本の中で、「診断」という概念についての解説が素敵だなぁと思ったものを引用する。

*引用*

診断とは、あらかじめ人為的につくられた「分類」の引き出しのどれに入るかを決めることである。
すなわち診断名とは、子どもの内にある何かの呼び名ではなく、子どもの外につくられてある人工の「引き出し」の呼び名を意味する。たとえば、A君を「自閉症」と診断するのは、A君が自閉症という存在だということではない。ただ、
A君の行動のあり方のある部分を選び出してひとまとめにして精神医学の分類の引き出しに入れるならば「自閉症」とラベルした引き出しに収まるということである。
診断とは既製の「引き出し」に入れることだから、からだにあった既製服がいつも見つかるとはかぎらないのと同じく(中略)、どれにもぴったり収まらないケースがかならずでてくる。
診断できなくても援助はできる
ある子どもの行動のあり方にぴったりの引き出しがみつからない、つまり「診断がつかない」ことと、その子どもが理解できないとか援助の手立てが見つからないこととは同じではない。
診断には意味がある
引き出しに入れなくても理解や援助は可能。とはいえ、引き出しが無用なわけではない。何のための診断かが、たいせつである。
分類という意味での「診断(diagnosis)」ではなく、理解という意味での「診断(formulation)」で、これを本人や家族、その子とかかわる人たちと分かち合っていくことが診療なのである。そして、できればその分かち合い自体が、治療性をはらんでいる「診断(formulation)」であることが望ましい。

一部を引用したものになるのでビビッと来た方はぜひ本を手に取ってもらいたい(回しものではない。単純に感激した)。

私もこの本文の内容を心に刻んで、日々前に進む子どもや親御さんの人生を支えられる一人になりたい。

<子どものための精神医学 >https://www.amazon.co.jp/dp/426003037X/ref=cm_sw_r_cp_tai_4tOnEb00M5NAS


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