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発達障がい児にとっての、小1の壁

世間には「小1の壁」という言葉があります。子どもの就学に合わせ、親の仕事調整の難しさがあることなど、親側に起こる困難を示す意味で使われる言葉のようですが、当然子ども側も、就学は大きな環境の変化であり「壁」と言っても過言ではないと思うのです。特に、発達障がいのお子さんのように、環境の変化を苦手とする人にとっては、「そり立つ壁」とも言えるのではないでしょうか。今回は、発達障がいの子が具体的にどのような壁でつまづきやすいのか、考えていきたいと思います。

※子ども側の困難さを表す言葉として「小1プロブレム」という言葉もあります

※この記事は、小児科医石川道子先生と言語聴覚士ももさんとのInstagram Liveの内容を引用しています⇩
https://www.instagram.com/hattatsu.hoiku.gakkou/


大人不在時に起こる、コミュニケーショントラブル

幼児期までの園生活の中では、大人が子どもを見ていない時間が無いです。園庭で子ども達が自由に遊んでいても、2〜3人の先生が見守っています。だから、怪我に繋がるような行動が起きそうな時は未然に対応したり、もしトラブルが起こったとしても、原因を大人が把握していたりします。

しかし、小学校に上がった途端、遊び好きな先生が園庭で汗を流しながら遊んでる以外は、基本的に先生は職員室にいて、休み時間は子どもだけの世界になります。つまり、大人が見てない時間帯が必ず発生するということです。

万が一、子どもだけの時間に何かトラブルが起これば、「先生!」と誰かが大人を呼びに走っていきます。そして、先生達は、何が起こったか分からない状態から、トラブルに介入する必要があるので、当事者たちから説明を聞いて判断していきます。

定型発達でコミュニケーションの発達が順調な子どもは、相手が慌てている時に、話の重要な部分に絞って端折って話すことができます。また、自分にとって都合の悪い情報を上手く操作して、省略できる場合もあります。誤解をして欲しくないのは、定型発達の子の根性が悪いと言ってるわけではなく、人間は皆自分が優位になるように喋る生き物なので、当然の話なのです。1年生くらいになると、その辺りのコミュニケーションスキルが達者な子がでてきます。

一方で、発達障がいのお子さん達は、どれだけ発達が早いタイプの子でも、小学校1年生時点で、トラブル時に子どもだけで相談して解決することや、相手に分かるように状況を説明することが、難しいことが多いと思います。

普段の会話、特に自分の趣味の話などはペラペラお話する子でも、「今何が起こったか説明して。」と言われて説明する能力は別物です。中には、頑張って説明をしようとする子もいますが、「1時間目が国語で…。」のように、相手が急いでいても、とても丁寧に説明してしまい、相手が「その情報は求めていないんだけどな…」となることがあります。

つまり、こういった周囲の子とのコミュニケーションスキルの差により、なぜか悪者になっていたり、自分の思っている事の運びにならずモヤモヤを抱えてしまうことが増えるのです。

発達障がいのお子さんのこういったトラブルは、1年生や低学年に限らず起こってきます。発達障がいの子も、段々と上手に情報操作できるようになりますがあまり上手じゃなく、自分が怒られることを隠せばいいと気が付いた時も、隠し方が下手なことが多いのです。

授業のスタイルに慣れないトラブル

幼児期に通っていた場所が、設定保育のように皆で1つのことに取り組むスタイルだった園と自由度の高いスタイルの園があります。比較的自由度の高い園に通っていた場合は、学校の授業のように、時間で切り替えていくスタイルに慣れることに、時間がかかる場合があります。

また、幼児教育は「気分が悪いから、今日のプログラムには乗れなかった」となっても、次の日に困りません。たとえプログラムの内容が厳しくても、幼児期は学習を身につけることが主目的ではないので、「楽しく参加した方が良いけど、嫌な子はしょうがないね」となりやすいです。一方、学校は学習を積み重ねていく必要があるので、「今日はやらない」と言うと、その後に不都合が起こることがすごく多いです。

また、最近では、就学した時点で字が読めない状態で入ると、かなり大変です。読める子たちを前提に学習が進んでいくので、読めない子が限られた時間数で文字を覚えるというのは、大変だと思います。本当は、「文字って面白い」と思った頃にその子のペースで学習が進んでいけば良いのですが、そうともいかない環境です。


トイレに間に合わないトラブル

物理的な環境の違いでいうと、小学校は園と比べてとても広くなり、謎の部屋もいっぱいあります。保育園や、特に小規模の園から来た子はとてもびっくりするでしょう。

そして、保育園の時は、部屋とトイレがとても目と鼻の先なので、排泄の時に「あ!したい」と思ってすぐ行けば間にあっていた子が、学校に行くとトイレが間に合わないということが出てきます。

しかも、トレイのタイミングが 分からないトラブルも起こります。最初は、休み時間のうちにトイレを済ませておくことがわからず、でも授業中もトイレにいけず戸惑う子がいます。授業の途中でもトイレに行ってOK、としている所もあると思いますが、授業を抜けていくと内容がそこだけ歯抜けになってしまうので、デメリットもあります。

だから、ある程度保育園のうちに、タイミングを周囲に合わせてトイレにいく練習をしておくことは大切ですね。


知り合いの有無の違いでも異なる

今は乳児の頃から、保育園6年間ずっと同じメンバーだった、という子もいます。そうすると、発達障がいの子に対して、周囲が慣れてるので、何かトラブルがあっても大事に至らぬよう周りが上手に静めてくれることもあります。しかし、学校にいってメンバーがガラッと変わってしまうと、今までうまく処理されていたことが、急に問題になったり、嫌がられたりする可能性もあり得ます。

ある発達特性を持ってるお子さんが、中学時代に友達関係が上手くいってない、みんなが自分にキツイ、と相談してこられました。その中で、保育園から一緒だったお友達は「大丈夫だ」と言うのです。でも、実はその友達はすぐキレてしまう子で、周囲の子に怖がられていた子だったのです。すごく不思議なのですが、「小さい頃から傍にいた子は、自分のなかで壁はないんだ。」とのことで、やはり人間関係の苦痛の有無も、慣れの可能性が大きいのかな、と思います。

他のことにも言えますが、運動があまり上手ではない子が、「スキーは凄く滑れる。」と言ってて、なぜか尋ねたら「物心ついたらスキー場に立ってたから。」と言ったのです。発達障がいの人たちにとって、気持ちの抵抗感は慣れの有無やかける時間が大きい気がします。

もし、幼児期にすごくフレンドリーな集団の中にいたのであれば、進学する時に、同じメンバーが多くいる学校にいくことも1つの選択肢です。見慣れてる子の後に付いていけば良いんだな、と思えるかもしれないですね。



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