障害リハビリとは「戻す」ではなく「使いこなす」行為 -1.の解説-
リハビリの話をする前に大事な情報を三つ伝えます。
1.麻痺は無くならない
2.リハビリの最初は自然治癒の促進
3.リハビリの真骨頂は1年後から
note読者の皆様は(脳)障害によるリハビリを受けたことないと思います。
私も受けたことはありません。言語聴覚士(セラピスト)としてリハビリを提供する形で関わる機会が多いだけです。
障害を一番近いところでたくさん見比べ、消えることのない障害を本人が使いこなせるように毎日闘ってきたから伝えられる内容だと思っています。
今回の伝えたいメインの相手は、介助者となっている妻・夫・家族の皆様にです。
ある誤解によってリハビリに大事な時間とお金を頂いているのに無駄になっている。
そんなケースがちらほら出ているので生意気ながらお伝えしていきます。
1.麻痺は無くならない
麻痺と聞いてわかりやすいのは身体ですね。一般的に見ることが多いのは、身体の半分が動きにくくなる片麻痺の方です。
麻痺の原因は、簡単に言うと脳本体か脳からの指令神経回路の異常です。
脳本体からの指令がそもそもないタイプや指令があっても反応しないタイプ、過剰反応するタイプ、命令と違う誤変換するタイプ、命令がないのに動くタイプなど様々あります。これらは運動回路の問題。
感覚の回路も別のところにあります。
麻痺の程度(症状が重いのか軽いのか)は、時期によって段階が変わりやすいです。
発症直後の寝たきりは麻痺症状が重めに出始め、
動けるようになってきてから一気に減少(改善)してきます。
半年〜1年後には麻痺の重さ(重症度)は固定化され始めます。
この時点の麻痺が、その後ほぼ減少することなく残存していきます。
麻痺がある、ということが日常生活に支障をきたし障害と呼ばれるようになります。
そして脳の神経回路の問題で起こるのが麻痺ということは、問題になるのは身体だけではありません。
コミュニケーションに必要な言語機能(聴く・話す・読む・書く)、
食べること(嚥下機能)、
考えたり判断したりするのに必要な情報を司る様々な機能(高次脳機能)
も広い意味では同じです。
麻痺や障害が残っていても、リハビリをすることで新しい神経回路を作ることができます。だからセラピストという職業が重宝されています。
ただし難易度は激ムズだとご理解ください。
麻痺や障害がなくても、癖を直すことや新しく習慣を身につけるのがどれだけ大変かわかりますよね。
腕に麻酔をした状態でコップを持てますか?
舌に麻酔がかかった状態で普段通り会話できますか?
「当たり前の動作」や「この程度のこと」と一見思うことが出来なくなること自体が麻痺や障害そのものなのです。
結論、麻痺や障害をリハビリで無くすことは出来ないです。
じゃあ、リハビリでは何をしているのか。
失った機能そのものを復活させているのではなく、
残っている機能で失った機能分も「使いこなす」訓練です。
だから本来の能力(動作)と比べるとどうしても劣っていることが多いです。
むしろ、それが出来ていることが既に凄いことなのです。
言い方は悪いですが、
能力的に上手く発揮できないという意味で行動レベルは「赤ちゃん」状態と思ってください。
怪我なく安全に過ごすためには、周りのサポートがあって「当たり前」なんです。
それが「介護」の世界にもあります。
実際にリハビリ介入して必要性が多いのは本人の改善だけでなく、周りのサポート力の改善向上になります。
「麻痺がなくなる」「障害はなくなる」前提でリハビリを求め過ぎると、本人だけに解決させる方法(無理難題)ばかりをさせてしまいがちになるのでお気を付けください。
こんなことがよくあります。
ある時期を境に
リハビリをやってもなにも変わらない、と。
その原因と答えは簡単です。
【本人に問題がある】のではなく【周りが】
使いこなせていないからです。
考え方や捉え方によってリハビリの質は一気に変わります。
本人だけの問題にせず、どうか一緒にお付き合いください。
リハビリのゴール設定で迷走しないコツがあります。
麻痺や障害がある状態でどれだけ機能を「使いこなせた」かどうか、です。
周りの援助も含めて目的の動作を「使いこなせた」かどうか。
大事なことは、
周りの援助があって初めて「正しく使える」ことがあると理解することです。
知ってしまえば、日々の生活の一つ一つがすでに上質なリハビリの場にもなり得ます。
(やりすぎ・求めすぎはお互いが疲れるので程々にね)
それではまた!
次回は、
2.リハビリの最初は自然治癒の促進
から書いていきます。
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