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ファーストキス

12月24日、クリスマス・イブ。


今年は運良く日曜日。


冬らしい寒い朝、日曜日にしては早めにベッドを出て…身支度。


いつもより化粧を入念にして


前日の夜、選び抜いた服を身に纏う。


少しだけ、緊張しながら向かった待ち合わせ場所には


何度も顔を合わせ、見慣れた彼の顔。


でも、今日は


彼も、ちょっぴりお洒落してる。


バチバチに決めるわけじゃなく…あくまで、“ちょっぴり”。


…かっこいい。


そんな彼と過ごしたクリスマス・イブは


普段は行くのを少しだけ躊躇ってしまう、“ちょっぴり”お高いお店で、お互いのクリスマスプレゼントを買って


いつもより“ちょっぴり”奮発して、お洒落なレストランで美味しいご飯を食べた。


そんな絵に描いたようなありきたりなクリスマスデートが、すごく楽しかった。


――――――――――――――――――――


クリスマスデートの帰り道。


和:あー…。


イルミネーションがキラキラ輝く道を手を繋いで歩きながら、ため息ひとつ。


○○:…どうした?


和:クリスマス…終わっちゃうなぁって思って。


○○:…クリスマスは明日だけどな。笑


和:そうだけど…明日は仕事じゃん。


○○:…現実に引き戻すようなこと言うなって。笑


そのままイルミネーションの道を歩いていると、きらびやかに装飾された広場のような場所に出る。


広場の中心には、大きなクリスマスツリー。


○○:…少しゆっくりしてく?


和:する!


2人の他にもたくさんのカップルがいる中、端のほうで運良く空いてたベンチに腰を降ろす2人。


和:…///


少しだけ身体をずらし、○○にぺとっとくっついて座る和。


○○:…。


それに応えるかのように、○○も和の方に身体を寄せる。


和:今日…楽しかった。


○○:…そっか。笑


どこか嬉しそうな表情の○○の吐息が、寒さで空気中に白く舞う。


和:○○さんは?


○○:楽しかったよ。


和:…。


和:…何番目?


○○:えっ?


和:今までのクリスマスで何番目に楽しかった?


○○:何なんその質問。笑


和:いいから。


○○:1番。


和:ほんと?


○○:ほんと。


和:…へへ。笑


嬉しそうに笑う和。


すると


和:わっ…!


広場のツリーが、急に今まで以上にきらびやかに輝き始める。


和:急にどうしたのかな?


○○:さぁ…?


ふと、広場にあった時計を見ると


○○:あー、9時になったからか…?


和:なるほど…。


理由は定かではないものの


和:きれーい…。


まばゆく輝くツリーに目を奪われる○○。


○○:…。


そんな和の横顔を、そしてイルミネーションに照らされてキラキラ輝く和の瞳を、思わず見つめてしまう○○。


○○:…。


○○:…なぎ。


和:…?


名前を呼ばれて振り向いた、和の後頭部の辺りに片手でそっと触れ





………そっと、唇を重ねる。





その瞬間、ツリーの輝きも広場の雑踏も…どこかへ行ってしまう。


長いような、短いような…2人だけの空間。


唇を離し…見つめ合う。


○○:…なぎ。


○○:………愛してるよ。


和:…!


和:………/////////


照れ隠しからか、口をもごもごとさせながら目線を逸らす和。


○○:…何か言ってよ。笑


和:ど、ドキドキしすぎて無理…!//////


後頭部に触れていた手をそっとずらし、あたふたする和の頭を撫でる○○。


和:…//////


○○:…。笑


和:…○○さん。


○○:うん?


和:………。


和の大きな瞳が、○○を捉えて離さない。


和:私も…好き。愛してる。


和:もう1回………して?


そう言って瞳を閉じた和の唇を


○○は…再び奪い


人目もはばからず、和を抱きしめた。


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2023年は、日曜日が53日ある。


そんな…1/53の今日は


「クリスマス」という1年で1番豪華な飾りつけがされて


彼と2人で…“ちょっぴり”、私たちなりのアクセントを加えて…


とっても大きくて…素敵な思い出になった。