メンターとして
朝、出社。
○○:ういっす。
和:ぉは…ざい……す。
○○:(声小さすぎて何言ってるか全くわからん。)
和:(あーあ、こうして隣の席に○○さんが来てういっすって言ってくるのもあと明日と明後日でおしまいかぁ…。)
○○・和:…。
○○:(なんで全然喋んねぇんだこいつ。)
和:(やばいめっちゃ見られてる…多少は名残惜しさとかあるのかな。だとしたら嬉しいな…。)
○○・和:…。
○○:…おい。
和:…。
○○:おいってば。聞こえてるだろ、無視か。
和:私の名前は“おい”じゃないです。
○○:(だる。)
○○:…井上。
和:…なんですか?
○○:…。
○○:(あー…どうしよ。声かけたものの何言えばいいか全くわからん。)
和:…。
和:(なんか戸惑ってる…?あ、きっと今から異動になったこと伝えられるんだろうな。あー無理耐えらんない。)
○○:(まぁいい、とりあえず◎◎さんの餞別の話だけでもしとくか。)
○○:お前知ってるかわかんないけど、10月の人事異動でさ…
和:!
和:(ほらきた!予想通り!もう…!)
和:…イヤ。
○○:はっ?
和:…聞きたくないです、そんな話。
○○:えぇ…なんで?
和:なんで…?わかんないんですか?
○○:ごめん、全くわからん。
和:…。
和:…ばか。
そう言い捨てるとどこかへ立ち去ってしまう和。
○:(マジでなんなんだあいつ…。)
――――――――――
その後、先輩女に相談。
先輩女:それは…なんだろうね。◎◎さんの異動が嫌なのかな?
○○:あいつ◎◎さんとそんな絡みありました…?
先輩女:いやー…話してるの見たことない。笑
○○:あ、今金欠だから餞別出したくないとか?
先輩女:それは違うと思う。笑
結局、考えてもどうにかなる問題でもないので…
先輩女:頑張れメンターくん!君がなんとかして和ちゃんの悩みを解決してあげるんだ!笑
○○の肩をバァンと叩く先輩女。
○○:なんとかしてって…使えねぇなこの先輩。
先輩:あーん?何か言ったぁー?
○○:…別に?空耳じゃないですか?笑
先輩女:…ちっ!
○○:…。
先輩女:ふふ、私もやりたかったんだー舌打ち♡○○くんと和ちゃんのマネだよ♪笑
○○:…💧
――――――――――
和:はぁ…。
○○:…。
午後からの仕事中、ため息連発でくよくよぐずぐず…
和:…。
和:…はぁ。
○○:…。
○○:(だめだ、イライラしてきた。)
○○:…おい。
和:…。
○○:おい!聞こえてるだろ無視すんな。
和:だから私の名前は“おい”じゃ…
○○:知ってるわそんなこと。その上でおいって言ってんだよ。それくらいわかれや、ばか。
和:…なんなんですか、急に怒りだして。
○○:…ちょっと来い。
和:え…?
○○:話がある。
和:…。
和:…私は話すことなんてないです。
○:いいから!
和:…。
――――――――――
人気のない所で、2人切り。
○○:なぁ、一体どうしたんだよ…お前、最近おかしいぞ。
和:別におかしくなんか…。
○○:いやおかしいだろ。ため息ばっかだし生気が感じられないというか…やる気ないんか?
和:…。
黙ったまま俯いてしまう和。
○○:…。
○○:ああ…いや、そうだよな。こんな言い方しちゃだめだよな…ごめん。
和:…。
ふっと息を吐く○○。
○○:…お前さ、この間言ってたじゃん。
和:え…?
○○:俺はお前のメンターだってこと、忘れんなって。
和:…はい。
○○:これだけは言っとくけど、1回も忘れたことないからな?
和:え…?
○○:なんなら、メンターになってから毎日最低1回はお前のこと考えてる。
和:…///
○○:それだけ…心配なんだよ、お前のことが。
和:…。
○○:何か…悩み事があるなら俺に聞かせてくれないか?そのためにメンターとしているんだから。
和:…。
和:(あー、どうしよ。めっちゃ嬉しい。)
しかし、黙ったままの和。
○○:…。
○○:それとも…俺には言えないようなことなのか…?
和:…。
○○:…。
和:…言えないですよ、○○さんにだけは。
○○:…そうか。
和:…。
和:○○さんの異動が…寂しくて辛いなんて。
○○:は………?
和:…。
○○:何だよ、俺の異動って。
和:………え?
○○:俺、異動なんかしないけど。
和:…えっ?えぇ!?人事部に行くんじゃないですか!?
驚いた様子を隠せない和。
○○:はぁ?俺が人事部?何言ってんだお前。笑
思わず笑ってしまう○○。
和:………。
驚きと安堵と…いろんな感情が混ざる和。
○○:今回うちの部署の異動は◎◎さんだけだ。
和:◎◎さん…!?
○○:ていうか、なんで人事部なんだよ。俺そんなキャラじゃないだろ。
和:え、だって…最近よく人事部の人と喋ってたから…。
○○:それは来月のお前らの研修で喋る内容を相談してただけだ。新人研修は人事部の管轄だからな。
和:う、嘘でしょ…!?
和:(やっばー!めちゃくちゃ勘違いじゃん!どうしよう恥ずかしい!恥ずかしすぎる!)
○○:お前さ、俺が異動だと思って不貞腐れてたんか?笑
和:ふ、不貞腐れてなんか…。
○○:いやいや、それは無理だろ。笑
和:うぅ…
○○:ったく…お前、そんなに俺と離れたくないのかよ。意外と可愛いとこあるな。笑
顔が赤くなる和を見てニヤニヤ笑う○○。
和:くぅ…
○○:…。笑
和:…ち、違いますよ!私は任期途中でメンターの仕事をほっぽらかして異動しちゃうような無責任な先輩に呆れてただけですから!!
○○:はいはい、そういうことにしといてやるよ。笑
和:むぅ〜…むかつく!💢
○:…あれ、泣いてる?笑
和:泣いてないですっ!!
そんな2人の会話を、盗み聞きする人影が1つ…
先輩女:(ったく…これで一件落着か。)
先輩女:(ほんまはよ付き合えやあいつら。笑)
――――――――――
終業後
和:何か甘い物が食べたい気分なんですけど。
○○:あー、いいな。行く?
和:行く!○○さんの奢り?
○:ったく…しょうがないな。いいよ、上半期頑張ったご褒美な。まだ2日あるけど。
和:ふふ、やった♪
――――――――――
ということで、スイーツのお店。
和:わ!すごい…!
○○:でっか…!
運ばれてきたパフェに驚く2人。
○○:お前こんなに食えんの?
和:私お腹ペコペコなんで楽勝です。
○○:昼飯食ってないん?
和:まぁ…はい。食欲なかったから…。
○○:ああ、俺の異動が寂しくて病んでたからか?笑
和:うるさいなぁ…!💢
○○:ははは。笑
ヘラヘラと笑う○○から、ぷいっと目線を背け
和:…寂しかったですよ。悪いですか?
○○:悪いなんて一言も言ってねぇじゃん。
和:…。
○○:むしろ…ちょっと嬉しいよ。笑
和:………ばか。
○○:ばかって言うな。
和:ふふ♡笑
そんなこんなで、パフェを一口。
和:んー♡美味しっ♡
○○:ああ…たしかに美味いな。
○○:(ちょっとだけ…甘すぎる気もするけど。)
和:…○○さん?
○○:ん?
和:これからも…よろしくお願いしますね♡
○○:…はいはい。笑