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困り眉の店員さん

大学を卒業し、新社会人となって仕事をし始めてから、約半年。

新入社員として先輩たちから可愛がられ、チヤホヤされていたビギナーズラックはとうの昔に終わり、今は職場の一員として多忙な日々を過ごしている。

○○:(はぁ、疲れたな…。)

最近は、1人で会社の取引先へ伺う機会が増えてきた○○。

頭に入れておかないといけないことが多すぎてこんがらがってしまうが、一件終わるとまた次の一件と、時間は待ってはくれない。

○○:(えっと、次は…。)

資料を見て、腕時計を見る。次の取引先への訪問の予定時間まで、まだ少し余裕があった。多忙な時間も、時には少し待ってくれるようだ。

○○:(…おっ、ちょうどいい所に。)

時間に余裕があるとはいえ遅れるのは怖いので、あらかじめ最寄り駅まで移動した後、ちょうど良さげなカフェがあったので中に入る。

店員:いらっしゃいませー。

中に入ると、どこか落ち着くような…いい感じの雰囲気のお店だった。

案内された席に着き、メニュー表を眺める。特に何の変哲もない…一般的なカフェ、といった感じのメニュー表だった。

店員:いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます。ご注文がお決まりになられましたら、またお声掛けくださいね♪


お冷を持ってきてくれた女性の店員…言葉の端々に、どこか関西弁の雰囲気が感じられた。

○○:あ、えっと…アイスコーヒー、Мサイズで。

少しの時間潰しでしかないので、適当にパパッと注文を伝えると

店員:アイスコーヒーですね。ガムシロップとミルクはご利用ですか?

○○:じゃあ…ガムシロップを1つ。

店員:かしこまりました。少々お待ちくださいませ♪

注文を取り、カウンターへと戻っていく店員。このお店と同じで、どこか落ち着く雰囲気が感じられる人だなぁ…なんて思いつつ、仕事の資料に目を通す。

○○:(あー、今日は何時に帰れるかな…。)

そんなことを考えていると、すぐにアイスコーヒーが運ばれてくる。

店員:お待たせいたしました。アイスコーヒー、XLサイズです♪

○○:え、XL!?

予想外のワードに、思わず声が出てしまう。

店員:あれ、違いましたっけ…?

○○:Mサイズを頼んだんですけど…。

店員:えっ!?


途端にあたふたし始める店員。特に眉毛が、すごく困っている。

店員:ごめんなさい…すぐにお取替えしますね💦

そう言って、また戻ろうとするので

○○:あ、いや…!大丈夫ですよ、それで。

店員:えっ…?

○○:せっかく持ってきてもらったし…中身一緒なら、それで大丈夫です。

店員:ほ、ほんとですか…?

すると

店員:でも…お腹ちゃぽちゃぽになっちゃいません?


○○:えっ?笑

まさかの心配に、思わず笑ってしまう。

○○:ちゃぽちゃぽになったら…お手洗いだけ貸してもらえますか?笑

店員:はい♪あちらにございますので、お好きなだけご利用ください♪

トイレを好きなだけ…というのは特に嬉しくはないが、そう言いながら笑う店員の顔が…とても可愛く感じられた。

店員:…あ、XLはMの倍あるので、ガムシロップ2つにしときますね♪

○○:あ、ありがとうございます…。笑

終始相手のペースに飲まれながらも

○○:…。


コーヒーを飲んでゆっくりしている間も、カウンターで仕事をする店員のことが、つい気になってしまう○○なのだった。

――――――――――

その後、待ち合わせ時間が近づいてきたのでお会計。

案の定ちゃぽちゃぽのお腹でレジへ向かうと、あの店員さんが来てくれて…どこか嬉しかった。

店員:お会計420円になります♪

420円…Mサイズの料金だったので

○○:あ、XLの料金払いますよ。

店員:いえ、私のミスなので…!

○○:いやいや、でも全部飲んだし…。

店員:いえ!420円で!

折れてくれそうにないので、仕方なくMサイズの料金を支払う。

でもやっぱりどこか罪悪感があるので…お釣りはレジ横に置いてあった募金箱へ入れた。

店員:ありがとうございましたー♪


店を出て、数歩歩いたところで、振り返る。

○○:…。

どことなく…また来たいなと感じる、○○なのだった。