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朝寝坊

始業時間

○○:…あれ。

和の姿が無いことに気づく○○。

○○:(先輩女)さん、井上見ました?

先輩女:えっ?見てないけど…いないの?

○○:はい。

先輩女:どこ行っちゃったんだろうね…?

○○:(トイレでも行ってんのか?)

そう思ってしばらく待ってみるも姿を現さないので、電話してみることに。

prrrrr...カチャ

○○:おお、お前今どこにいるんだよ。朝礼始まるぞ。

和:『…んぅ?』

○○:(うーわ今起きたやつかこれ。)

寝ぼけたような声で全てを察する○○。

○○:お前…今何時かわかってるか?

和:『へ…?』

○○:…。

和:『あーーー!!!』

○○:(うっっっるせぇ!)

電話口から聞こえる和の大声に顔をしかめる○○。

和:『ど、どうしよう寝坊しちゃいましたごめんなさいすぐ行きます!今すぐ行きます!💦』

○○:ばか、落ち着け!寝坊したものはもう仕方ないから落ち着いて来い、途中で事故ったりしたらそっちの方がマズいから。

和:『でも…』

○○:でもじゃない、とりあえず深呼吸しろ。……いいか?ちゃんと無事に来ればそれでいいから。じゃあまた後でな。

電話を切ると

先輩女:寝坊?笑

○○:はい…💧

――――――――――

結局1時間くらい遅れて出社。

和:申し訳ありませんでした…!💦

○○に連れられ、上司の元へ頭を下げに行く和。

部長:まぁまぁ、起こってしまったことは仕方ありません。明日から気をつけてもらえればそれで結構ですので。

違和感すら覚えそうなにこにこ笑顔+優しい口調でそう言う上司。

和:…はい。

○○:…。

○○:(すげー緩いな…まぁこれくらいで済むならいいか。)

部長:それでは、席に戻って本日の業務に取り掛かってください。○○は…少しいいか。

○○:えっ…僕ですか?

上司とともに、人気の無い場所へ…

部長:…一体どうなっているんだ。

○○:どうと言われましても…単に寝坊してしまったのだと思います。

部長:…キミは彼女のメンターだろう。キミの指導不足じゃないのか。

○○:えっ…

部長:こんなことが起こるようでは困る。キミから厳しく言っておくように。わかったな?

○○:…部長から言ってあげた方が効くと思いますが。

部長:なんだ、歯向かうつもりか。

○○:そういうわけではないですが…ただ、井上はここ最近業務も頑張ってますし、実際に成果も残しています。一度の遅刻でそこまで厳しく言わなくてもいいのでは…

部長:…わかってないな、キミは。

○○:…?

部長:社長の娘さんが遅刻した、これが他の部署にまで広まったらどうだ?社長の顔に泥を塗ることになるだろう。もしそれが社長の耳に入れば、私に対する社長の評価も下がりかねん。

○○:(うわぁ…よくそんなこと素直に言えるなこいつ。)

部長:とにかく、今回のことは厳しく言っておくように。次同じようなことがあればキミも連帯責任だからな。

○○:…。

部屋を出て行く上司の後ろ姿を見送る○○。

○○:…チッ

職場に戻ると


和:…。

落ち込んだような表情でPCに向かう和の姿が。

○○:井上。

和:…はい。

小さく手招きをして、和を連れ出す○○。

○○:…。

和:あの…

申し訳なさそうな顔で○○の後をついて行く和。

○○:ちょっと一服付き合え。

和:…はい。

自販機の前で

○○:なんか飲む?

和:あ、いえ…自分で買います!

○○:いいって。しょーもないとこで謙虚になるな。笑

和:じゃあ…○○さんと同じやつ。

○○:ほんとか?俺おしるこにしようと思ってたんだけど。

和:えっ…あ、いや…大丈夫です。

○○:大丈夫じゃねぇだろ、こんな真夏におしることか。コーヒーでいいか?

和:はい。

○○:…ん。

缶コーヒーを2本買い、1本和へ。そして、無人の喫煙所。

和:…。

タバコに火をつける○○。その隣で申し訳なさそうに俯く和。

○○:ったく…昨日ちょっと褒めたら今日寝坊とか…やってくれるなお前は。笑

ふぅっと煙を吐いて笑う○○。

和:すいません…

○○:どうした、夜更かしでもしてたんか?

和:夜更かしというか…なんか寝付けなくて…。

○○:へー。まぁ最近夜もすげー暑いしなぁ。

和:…。

コーヒーを一口飲み、缶を見つめる和。

その様子を見て

○○:それとも…なんか考え事でもしてたとか?

和:…。

和:昨日…○○さん言ってたじゃないですか。

○○:え?

和:いつか…私にとって○○さんが必要なくなる日がくるって。

○○:ああ…言ったな。

和:もしほんとにそうなって…○○さんメンターじゃなくなったら、今までみたいに一緒に喋ったりどこか行ったりする機会が無くなっちゃうのかなって考えると…なんか寂しくなっちゃって…

○○:えぇ…

思わず苦笑いの○○。

和:夜…ベッドでそういうの考えちゃうと寝ようとしてもなかなか寝られないじゃないですか。

○○:それはわからんこともないけど、お前ちょっとピュアすぎるな。あれをそこまで真に受けられても困る。笑

和:…。

○○:別にメンターじゃなくなっても普通に喋るだろうし、だいたいメンターって1年間だからまだ半年以上あるだろ。

和:そうですけど…

○○:…お前さ。

和:…?

○○:俺と喋れなくなったら…そんなに嫌なわけ?

和:え……

和:…嫌です。

○○:へぇ〜。笑

にやにやと笑う○○。


和:なんかむかつく…その顔。

○○:おいむかつくってなんだ、先輩だぞ。笑

和:…ふふ。


ようやく少し笑顔を見せる和。

○○:…。

それを見て、安堵した様子の○○。

○○:まぁ…メンターなんてただの肩書きだから。

和:え…?

○○:新人とかメンターとか、先輩とか後輩とか…そういうの関係なく俺はお前のこと支えていってやりたいなと思うよ。お前よく頑張ってるし。

和:○○さん…

○○:まぁ、どっちかが辞めたり異動になったりしない限りはな。笑

和:…そういうこと言わないでください。

唇を尖らせる和。

○○:…さてと、そろそろいいか。

時計を確認し、タバコの火を消し立ち上がる。

和:…?

○○:部長に言われたんだよ。お前のこと厳しく叱っとけって。

和:…。

○○:まぁ、俺はたかが遅刻1回でそこまで言う必要はないって思ってるから、こうやってお前を連れ出して説教してる風の演出をしただけだけどな。

和:○○さん…。

○○:部長も厳しく言った方がいいと思うんだったら自分で言えばいいのに、お前が社長の娘だから怖くて言えないんだろうな。まったく情けない上司だよ。

そう言って笑う○○。

○○:ああ、でも明日は遅刻するなよ?さすがに2日連続はまずいからな。

和:…。


一気に不安そうな表情になる和。

○○:不安か。笑

和:…はい。

○○:はは、わかるよ。俺も昔遅刻したことあるけど、その次が嫌なんだよなぁ…また寝坊したらどうしようとか考えちゃうと寝れなくなっちゃうしな。

和:うぅ…

○○:まぁ、がんばれ。笑

和の肩をポンと叩く○○。すると

和:○○さん…

○○:?

和:明日…モーニングコールしてください。

○:はぁ?

和:○○さんの話聞いてたら不安になってきました…だから起こしてください!

○○:やだよめんどくさい。

和:…。

○○をじーっと見つめる和。

○○:…いつも何時に起きてんの?

和:6時です。

○○:えっ、早すぎん?

和:6時に1回起きて、そこから二度寝して6時半に起きてます。

○○:二度寝すんな一発で起きろや。

和:無理ですぅ…。お願いします!

○○:もー…わかったよ6時に電話すりゃいいんだな?

和:あと一応6時半にも…

○○:チッ…面倒だな。

すると

和:…さっきは支えたいと思ってるって言ってくれたのに。

○○:あっ…。

和:…。

○○:…。

○○:そうだ、お前今晩ここ泊まれよ。そしたら遅刻しないだろ。笑

和:(あっ、話題逸らした。笑)


和:○○さんも一緒に泊まってくれるならそれでもいいです。

○○:…絶対嫌だわ。笑