始まったばかり
研修最終日は、すごくじれったい時間だった。
和:(なんで同じ建物に居るのに会えないんだろうなー…。)
和:(今何してるのかな。)
頭の中で考えるのは…○○のことばかり。
和:(会いたいなー…。)
どこかふわふわしたような気持ちのまま、研修は全日程が終了する。
あやめ:よかった、最後になぎちゃんが元気そうなとこ見れて。笑
和:心配かけてごめんね…?
あやめ:…何かいいことでもあったの?
和:えっ…なんで?
あやめ:すっごい顔に出てるから。笑
和:うそ…!
あやめ:ふふ、ほんと。
和:(まずい…気をつけなきゃ。)
自らの頬をぺちっと叩く和。
あやめ:そろそろ行かなきゃ…なぎちゃん、また会おうね?
和:うん!
―――――――――――
新入社員たちがそれぞれの帰路につく中、和はその足で直接いつもの職場へ向かった。
和:(…あれ?)
和:(なんで緊張してるんだろう…私。)
扉の前で少し躊躇いつつも、そっと中へ入る。
そこには…いつもの見慣れた景色。
すると
先輩女:あ、和ちゃん!
いち早く気づいた先輩女が、和の元に駆け寄る。
先輩女:おかえりぃ♡寂しかったよ〜!
和:えぇっ、そんなにですか?笑
先輩女:あったりまえでしょ?大事な書類を持って帰って放置しちゃう和ちゃんに会いたくて会いたくて仕方なかったんだから!
和:あぁ…その節はどうも…すいませんでした。
先輩女と話しながら、気づかれないように部屋の中を見渡すが
和:(…なんだ、○○さん居ないのか。)
少しがっかりしていると
○○:あれ、研修終わったん?
和:!
後から職場に戻ってきた○○。
和:…はい!
少しだけ、胸の鼓動が早くなる。
和:…///
“すっごい顔に出てるから。笑”
ふと、先程の同期の言葉が頭をよぎる。
和:(いけない…平常心、平常心。)
そう自分に言い聞かせていると
○○:ちょうどよかった。これ。
机の引き出しから書類を取り出し、和に渡す○○。
和:?
○○:研修のふりかえりシート、書いたら俺に出せ。なるべく早くな。
和:…。
和:(……あれ?)
○○:なんで黙ってんだよ。
和:(なんか…思ってたのと違う。)
和:(…いつも通りすぎる。)
○○:…おい!
書類を和に突きつける○○。
和:…。
和:…ばか。
○○:はぁ?
和:(えっ、もしかして昨日のは全部夢だった…?)
和:(いや、でも…)
“痛いなら夢じゃないんじゃない?笑”
和:………。
――――――――――
その後、残業の合間に1人喫煙所で一服する○○の元へ。
和:……ねぇ。
○○:ん…?あれ、まだ居たんか。
和:…。
むっとした表情の和を見て、思わず笑ってしまう○○。
和:…なんで笑ってるんですか?
そう言って、○○の隣に座る和。
和:…今日の○○さん、あまりにいつも通りすぎて昨日の全部夢かと思った。
○○:いや、それはさぁ……職場恋愛とか初めてだし、俺も探り探りだから。そこはわかってくれよ。
和:…。
○○:あと…夢じゃないから。そこは安心しろ。
和:…うん。
少しだけ身体をずらし、いつもより○○にくっついてみる。
和:…///
○○:…。
吸っていたたばこを、ぐりぐりと灰皿に押し付け火を消す。
○○:…今日さ。
和:?
○○:人事部の人にちょっと怒られた。笑
和:なんで…?
○○:昨日…俺のトークショーあったじゃん?
和:あれトークショーだったんだ。笑
○○:始める前に…お前の顔見たら、話す内容飛んじゃってな。笑
和:えっ?そうなの?
○○:予定よりだいぶ早く終わるし、なんか途中話しの流れ的におかしいとこあったみたいでな。自覚ないけど。
和:なんか…○○さんらしくない怒られ方。
○○:…だよな。
苦笑いの○○。
○○:なんか…お前の彼氏とメンター、両立する自信ねーわ。笑
珍しく弱音を吐く○○。
和:…。
和:大丈夫、両立とか考えず○○さんらしく居てくれるのが私は1番嬉しいですよ♡
○○:お前…
○○:…なんか生意気だな。笑
和:…っていうのは、メンターとしての顔で…
○○:?
和:彼氏としての顔は…?
○○:…。
○○:ありがとう……なぎ。
和:ふふ♡ほら、両立出来た。
○○:…。笑
楽しそうに笑う2人。
二人三脚で歩く道のりは、まだまだ始まったばかり―