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小説

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文章の練習のために小説を執筆しています。主に空想ですが、ところどころ実体験も混ざっています。
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#不倫

私はおじさまに飼われたい

柔らかく、どこか色気のある視線を私にむかって落としているおじさまを手に入れられないのなら、せめてあなたの飼い猫になりたい。 樹齢100年以上はある大きな枝垂れ桜の下で、座っているおじさまの横に甘えるように寝転びながら、そう思った。  日本の天然記念物に指定されたこの枝垂れ桜は、普段、人が近寄れないように厳重に管理されている。木のまわりには囲いがあり、人と一定距離が保たれている。枝垂れ桜の枝の部分を何本もの太い杭(くい)が支えている。見頃の時期になると観光客は観桜料(かんお

幼馴染の結婚と、飲み干せないワインと、名前も知らない男

 自宅の郵便受けをあけると、幼馴染の由依が結婚した知らせを記したピンク色の封筒が数枚のチラシと一緒に紛れこんでいた。 メールやLINEで知らせてくればいいのに。わざわざ招待状を送ってくるなんて。 <二次会パーティーのお知らせ> 謹啓 〇〇の候(時候の挨拶)皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 このたび、私たちは二次会パーティを開催いたします。つきましては日ごろお世話になっている皆様にお集まりいただき、ささやかな披露宴を催したいと存じます。ご多用中 誠に恐縮