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小説

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文章の練習のために小説を執筆しています。主に空想ですが、ところどころ実体験も混ざっています。
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#男女

幼馴染の結婚と、飲み干せないワインと、名前も知らない男

 自宅の郵便受けをあけると、幼馴染の由依が結婚した知らせを記したピンク色の封筒が数枚のチラシと一緒に紛れこんでいた。 メールやLINEで知らせてくればいいのに。わざわざ招待状を送ってくるなんて。 <二次会パーティーのお知らせ> 謹啓 〇〇の候(時候の挨拶)皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 このたび、私たちは二次会パーティを開催いたします。つきましては日ごろお世話になっている皆様にお集まりいただき、ささやかな披露宴を催したいと存じます。ご多用中 誠に恐縮

私が好きになった人は大学の教師で、仔猫に無条件の愛を与えていた

「銀座」と聞くと背筋が伸びる。 高級ブランドショップ。洗練された街並み。行き交う人々も、街並みに合わせるように整った服装をしている。ジャージ姿にスニーカーの人なんてどこにもいない。銀座だから、そういう人しか集まらないのかもしれない。銀座というひとつの街からはみ出さないように、馴染んでみせたい。 私は、自宅のドレッサーの前でいつもより丁寧に身支度をした。髪にスプレーをして湿らせ、丁寧に乾かしてブローをする。38mmのコテでしっとりと丸みをつける。艶が出る、よい香のついたヘア

夜の世界に戻った私は、記憶に爪痕をのこす男性達と出会う

大学時代の女友達との飲み会をぬけ、クラブの体験入店へ向かった。 店を出ると、肌を指すような師走の空気が頬をなでた。黒い空にはにごりがなく、肺まで清潔にしそうなほど湿気のない空気だった。 金銭的な余裕がほしい。毎日同じことのくり返しで、あり余ったエネルギーを発散したい。刺激がほしい。これが体験入店の目的だった。女友達とは、本音をぶつけ合える関係ではない。飲み会が盛りあがってきた真っ最中に「大切な予定が入った」と告げ、急用をよそおって抜け出してきた。 初めての夜の世界……と