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小説

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文章の練習のために小説を執筆しています。主に空想ですが、ところどころ実体験も混ざっています。
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#夜

夜の世界に戻った私は、記憶に爪痕をのこす男性達と出会う

大学時代の女友達との飲み会をぬけ、クラブの体験入店へ向かった。 店を出ると、肌を指すような師走の空気が頬をなでた。黒い空にはにごりがなく、肺まで清潔にしそうなほど湿気のない空気だった。 金銭的な余裕がほしい。毎日同じことのくり返しで、あり余ったエネルギーを発散したい。刺激がほしい。これが体験入店の目的だった。女友達とは、本音をぶつけ合える関係ではない。飲み会が盛りあがってきた真っ最中に「大切な予定が入った」と告げ、急用をよそおって抜け出してきた。 初めての夜の世界……と

危険な背中

女はBARの中央にある木製のテーブルの前にひとりで座り、こちらに背を向けていた。 周囲には客はおらず、女だけがポツンと太平洋にうかぶ小島のように、いた。その様子を店の1番奥の席から眺めていた。 肩まである黒い艶のある髪。細身の身体に、分厚く品質のよい生地で作られた黒いワンピース。黒いパンティストッキングから肌が透けている。女が座るには苦労しそうな、背の高いイスに腰掛け、組んでいる足先が浮いている。足首の細さを際立てる、ハイヒールの赤い裏地がみえた。 女はテーブルに広げて