彼女が教えてくれた、おいしいコーヒーの淹れ方。
最近、彼女はコーヒーにハマっている。
それまではどちらかと言えば紅茶派だった彼女の目を開かせたのは、猿田彦珈琲のカフェラテ。浅煎りのコーヒーとふんわりミルクが絶妙にマッチして、香り高く飲みやすい。苦くて胃が持たれるだけだったコーヒーへの認識がぐらぐらと変わる。
以来、彼女は貪欲になった。
浅煎りコーヒーをブラックでじっくりたしなむ。猿田彦だけでなく、森彦や宮田屋のしっかりブレンドに歓声を上げる。いまだに砂糖を入れてしまう僕なんかより、よっぽど通っぽい。
このあいだはタリーズがやっているコーヒー講座を受けてきた。カフェの一角で実際にレギュラーコーヒーの淹れ方を学ぶのだ。
どうやらポイントは、いかにしてコーヒーの雑味を取り除くか、ということらしい。
お湯の温度は90度が適温。最初は数滴たらしてじんわり蒸らし、次に円を書くように細く回しながら粉をまんべんなく撹拌(かくはん)させる。そしてフィルターの中のコーヒーが最後まで落ち切る一歩手前で終わらせる。最後まで落としてしまうと、コーヒーの雑味まで拾ってしまうからだ。
う~ん、それは知らなかった。豆を挽いてもあとはコーヒーメーカー任せだった僕には新鮮な驚きだった。
そしてふと思った。これって人付き合いにも通じることなんじゃないかと。
火の玉のように熱く燃え上がるより、少し冷めてたほうがちょうどいい。最初は様子を見ながら、手の内がわかってくるとお互いのすべてをさらけ出す。でも親しき仲にも礼儀あり。そのほうがえぐみや雑味を回避できる。
男と女にも当てはまる? いや、それは少し考え過ぎか。
彼女は今、おいしいアイスコーヒーの淹れ方を学んでいるところ。
夏に向けて、きっととてもまろやかに僕の気持ちをリラックスさせてくれることだろう。
引っ越しの荷造りをしながら、そんなことを考えた休日の午後。
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