読書感想



読書週間ということでnoteのイベントがあったので最近読んだ本について紹介したいと思います。
 いま、小説を書くにあたって読書をすることが多くなりました。古典や文学作品などを読むことが多いのですが、今回紹介するのは、「九度目の十八歳を迎えた君」という小説です。
 浅倉秋成さんは、いま「六人の嘘つきな大学生」で話題の作家さんです。こちらの方ではなくて、今回は「九度目の十八歳を迎えた君」を紹介します。

 今回、僕が選んだ理由としては、古典や文学作品より、読みやすくわかりやすい小説だったからです。ときどき、僕は本屋さんに行くのが趣味で立ち読みをすることがあります。立ち読みをしてもすぐには本を買いません。二回、三回行って同じ本を手に取ったら気になるのだろうと思って購入することが多いです。この本もそうやって手にれました。この文庫を始めて目にしたのは、「六人の嘘つきな大学生」は、そんなに話題になっていなくて、浅倉さんの存在も知りませんでした。なんとなくタイトルと装幀が気になるなと思っていました。二回目手に取って立ち読みをしてみると、最初の書き出しで引き込まれました。3.4ページ読んだあと購入しようと決めて手に取りました。  

 物語の概要を説明すると、主人公の僕は二十九歳の印刷会社に勤めるサラリーマン。ある日、電車の向こう側のホームに高校の同級生の女友達である二和美咲が当時の姿のままでいるのに気づきます。彼女は、十八歳のままの姿でいました。僕は、当時の記憶をたどって同級生に二和のことについて聞くが、誰も彼女が十八歳でいることについて違和感を感じていない。高校生のとき二和に恋をしてた僕が、なぜ彼女が十八歳のままの姿であるのか、その謎を追っていくミステリー小説です。

 同級生が高校生の姿のままになっているという特殊設定ミステリーと言ったら良いでしょう。現実にありえないことが書かれています。この本を読み終えたとき、書き方が上手いなと思いました。
 純文学の作品のように重厚感があって、深みがあるといったものではないのですが、ミステリーの書き手として、とても参考になりました。この本を読んで、そうかこうやって特殊設定のミステリーを書くのかとわかりました。
 最近、浅倉さんがエッセイのセオリーをyoutubeで配信されていました。動画を見たのですが、そこで小説の書き方にも言及しており、プロットを念入りに考えて書くと言っていました。その言葉通り、物語の運び方がきっちりしているなという印象を受けました。
 すこし、ネタバレになるのですが、物語の設定である同級生が十八歳のいうのは、一つの比喩的な表現であったようです。そこにはいろいろな意味があったと解釈しました。大人になりきれない大人や、現実を受け入れられない大人がいたり、夢を追い続けたい子供、大人になりたくない子供、そういったいろいろな人がいる。それが「年齢」というキーワードからこの作品は読み解くことができます。
 大人になっても子供のころの記憶(この場合は十八歳のときの記憶)に知らないうちに囚われて生きている人がいると思います。そういったことを表現しているのだなと思いました。
 この感覚が、僕はすごくわかりました。僕は、まだ大人になりきれていない部分があります。年齢を重ねたとしても本当に「大人」になっているかどうか疑問に感じるときがあります。そういった自分の境遇に重ね合わせて小説を読むことができました。それが良かったです。
 それに、自分の境遇と合うような作品を読めるようになることが小説の醍醐味であるのなら、そういったことを意識して書けるようになりたいなとも思いました。

 というわけで、「九度目の十八歳を迎えた君と」を紹介しました。
 よかったら読んでみてください。

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