夫婦財産契約(婚前契約)ベーター版(ベンチャー創業者用)
以下の質問事項にお答えしていただきありがとうございます。同意をしていただいた通り、当方は一切の責任を負うものではありません。その上で、以下の取り扱い説明書をご覧ください。
申し込みが多数来ましたので、終了しました。詳細はこちらにご連絡ください。
対象者は、
①起業を予定する婚前前の女性・男性、②もめそうなベンチャー起業した女性・男性です。②については、話し合いにより協議離婚しつつ、形骸化していない限り再度結婚をすることでこの要件を満たす場合もあります。佳境になってから内部争いになった場合、悲劇が待っていますので、備えが必要です。
0.ベンチャー企業創業者が契約書を締結する合理性
ベンチャー企業にとって一番のリスクは内部争いです。そこで通常創業者間契約を締結します。
しかし、創業者間契約や株主間契約をしても、創業者自身の株式が分かれてしまえば、組織が崩壊する可能性があります。キャッシュフローについても大変なことになります。
Amazonの離婚劇は、一つのリスクであり、かつ、成功例でもあるかもしれません。
会社が上場した場合、創業者としては分割するものがあるので、何とか対応はできるはずです。しかし、上場前の場合、特に会社が厳しい場合はなかなか大変です。特に子供がいる場合、泥沼といっても良いです。
その厳しい時期を乗り越える道として、内部的な創業者間契約として婚前契約をすることは、創業者が結婚をする際に力になる可能性があります。
集中して事業に集中できる可能性があります。結婚を控えて事実婚する例もあるかもしれませんが、心を整理して、結婚に至ることもあります。または、事実婚でも、ルールを策定する必要はありますので、この契約を使うことも考えられます。
VCは、株主間契約など会社内部に関しては関心があるでしょうが、実は他にもリスクは内在していると考えてよいと思っております。
なお、今回はベーター版であり、念のため専門家の相談をしていただければ幸いです。
1.本契約書の目的
この契約書の目的は、
①予見可能性を持たせることでできるだけ紛争を防ぎ、両者にとって負担が減るスムーズな離婚をする(お互いが我慢して憎悪になる前に分かれる仕組みづくり)
②相手方に不公平感を持たせない
③子供の面会交流の機会を持たせる(①②と関連)
④透明化を図る
但し、長年の婚姻関係の維持は、予見可能性を失わせるものですので、その点はご留意ください。
2.本契約を締結する場合の留意点
この契約は婚姻前に締結する必要があります。
もし、公証役場で対応してくれる場合、公証役場で相手方の意思を確認しつつ、対応してもらいましょう。意思確認のためです。
分からないことがあったら、弁護士などの専門家に相談してください。
3.婚姻生活が破綻する場合
この契約について争われる可能性は十分あります。公序良俗違反など様々な形で無効になった例はあります。スムーズな離婚を考える場合、相手方に寄り添いつつ、早い段階で財産分与、離婚などをすることで、相手の不安と不満を和らげることが出来ます。不満は、不透明性と不公平性からくるものです。相手方の期待を法の認める以上に高めることも、こちら側が相手の待遇を不当に下げることも紛争になります。できるだけ迅速に、落としどころを見つけて、良好な関係を築きつつ、関係を解消し、共同親権に近似する形で対応することが必要です。
親同士の争いは子供の関係にも影響しますので、留意が必要な事項です。
①別居時テンプレ
スムーズに別居離婚する場合は、以下のテンプレを使うことで、夫婦財産契約の遵守を再度遵守していることを確認しつつ、別居をすることになります。婚姻費用は間違いなく発生しますので、その点もご留意ください。できるだけ自立できるようにサポートすることが大事です。
別居時テンプレ
20 年 月 日
以上の条項を遵守するとともに、以下の事項を遵守します
監護権者は、相手方に対して、○○と面接交渉をすることを認め、その時間及び回数は下記の通り定める。
毎月第1週目の土曜日 午後○時から○時まで
場所:
万が一、○○の調子が悪いなどの事情がある場合、翌週の土曜日に日程調整をする。
甲
乙
②離婚時テンプレ
離婚時においては、以下のテンプレを使うことになる可能性があります。
できるだけ、財産契約を遵守する形で、財産分与額を反映させてあげてください。
離婚時テンプレ
20 年 月 日
1○○と○○は、同日長男〇〇の親権者を〇〇と定めて協議離婚することに合意し、協議離婚届に署名捺印したことを確認する。
2○○は、前項の協議離婚届を○○に託し、〇〇は、本日より1週間内に、協議離婚の届けをする。
3〇〇は、〇〇に対し、上記長男の養育費の分担として、○年○月○日から長男が成人に達する月まで月額○万円を、毎月末日限り支払う。
4○○は、〇〇に対し、離婚に伴う財産分与として、○○万円の支払い義務があることを認め、これを○○年○月○日限り、指定口座に振り込んで支払う。振込手数料は○○の負担とする。
5○○が上記の支払いを遅滞させたときは、期限を経過した日から支
払い済みまで、第1項の金額に対する年5分の割合による金員を付して支払う。
6○○は、相手方に対して、○○と面接交渉をすることを認め、その時間及び回数は下記の通り定める。
毎月第1週目の土曜日 午後○時から○時まで
場所:
万が一、○○の調子が悪いなどの事情がある場合、翌週の土曜日に日程調整をする。
7当事者双方は、本件に関し、本条項に定める他、何らの債権債務のないことを相互に確認する。
甲
乙
4.婚姻時の留意点
以上の手続きをするとしても、婚姻時に不当な扱いを相手方にしていたら、争いは激化します。
①2分の1ルールの理解と自社の保護
様々な要素がありますが、婚姻するだけで、2分の1ルール(夫婦の寄与の割合を原則2分の1とする)として、婚姻中に取得した財産が共有財産として分割の対象になるのは合理的な理由があります。実際に貢献したか否かなど、考慮されない場合もあります。こうあるべきだという理想は捨てて、現実に直視し、2分の1ルールがあったとしても、婚姻による潜在的な持ち分権のように自分の会社の支配権が半減しないように留意しておく必要があります。自分の会社があれば、他の物を失っても、やり直せる場合もあります。
②人と取引先を奪われる可能性に注意せよ
創業者と相手方が同業者の場合、会社は乗っ取られることはなかったが顧客と従業員が持っていかれるという可能性もありますので、十分注意する必要があります。その意味で、余程の合理的な理由がない限り、夫婦一緒で仕事をすることは好ましいとは言えないかもしれません。
③企業の経営等にはタッチさせない、財産を混ぜない、合理的な報酬を会社から貰う
たとえ、自分が起業・会社を設立しその後結婚した場合でも、夫婦で財産及び労働を一緒に混ぜて経営していたら、その会社の財産も考慮されて、分割請求されます。それは創業者としては、一気に内部分裂をする形になるので避けるべきです。
財産も混ぜず、適正な報酬を会社から貰うことで、会社の報酬部分を夫婦の共有財産として取り扱われるように分別することが大事です。自らの株式は特有財産として評価されるように尽力するべきです。
④特有財産、分与財産との分別を細かくせよ
特有財産であれば、財産分与の対象になりません。主に、婚姻前の財産と婚姻中の相続財産などが特有財産とされます。
本夫婦財産契約においては、裁判例(東京家裁平 6・5・31審判(平 4(家) 8127号,財産分与申立事件)家月 47巻 5号 52頁)を参照して、固有特有財産と独自特有財産とに分けております。これは、固有は本来の意味での特有財産であり、独自特有財産は夫婦別産制を考慮し、夫婦財産契約が公序良俗に反しないレベルで裁判所に認められるであろう議論として用意しました。実際に裁判になった際、共有財産になる可能性もあり、絶対的なものではないことはご留意ください。
本契約書は、固有特有財産、独自特有財産、共有財産とを分けて、ルールによって規律し、フェアな状況、納得しやすい状況にもっていくことが協議や裁判所においても大事と認識しております。裁判所においても一定の尊重できるように、裁判所のルールをできるだけ遵守することが望ましいと思われます。決して創業者だけの利益を守る契約にしてはなりません。
各財産を分別し、トラックレコードをつけておいてください。混ぜないようにすることが分割を速やかにするために必要であり、かつ、資金繰り等もしやすい環境になります。
⑤「共有財産」の合理性を確保せよ
ここでの「共有財産」は婚姻費用に近い意味です。婚姻費用は、標準的算定方式に近い形で、合理性を疑われないレベルで出す必要があります。別居時においてもその必要が出せるように準備をする必要があります。
⑥相手方の自立を促す
相手方が、いつまでも扶養が必要な状況は、不安がある限り、取れるだけ取ろうという認識になります。自分が生活できる自信があれば、早く別れたいという事由があれば、必要な部分をとれば別居、離婚まで円満にいく可能性があります。自分に自信がない場合、争いやすい環境になります。相手方が社会的に生活ができるレベルまで常にサポートをする必要があり、自信をつけさせることが大事です。自分だけ良しという態度は、相手方に不満を呼び起こし、しっぺ返しされるだけですので、相手を尊重し、尊敬する態度は必要です。その意味での一定の贈与は必要と認識しております。なお、その贈与は財産分与では考慮されない可能性はありますが、少なくても相手方との関係では大事だと思います。
⑦別居や離婚後においても一定の扶養は考慮する
万が一、自立などしていない場合は、やはり自立の補助は必要になります。それをしないで無責任に別居離婚するのは、相手方からすると虫のいい話です。よって、予め考慮すべきです。例えば別居から一年間について離婚後においても補助するなど取り決めることも考えられます。
⑧子供の養育費は大事
子供は、相手方にとっても分身のように大事です。子供の養育費が子供にわたるように配慮することだけでも、相手方との関係維持は可能です。配慮が望ましい事項です。
⑨不倫DVその他の有責行為は慎む
有責配偶者になると、より不透明な事態になりますので、望ましくありません。そんな状況になるくらいなら、良好な関係維持するために早々に離婚した方が良い場合もあります。
⑩相手を選ぶ必要はある
理解ある配偶者でなければ、予測可能性は持てません。理解ある配偶者を選ぶことが、紛争を防止することに繋がります。契約を破るのは人格次第という場合もあります。
⑪自分が節度ある態度を
とはいえ、相手に求めるよりも、自分自身が節度ある態度でなければ、相手方の怒りはエスカレートします。そうした節度が可能かどうかを図るために、まず自分自身が守ることができることを認識し、本契約を自らが完成させて下さい。
相手に対する期待値と相手の自分への期待値を理解し、お互いに開示しあい、すべてを予め覚悟しながら、お互い婚姻生活を楽しめる環境づくりをすることが大事と認識しております。
5.本契約書案はベーター版であり、あなたがアップデートをするものです。幣事務所は責任を負うものではありません。
本契約書を活かすか否かは、ご自身の誠実さと思いやりです。結婚においては、如何に期待値を高めすぎないか、相手に感謝するか、誠実に相手の幸せを祈るかなど、様々な部分があります。専門家が作成したからこれで大丈夫だろうというのは甘えに過ぎません。裁判所は、そうした甘えにすぐに気づき、あなたの期待を裏切るでしょう。人生は容易にコントロールできるほど甘いものではありません。この点を踏まえたうえで、幸せな家庭を築いてください。最後まで読んでくださり有難うございます。
以上
赤坂国際法律会計事務所
弁護士 角田 進二
付記:
使う局面は、勿論結婚する前になるのですが、夫婦関係に違和感を感じた際、ルール作りに一役を得るでしょう。勿論効果はない部分はあるでしょうが、内部的な気持ちの変化はあります。どうしても効果を出したい場合、離婚して結婚するということも考えられますが、この点に関してはノーコメントとさせていただきます。