メルペイ還元キャンペーンは、景品表示法に違反するか。 戦略法務?
これを見て、気になったことは、『スマホ決済分野に詳しい池田・染谷法律事務所(東京・千代田)の染谷隆明弁護士は「景表法の定める正常な商慣習の範囲内と言えそうだ」と話す。キャンペーンがほぼGW限定で、還元ポイントの上限が期間中の合計で2500円相当なためだ』の記載と、『メルペイの広報は具体的な仕組みについての言及は控えたが、今回のポイントは「自他共通割引券」に該当し、規制の適用外』にロジックの食い違いがあるのか否かだ。
サービス内容は以下のURL記載事項を抜粋の上、加筆(①②などのナンバリングを付す)
要件
①お支払い用銀行口座の登録または「アプリでかんたん本人確認」による「本人確認」を完了のうえ、
②キャンペーン期間中に「メルペイ」を使ってお店※で決済(メルペイ電子マネー(iD)またはコード払い)をすると、
効果
③支払いの翌日に支払額の50%相当(セブン-イレブン店頭での支払いの場合は70%相当)がポイント還元されるキャンペーンです。
効果の制限
④ポイント還元の上限は、適用されるポイント還元率(50%または70%)にかかわらず、キャンペーン期間を通じて合計P2,500
とのこと。
メルペイが使える店すなわち加盟店は、結構幅広いようだ。
今回、懸賞によるわけではないので、総付景品(そうづけけいひん)という分類になるだろう。
ちなみに、景品表示法上の「景品類」とは、以下の通り。
(1)顧客を誘引するための手段として、
(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
(3)物品、金銭その他の経済上の利益
先ほどの①②③がある以上、以上の要件が該当することは争いがないであろう。
但し、「正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益は、含まない。」ところは検討する必要がありそうだ。
「値引と認められる経済上の利益」に当たるか否かについては、当該取引の内容、その経済上の利益の内容及び提供の方法等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断する。」
例は以下の通り。自社に関する減額であり、自他共通割引券は単なる減額とは異なるとみて良いだろう。その理由は、他の部分の割引があるからだ。
ア 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)(例 「×個以上買う方には、○○円引き」、「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」、「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」、「×回御利用していただいたら、次回○○円割引」)。
イ 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払った代金について割戻しをすること(複数回の取引を条件として割り戻す場合を含む。)(例「レシート合計金額の○%割戻し」、「商品シール○枚ためて送付すれば○○円キャッシュバック」)。
ウ 取引通念上妥当と認められる基準に従い、ある商品又は役務の購入者に対し、同じ対価で、それと同一の商品又は役務を付加して提供すること(実質的に同一の商品又は役務を付加して提供する場合及び複数回の取引を条件として付加して提供する場合を含む(例 「CD三枚買ったらもう一枚進呈」、「背広一着買ったらスペアズボン無料」、「コーヒー五回飲んだらコーヒー一杯無料券をサービス」、「クリーニングスタンプ○○個でワイシャツ一枚分をサービス」、「当社便○○マイル搭乗の方に××行航空券進呈」)。)。ただし、「コーヒー○回飲んだらジュース一杯無料券をサービス」、「ハンバーガーを買ったらフライドポテト無料」等の場合は実質的な同一商品又は役務の付加には当たらない。
自他共通割引券に対応するのが、景品に該当するが適用除外に該当する場合と考えるべきであろう。
三 自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
同額の割引とは、明示した額と捉えると、ポイント制で明示された部分の割引を約する証票で足りるのだろう。そして、金額と同等のポイントにより多種多様なものが購入できる金額証でもあるだろう。おそらく、(2)に該当しそうだ。
問題は、「割引の程度又は方法、関連業種における割引の実態等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断」すると、「正常な商慣習に照らして適当と認められる」か。
③支払いの翌日に支払額の50%相当(セブン-イレブン店頭での支払いの場合は70%相当)がポイント還元されるキャンペーンとのことだが、気になるのはセブンイレブンと他の会社が異なる割合であることだ。セブンイレブンは、20%部分について負担を確約したのであろうか。また、メルペイは、50%のうち、どの程度の負担をしているのだろうか。
「メルペイの広報は具体的な仕組みについての言及は控えた」のはまさにこのからくりの説明を避けたのだろう。キャンペーンを前例とするべきではないという考え方が後ろにあるかもしれない。
「効果の制限④ポイント還元の上限は、適用されるポイント還元率(50%または70%)にかかわらず、キャンペーン期間を通じて合計P2,500」とすることで、4月26日から5月6日23時59分までで約5000円以上の買い物を予測している。加盟店を考慮すると、13000円程度の買い物の見込んでいたのではないか(約20%)。かかるデータを裏付けとして持っていた可能性もある。
20%の意味は、太字部分の事である。
以下は、過去の事例である。ほとんどの事例は20%である。
売り上げが上がりやすい時期を選び、付与上限を2500円とすること、データで証拠を管理しやすいことから、かかる手法を選んだのではないか。
5000円を一々計算する人も少ないであろう。13000円程度の買い物になってしまう可能性も非常に高い。
物議を醸してしまう点はあるが、ある意味戦略的な部分もありそうだ。
結論からすると、染谷隆明弁護士は「景表法の定める正常な商慣習の範囲内と言えそうだ」と話す。キャンペーンがほぼGW限定で、還元ポイントの上限が期間中の合計で2500円相当なためだ』の記載は、メルカリの広報担当と矛盾しないことになるだろう。
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