日本ではなぜ給与が上がらないか。 DXその42 日本株式会社と上場企業の隠された秘密

1.世界における国家の仕組み

日本株式会社とは、国家の事であり、単なる比喩である。しかし、東証など日本取引所グループに上場した会社の総体、その監視団体、日本政府などのステークを指す。

それらのステークの総体と世界とも勿論繋がっている。NY証券取引所その他のアメリカ株式会社、上海など中国株式会社などがある。

各国は、商圏争いをしており、通常の株式会社と異なるのは、武力その他政治など思惑でも争う必要がある点だ。

今回は、コロナワクチンによって、アメリカは覇権を再度取り戻すことができそうだ。経済はうなぎのぼりになり、それに伴い、アメリカ株式市場はより賑わいを取り戻すことが予想される。

富は、多くなるほど、血流が人体を回るが如く、あらゆるところが活性化される。今回は、なぜ日本株式会社の国民たちの給与は上がらず、アメリカなどの国の給与は上がりやすくなるかの一面を記載したい。世の中は複雑なのでこれがすべてだとは理解しない方が良いが、直視すべき事実でもある。

アメリカは、製造業である日本に一旦押し返されそうになったのは1980年代であろう。これがなぜ、日本を追い込み、日本の給与をあがらなくしたシステムにしてしまったかを考えたい。

アトキンソン氏はケチだから上がらないという説を述べている。詳しくは、「日本で賃金が上がらないのは、労働分配率の低下と企業投資の減少に最大の原因があります」としている。

これは短く興味深い話だが、なぜ企業投資が減少したかについての考察が抜けているように思える。企業投資で成果が上がれば、労働分配率についても人に投資しやすくなるので上がりやすい傾向があると筆者は考える。そしてその逆(労働分配率上がる→企業投資成果が上がる)はない。

とすれば、企業投資をバブル期になぜ間違ったかの検証をするのが良い。その理由は、バブル期のツケは重く、二度と繰り返すことが無いようにすることが、悪化のスパイラルを防止できるからだ。

バブル期は、とにかく土地に向かった。土地神話という考えなしの投資により、IT投資への変革が遅れたと認識している。ITによる人材のスリム化、人材の流動性をはかるということを避けて、IT設備投資を避け、かつ、アメリカでの勝ち馬に乗ることとした。

投資をする際に、①No1に投資をする、②No2に投資するのでは全く異なる。No2は如何にNo1勝つかということで必死であり、投資は比較的容易である。これに対してNo1に投資する際は、最初の芽が出たときに速やかに投資しない限り、テスラにもはや日本の車産業が投資できないようになったように投資が難しい。希薄な投資をするしかなく、寧ろ敵に塩を送るが如くの投資になってしまう。

日本の企業は、芽の出る投資を諦め、勝ち馬に対して希薄な投資をするしかなかった。ITについてシリコンバレーで投資をするとしても、全くシナジーを経験することはなく、富はアメリカに集中させるものへ変わってしまった。

バブル後の投資は常に批判にさらされ、ベンチャー投資を虚業という目で摘んできた。上場企業が、投資を許されたのは大きな虚ろな事業会社でリスクを算定できないものが大きい。

ノウハウなどであれば人を雇用すれば足りる。すなわち、企業体としては、人材、技術、販売チャンネル、資産、ITなどに分けて考え、どのような戦略を描くべきなのかを考えておくと良い。

大型M&Aが失敗に終わるのは、トップによる号令でしっかりとした統制もなく(投資の決断⇔実行⇔撤退、3権の分立)、無批判に飛び込む、特攻部隊に近い状況と認識している。

ベンチャー投資においてはその3権の分立は可能なのに、それを失わせるのが、トップの花道の準備の魔力だ。

起死回生のホームランなどない。トップはヒットを何度も打つことでしか、ホームランは打てないことを自覚しなければならない。

アメリカは、ITという群雄割拠した状況をまとめ上げて、日本の製造企業のステークをうまく外して、富を集中させていった。VC、投資銀行、証券取引所、投資家グループが、一大コミュニティとして、日本の製造業オンリーというコミュニティとは差別化して、投資を行っていった。

前述の①No1に投資する、②No2に投資するの話だが、日本は①についてはエッジを利かせることができず、②においては判断ができない状況にあった。分かりやすいスケールを重視して、コンパクトに勝ち抜くスタイルを忘れてしまっている。①は初期レベル以外、奏功しない。なぜなら、アメリカでステークを確立するので、後になればなるほど入るのは難しいからだ。投資グループから排除され、伸びしろのあるエリアから離れると、より情報が入ってこなくなる。そうすると、負け物件を掴まれやすくなるので、より投資が難しくなる。そのスパイラルに悩まされているのが、現状の日本企業である。

日本株式会社は、そうした状況に対して何らの対応をしないというわけでもないが、芯を食った対策は打てていない。以下の様に不安をあおったところで、投資グループに入れるはずもない。

「帝国データバンクが毎年実施している「全国社長年齢分析」(2020年)によると、社長の平均年齢は前年比で0.2歳上がって59.9歳となり、過去最高を更新した。年代構成比は60代が28.1%で最も多く、50代26.4%、70代19.7%が続いた。上場企業の社長に限ると、前年より0.2歳若返って58.7歳だった」とのことだが、DXにおいては上場企業58.7歳でうち手を見出すのは相当至難の業である。

上場企業企業は、大衆からお金を預かり、自らの事業に投資価値がないと判断する場合、見切りをつけて新たな分野を見出していく必要がある。小さな損失に目に行って、大型の投資について光明を見出し突き進んでしまう状況は、伸びしろある会社に投資できないが故の行き止まりになる隘路にぶつかっているからである。

孫氏が成功しているのは、大型投資に成功しているからではなく、大型投資をする前に情報収集と投資家グループにちゃんと参加しているからである。ジフデービスにより、Yahooを見出し、投資をするなど、先に情報取得手段を確保しているからである。

リクルートが、indeedを見出したのは常に自分の企業を破壊するサービスについて見出し、自社の能力の限界に気づいていたからである。

纏めよう。日本企業は、一部の企業を除き、①No1投資についてはエッジを利かせることができず、②においては判断ができない状況にあった。分かりやすいスケールを重視して、コンパクトに勝ち抜くスタイルを忘れてしまっている。技術の目利きも、市場の目利きもできず、投資家グループから外されているため、投資効果がない。その結果、投資益が僅少なため、労働分配率があげられない。その結果、ITに対する目利きもより低下し、かつ、ITに対して技術者も育たない。投資が上手くいかない場合、ITの技術者も自ら投資して起業することはない。

その結果、日本株式会社が国をあげてベンチャー投資を活性化しようとしても、奏功しにくい。以上は給与が上がらない理由と認識している。

2.SPACと確度の高い関連会社・親子会社上場

アメリカにおいては、SPACはかなり盛り上がっている。これに対して、日本ではSPACがないと残念がる声も聞こえる。確かに、ブランクチェック会社を購入して、上場をすることは甘美の匂いがする。

しかし、日本企業は、日本においては上場しやすいことを忘れている。SPACなどしなくても、上場によって大衆のお金を預かることは他の国よりも容易である。

親子上場は、利益相反が多くあり忌避される存在ともいえるが、制限等もあるものの、立ち上げ当初親会社の販売チャンネルの共有、社員の共有、投資家の共有、上場ノウハウの共有など多くのリソースを子会社に与えられるのが特徴である。

関連会社や子会社になるには、色がついたりするのでデメリットもあるが、新規上場会社の場合、色が他の会社よりも薄く関連会社や子会社を育てやすい土壌があるように思われる。新規上場会社は、投資会社としての期待値も含めて考慮され、トップは自らの企業の価値を高めるのか、投資によって子会社らの価値を高めることで自らの企業の価値を高めるかを決めることができる。

つまり、古株の投資家グループと比べて、新規かつカオス的な儲かるビジネスの情報が入ってくる、人材が入ってくるのが、新規上場会社の特徴とも言いやすい。

株価が高くなった後、急にストップ安などで叩かれやすいのは、真面目に事業を成長させると真っすぐな線を経営者がイメージするのに対して、投資家は今ある信用を使ってダブルハーベストループを描ける(エクスポネンシャル成長)のではないかと期待するため期待値がずれすぎるためと思われる。

ダブルハーベストループはまさに人工知能を中心に、コスト安、プライスリーダー、データの大量の取得などがあげられるが、信頼に複利を加えると、よりエクスポネンシャルな成長が期待されやすい。

新規上場会社であれば様々なルートを持っているだろうということで、期待をして人が集まり、情報が集まり、技術が集まり、資金も集まりやすい。

https://twitter.com/takahiro3iura/status/1387190671061053443?s=21
この会社は自社開発の流れとしてはうまくできている。

それらのチャンネルを活かしながら、如何に投資家グループに入るかを早い時期に決めておいた方が良い。情報収集システムの確立を孫さんのようにしない限りは、どのような投資も紙くずに変わってしまう。

安いエンジニアに対応してもらい利益率を上げるという過去の正攻法だと、そのエンジニアが高齢化したときに対応すらできなくなる。寧ろ、投資会社の局面と事業会社の局面を持ち、社長は投資会社の面で自らの事業についても投資するという視点の方が投資家からするとシンパシーを得やすい。また、投資で儲けることとができれば設備投資その他の投資をして、固定費について安心して投資を行える状況を作りやすい。

日本では、SPACや新しい上場スタイルをまねる必要もなく、如何に投資家グループへの加入、人材、情報、技術などを、自らの投資集団につぎ込み自らの事業だけに囚われない発想をできるかということも大事と思われる。

残念ながら、アメリカ主流の流れは変わらずとアメリカ投資家グループと日本投資家グループでの距離感はまだ埋まらない点はボトルネックだ。

そして、芯を食ったサービスが日本のベンチャー、新規上場会社においても発生していないところもあるだろう。それは、孫さんのようにジフデービスなどの買収など思い切ったことをしない限り、芯を食ったビジネスに結びつく可能性は低いことを意味するのだろう。

つまり、上場企業になったとしても、大きく資本レバレッジを利かせたビジネススタイルをしなければならないのが現在の状況であり、かつ、有用な情報を如何に取得するかが大事になっているのだろう。

安全地帯から批判するマスメディアと闘い、かつ、マスメディアによる攻撃により株価が低くなりながらの、レバレッジをかける姿は確かに狂気に見える。そして、社内にいるものにとっては、事業会社としてコツコツ蓄積しているものに対して分配もされず投資に回される姿は辛いものがあるだろう。しかし、①PRをまめに行い、②投資家として活動し、③社内にも理解を得ていくことをしなければ、社員の給与はいつまでも低いままなのだろう。

変化が激しい場合、投資によるポートフォリオを作らない限り、会社は安定しない。上場するというゴールでやってきた新規上場会社には難しい課題でもある。しかし、親子上場も踏まえた組織体を作ることで、全く異なる企業姿勢が作られることになるだろう。

今の時代、技術トレンドに合わせた組織体を作る必要があり、複利、ダブルハーベストループを意識した企業群を作らない限り、社員の給与は上がらず、かつ、起業をしたいと思うエンジニアが増えない。それらが日本株式会社において給与が上がらない第一要因と考えている。

商社は、沢山のシーズをまき、自らの商流を使わせて、上場ノウハウなども共有している点で興味ぶかいところがあるが、それでも自らのステークがあり(利益相反)、思い切った行動はできないようにも思える。

3.隠されてないのでは?

これだけを見ると何にも隠されていないように見える。しかし、親子上場は再現性が高いサイエンスにおける上場に対して、アメリカの上場はVCなどによって類型化されたサイエンスのような上場に変化している点は異なるように思われる。日本ではVCがまだサイエンス化して産業構造自体を変革化しているとは言えないのだろう。これに対して、アメリカは1990年以降そのようなサイエンスによって産業構造すら変えてしまったと認識して良い。

理解がまだ至らない部分もある。しかし、オープンイノベーションと空虚な言葉を述べるよりも、何をやらないかを決めて、誰にアウトソース(委ね)、何に集中するかを決める必要がありそうだ。情報のドアをこじ開けるには、どうするかも考え、かつ、投資家グループまでどのように入るかも考えておかないと、やみくもに真っすぐな成長線を描くことになってしまう。それでは、今のアメリカなどの企業には勝てない領域に来ているように思われる。

入念な準備で投資で巻き返しながら、如何に産業をソフトウェア化していき、何を任せ何に集中してつなげていくか。それこそがオープンイノベーションの考え方であり、その認識が日本企業に浸透していない事がある意味隠された真実なのではないだろうか。

4.日本企業は日本にしか顧客を持ってない問題(追記)

日本は、AWS、Googleのようなジャイアントがない問題は、確かにあります。いわゆるアマゾン税、Google税などを支払う必要がある。
IT関係では、全く歯が立たない。これからセキュリティ時代になるが、その支払いも海外にしていくと思われる。
グローバルになった場合、移民こそが力になり、そこでグローバルな製品を作ることになる。
日本は日本なりのプロダクトでとどまり、外貨を稼ぐ手段もないとすれば、給与はますます上がらないように思われる。
これらは、経営者が下した判断とはいえ、これから重くのしかかることになるだろう。
犯人探しも出るであろうが、リスクを取らない日本人が総体として茹でガエル戦略を取ったものとしか言いようがない。
それを避けるためには常にグローバルを相手にする必要があり、そうした会社は外国人が苦労する社会ではなかなか育たないのも事実だ。
一点突破するには何が今必要になるのか改めて考えてみたい。

5.一般論としての対策

「これからは、いい場所を選び、いい戦略を選び、賢く努力することが大事になると思います。私たちは戦略的にならなければなりません。そして、なんにせよ次世代の子供たちに私たちは全力で支援をし、彼らが「夢は叶う」と信じられるような土台を作る必要があると思います。努力が報われるかどうかは運ですが、努力が報われると信じられることが全てのスタート地点だからです。」

個別的な話をすると、良いポジション、良い戦略、正しい努力することを総体として行うことになるでしょう。






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