サイバー防衛隊と憲法

憲法制定当時には、サイバーテロはなかった。しかし、今は沢山サイバーテロその他の攻撃は考えられるところ、国家権力は、かかる攻撃についていかなるコントロールされるべきか。
憲法の問題と理解する。

勿論、法令から読み取ることも可能だが、それは論理矛盾だ。なぜなら、憲法が先にありきであり、憲法の解釈から法令を読み取る必要があるからだ(憲法は最高法規)。

念のためサイバーセキュリティ基本法のリンクをはる。

第四条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、サイバーセキュリティに関する総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

第十二条 政府は、サイバーセキュリティに関する施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、サイバーセキュリティに関する基本的な計画(以下「サイバーセキュリティ戦略」という。)を定めなければならない。
2 サイバーセキュリティ戦略は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 サイバーセキュリティに関する施策についての基本的な方針
二 国の行政機関等におけるサイバーセキュリティの確保に関する事項
三 重要社会基盤事業者及びその組織する団体並びに地方公共団体(以下「重要社会基盤事業者等」という。)におけるサイバーセキュリティの確保の促進に関する事項
四 前三号に掲げるもののほか、サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進するために必要な事項
3 内閣総理大臣は、サイバーセキュリティ戦略の案につき閣議の決定を求めなければならない。
4 政府は、サイバーセキュリティ戦略を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
5 前二項の規定は、サイバーセキュリティ戦略の変更について準用する。
6 政府は、サイバーセキュリティ戦略について、その実施に要する経費に関し必要な資金の確保を図るため、毎年度、国の財政の許す範囲内で、これを予算に計上する等その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(サイバーセキュリティ戦略本部員)
第三十条 本部に、サイバーセキュリティ戦略本部員(次項において「本部員」という。)を置く。
2 本部員は、次に掲げる者(第一号から第五号までに掲げる者にあっては、副本部長に充てられたものを除く。)をもって充てる。
一 国家公安委員会委員長
二 総務大臣
三 外務大臣
四 経済産業大臣
五 防衛大臣
六 前各号に掲げる者のほか、本部長及び副本部長以外の国務大臣のうちから、本部の所掌事務を遂行するために特に必要があると認める者として内閣総理大臣が指定する者
七 サイバーセキュリティに関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者

今の時代において、サイバーが警察で対応できるものではない。国家秘密関係について知られることは、国家安全に関係することである。

おそらく、サイバーは、以下の違いに照らすと、本来的に防衛省が中心に関与すべきことであり、警察では対応が難しいことであろう。

軍隊と警察力の違いは、①軍隊が外国に対して国土を防衛をすることにある。②これに対して警察力は国内の治安の維持確保にある(芦部「憲法」岩波書店4版61頁、以下「憲法」)。軍隊とは、その人員、編成方法、装備、訓練、予算等の諸点から判断して、外敵の攻撃に対して国土を防衛する目的にふさわしい内容をもった実力部隊を指すとする(芦部61頁)。

憲法第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

日本国憲法は、第1に侵略戦争を含めた一切の戦争と武力の行使および武力による威嚇を放棄したこと(つまり正当防衛をみとめない)、第2にそれを徹底するために戦力の不保持を宣言し、第3に国の交戦権を否認した比類のない徹底した戦争否定の態度を出している(芦部54頁)。

政治的にみると、これは吉田茂内閣などが軍事を持たないことでアメリカとの経済を優先できたのだから、正しいものであった。しかし、現在のサイバー攻撃で容易に攻撃が可能になっている。

例えば、第3国家がテロ組織に加担して原発その他が攻撃したときに、それを防衛することも認めない、警察のみを頼りにすることは現状では許されないだろう。アップデートが必要になる。

サイバー攻撃は、火器攻撃ではないので、武力の行使ではないと考える人もうだが、それは違う。サイバーはあらゆるものコンピュータ制御を失わせ、狙った武力の効果を発揮するものであり、単に憲法制定時代に予想をしていないものであったにすぎない。

サイバー攻撃において防衛は困難であり、その攻撃元を攻撃する方が遥かに理に適う場合がある。万が一こうした攻撃を、憲法違反としてとらえてしまうと、委縮が起きる。

むろん、アメリカからサイバー支援を受ければよいという考え方もあるが、それではアメリカが日本を二の次にした場合どうするかは検討しておく必要があろう。

自らの国民を守るために制定した憲法が、万が一国家権力を縛り結果的にサイバー攻撃に耐えることができない仕組みを作ってしまった場合どう思うだろうか。理論的には問題がないが、現時点では大問題になる可能性がある。

憲法改正をすることも考えられるが、諸外国を悪戯に刺激するだけである。改正をせずに、政府見解と同様に解釈で解決するしかないのではないだろうか。

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