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起業家の不安に向き合う シンプルルール1

1.不安は、なぜ辛いか。

前に、迷ったら大変な道を選べと書きました。

でも、大変な道を選んで、鬱になったら意味ないですよね。この大変な道を選んだ場合、以下の不安をどのように向き合うかが大事になります。

①脳にダメージが発生する

不安は、脳にダメージを与えて、思考を止めてしまいます。鬱その他の精神作用を起こします。

我々は、どうしても不安に対して、何とかしようとしてしまい、頭の片隅に追いやっても、コントロールができない状況にしてしまいます。

「ドーパミンが古い脳領域である大脳基底核に到達します。大脳基底核は、線条体(図1)などから構成されており、欲求や情動および運動の調節や運動の記憶に関わっている一連の深部脳構造です。別の古い脳領域である扁桃体(図1)は、ノルアドレナリンとコルチゾールの濃度が高まると、危険に備えるよう他の神経系に警告を発したり、恐怖などの情動に関わる記憶を強めたりします。」と記載されている通り、古い脳のあたりから、様々な思考停止のシグナルが出てきて、オオトカゲが車にぶつかりそうなときに立ち止まるように、止まってしまいます。

これはおそらく古い脳のあたりの作用と考えてよいです。これを繰り返すと、大脳にセレトニンなど有用な酵素が行かなくなってしまうのは、中々辛いものです。

②衝動に負ける

自分がメンタルが強いなど思っている人ほど辛いものがあります。常々メンタルなど強いと述べていると、自分が弱くなった時にも辛いとか言えない状況になり、自我が統一化されないため、自分を誤魔化した状況になります。「ストレスは、感情や衝動を抑制している前頭前野の支配力を弱めるため、視床下部などの進化的に古い脳領域の支配が強まった状態になり、不安を感じたり、普段は抑え込んでいる衝動(欲望にまかせた暴飲暴食や薬物乱用、お金の浪費など)に負けたりするというのです。」という形になれば、いくら優れた起業家でも、勝てるゲームなどできません。

これらは、太古から生物として動くなという指令が脳から出てきているからでしょう。多様な生物が動かなければ、運で残る可能性があります。

こうした脳の動きを否定することはできません。できることはその動きを受け入れて、自分の一部として認めることです。

問題はアリの様に小さいのに、巨象が負ける辛さは確かにつらいです。その怖さは、単に解像度が低く、何とかなるなど見向きもしない状況、不安しかなくなる状況にしていきます。

調子が良い時は、その不安と向き合うことなく、調子が悪いと急に向き合うことになる、このずれが大きいほど大きな衝撃を有するものです。

③複利の失敗スパイラル

とにかくその不安を潰すために、解像度を一つ一つ上げていくこと、問題は実際にはなにかを具体的になるまで考えることです。考え抜くと、何をすべきで、何をすべきではないかが明らかになります。特に、何をすべきではないかを明らかにしていく必要があります。無用なやるべきことを増やすと、集中できない環境になり、本人を苦しめます。集中できなくなると、複利で他の事項も集中できなくなり、あらゆるものを加速度的にパニックに追い詰めていきます。これらが複利による逆スパイラルの失敗の仕組みです。

④不安効果

そして、不安の効果として、①行動しすぎる不安効果と②行動できなくなる不安効果があることを認識すべきです。①については結果的に思考ができない状況に追い込まれて、過労死になる可能性もあります。自分の健康状況に気付かないという落とし穴があります。②については、思考のループ状から抜け出せなくなり、何も行動できず、思考停止になる形になります。

2.不安に対してどのような対応をすればよいか。

①不安について書き切る。

不安については沢山のことを書き切ることです。不安は解像度がものすごく低く、回答を出すことができないから不安なだけです。自分がコントロールできることについては、不安は発生しません。自分がコントロールできないこと、例えば宝くじに当たるかについては不安はないはずです。なぜなら、一切コントロールできることではないからです。いや、確率にすぎないのに、自分でコントロールできると期待して、動いているだけです。

決して、その不安な気持ちをそのままにしてはなりません。不安に対する解像度を上げることを専念してください。

紙に書く、人に話すの2つがありますが、後者は他人が介在するので、イライラすることがあるでしょう。紙に書くと外在化されるので、自分のコントロール、つまり、脳のキャパシティを奪うことを避けることができます。複利として、脳のキャパシティを下げることが、結果的に他の事項に対応する隙間を作ることができ、他の方より少しだけ上に行くことが可能になります。

②シンプルルールを常に用意しておく(脳は有限)

㋐脳は簡単に疲れる

次に、シンプルなルールを生み出すことです。人間の体力は有限です。脳を複雑な事象ばかり考えてしまうと、疲れてしまいます。というよりも集中ができなくなるのです。脳は、現代のパソコンよりも貧弱かつ感情をベースに動いています。理性的に考えているわけではありません。

㋑シンプルルールの効用

脳が疲れてしまったり、生理的な機能として損傷されてしまうと、感情のみで判断し、結果的に大損害まで招来します。ベンチャーなのだから、ワークハードでなければならない、切り詰めて、追い詰めていかなければならないというのは、脳の観点からすると嘘です。寝ない時間を続けていると脳は、酩酊しているのと変わらない状況になります。酔っぱらったときに考えたことがうまく行くかといえば、それは偶然に過ぎません。脳については限界があるので、シンプルに考えることが大事です。そのシンプルに考える機能は、疲れているときには到底考えつかない事が多いので、上にある事象については、自分の精神的に余裕があるときに考えておくべきことでしょう。困ったら、これを見るくらいでないと、使い物になりません。つまり、頭が働いているときに、自分が弱ったときでもこれとこれをすれば十分という形で考えていくのです。

例えば、前に(旧)司法試験をうける際、パニックになることが多々ありました。しかし、2年越しに考えて受験しなさいと言われたときに、単純化して1日を2日としてとりあつかえば受かると判断し、合格しました。その際、考えたのは自分が高熱になっても受かるようにする取り決め、つまり、38度程度の熱が発熱しても、余裕で受かるレベル、合格者の平均点レベルを発揮できるレベルというシナリオで勉強し始めました。そうすると、迷いが減り、不安が減りました。

これが、説得力無くても、例えば、営業についてうまく行かないと悩むときに、実際には母数が少ない場合もあります。例えばお客さんが来ないのは、どうしてかといえば、単に人と会う回数が少なくなっていることが良くあります。大きな仕事をすると、皆遠慮して仕事が来ないことも沢山あります。それらを、解像度を上げて、どのようにしていくかを考える際、手元に何らの道具(シンプルルール)がないと苦しむことでしょう。単に母数、確率、マーケットサーチの問題と捉えておけば、後はやるしかありません。よくあるパターンは、顧客の発明をしてしまい、必要ない商品を販売していることですが、それは速やかにピボットするために、なんらかのトリガー(ピボット事由)を考えておくことです。

㋒現状維持バイアス特性

不安は、現状維持バイアスから発生するもので、変化したくない願望が潜在的にあり(これはおそらく生物として存在するもの)、それが思考停止においやり、変化しない状況を作るのです。

クライアントがいるときには、暴力団、その他非常に困難な状況があっても不安に感じることはありません。それは、自分が守るべきもの、自分がやるべきことが明らかであり、全力でやることが使命だからでしょう。いや、嘘をつきました。実際には、簡単なことについては逆にミス等してしまうのではないかと不安になり、逆に難しい事象については迷いがなくなり、スッと集中できる環境が出来上がります。

不安は、実は現状維持バイアスからの潜在的メッセージであり、それを未来志向的に具体的な未来のビジョンを描く事及びその具体的な(将来)事象から現在につなげることができれば、解決のヒントになることが沢山あるのです。それを押しのけて、みんなと同じようにやればうまく行くなど考えると、自分なりのシナリオができていないので、アリが巨象を倒すレベルで成功イメージがないが故の大失敗を「現状維持バイアス」からしてしまうのです。

㋓目の前に集中するシンプルルール

不安は自分の見方であり、これと将来的なビジョンを如何につなげるかを考え、かつ、それを目の前にある意味づけをちゃんとした場合、人間は目の前にあることに集中できるのです。

人間は100年後のことを考えるほど、賢くはありません。それはコントロールが難しく、それをコントロールできると焦ってしまうと、今手元にあること自体について集中力を欠いてしまうのです。

シンプルルールに基づくと、①不安の解像度を上げる、②それと現在の外部的事情をより理解する、③この世の中で大事なルールとしては自分を、今後強くなるマーケットに引き寄せる、かつ、そのマーケットに近い仲間たちを探すことに専念すれば、とりあえず自分は世の中から必要とされることを理解しそのように動く事です。徒に、大きく考えすぎて、マーケットすべて取ろうとか、考えず、小さく自分のコントロールできることから始めておくことです。

㋔ネットワーク効果などの商売上のルール

シンプルルールに基づくと、市場はネットワーク効果によって大分説明が可能になります。供給とデマンドを分けて、最初にデマンドについての調査をして、次に供給サイドのあたりをつける。それからデマンドにアプローチして受注の仕組みを作り、徐々にサプライサイドについてカスタマーサクセスの仕組みを整えればよいだけです。

そして、シンプルルールに基づくと、スイッチングコストを考えると、商品は10倍良い商品以外は、視野に入らないので、①使いやすさ、②アクセスのしやすさ、③理解のしやすさ、④対応における心地よさ、⑤速さ、⑥楽さなどをトータルに設計すればよいだけです。これに対して、新しいマーケットの場合、説明コストがかかるので、ある程度疑義的に見ておいた方がよく、これは顧客自体が発見している場合を除き(つまり招かざるお客が発生しない限り)、期待感を持たない方が良いです。さもないと、顧客を自己発明した状況になり、失敗のスパイラルを得てしまいます。

シンプルなアプローチをもっておけば、たとえ困っているときで、脳が働かない場合でも習慣によって何とか対応が可能になります。そして、脳は簡単に現状維持バイアスになりやすいので、意識して自分の脳とは異なる勉強会やマーケットサーチなどをして、脳のブラッシュアップをしておくべきです。外部的な環境を理解しておけば、例えばアマゾンのリコメンド機能に近いデータセットを見つけることができたり、それぞれの業界にある大きな変動についてついていくことが可能になります。

そうした変動を利用することが大事であり、複利で利用できない方法がないかを考えていくことです。有限の時間でこれを考え、不安についてはボーナスだと思い、一つ一つクリアにして仲間にしていくことが大事です。

㋕継続的な行動をするシンプルルール

行動をする際には、外部的な基準と、内部的な基準を持っておくことです(これもシンプルルール)。これは、外部的な基準とは社会的に成果が出るための基準をもつことで、ゲームとしての数値化をすることです。しかし、同様にそれだけでもバーンアウトしてしまう可能性があるので、内部的な基準もあわせて持っておくことです。これは、自分のメンタルが落ちても、経験値その他自分が楽しいと思えることを内部にもち、それをベースに継続が可能な状況を作っておくことです。その2つを調子が良い時に持っていれば(調子が良い時は特に外部的基準で埋め尽くされるので、自分でコントロールして内部的な基準も試して使っておくべきである)、自分が落ちたときに不安で押し殺されることは少ないように思われます。

3.外部的な環境に力を借りる

さらに、不安に押しつぶされる場合、自分でコントロールできないことも沢山あります。寧ろ、そんなケースの方が多いです。「普段は抑え込んでいる衝動(欲望にまかせた暴飲暴食や薬物乱用、お金の浪費など)に負けたりするというのです。」というように、つらすぎる場合は周りの力を借りるしかありません。周りを誤魔化しても、思考停止は止まりません。

これは、自分が如何に投資をしているかだと思います。パニックゾーンは、誰でも等しくものであり、実はそのときにそのゾーンにいる人をどれだけ助けているかも大事な基準になります。それをすればするほど、自分がパニックになってもそれをシェアすることが可能です。日ごろから謙虚に生きることは、人のために生きることは、このパニックになったときに生きやすいことに繋がります。さらけ出すことができるには、それだけさらけ出すトレーニングを普段からしておく必要があります。

それがない場合でも、身近な人は何かと聞いてくれるはずです。自分を決して卑下しないでください。生きていること自体、その存在には価値があるのです。まず息をすること、歩く事、話すこと、一つ一つに価値を感じ、かつ、逃げることができるすべては投げ出しても構いません。なぜなら、そのレベルまで追い込まれた場合、メンタルさえやられなければ儲けものだからです。早く病院に行き、自分を大事にする習慣を一つ一つ身につけて下さい。

4.まとめ

以上をみると起業家として何をすべきかわかってきます。

①不安に関しては受け入れて、解像度を上げる訓練をする。そして未来の事象と何が違うのかを考える。やるべきこと、やってはならないことを明確に分けて、やることに集中できる環境を作る。

②シンプルルールを作り上げておいて、思考が停止した後でも、シンプルルールで判断できるレベルにしておくこと。複雑思考をしてしまうと、それができない時に溺れてしまうので、できるだけシンプルなルールを作っておく。なお、このシンプルなルールを作り上げるには、沢山の本や経験を積んだ方がやりやすい。

③現状維持バイアスを鑑みて、外部的な環境について常に学ぶ状況を作る。勉強会、マーケットサーチなど

④周りに対して助ける。自分の弱さをさらけ出すトレーニングを常に行う。



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角田進二 sumida shinji
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