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労働法の求めることとDXの求めること DXその53 儲ける法務その18

1.整理解雇がDX化の流れに合わない現実

整理解雇においては、判例上、①人員削減の必要性、②解雇の必要性、③人選の合理性、④解雇に至る手続きが労使間の信義則に反しない事というものであり、多くの経営者を苦しめてきた。

①人員削減の必要性

①において、人員削減の必要性を裏付ける財務諸表等の客観資料を提出しない、新規採用をするなどの矛盾した場合には、認められにくい。攻めのリストラなどは、中々しにくい状況である。

はっきり言えば、大体の転落企業は最初のあたりは利益が上がり続けるが急落する場合が多い。アーリーマジョリティ、レートマジョリティでゆっくりと下がり、それから急落する。インターネットの本質はスイッチングコストの低減であり、会社は消費者から容易に捨てられる状況にある。スピードが要求されるIT事業やDXによって変革を余儀なくされる会社では、攻めのリストラがない限り中々うまくはまわらない。人材の入れ替えが必要になるのだ。

②解雇の必要性

②解雇の必要性、解雇回避努力についても、残業の削減、新規採用の手控え、余剰人員の配転、転籍、非正規労働者の雇止めや解雇、一時休業、希望退職者の募集、役員報酬の削減などの手立てがあるが、役員報酬の削減は比較的容易ではあるものの(というよりもトップが自分の給与を下げない限り、覚悟は認められない)、それ以外は場当たり的な解決になる。

残業の削減などは、やる気がある人間をカットする場合もあり、教育の機会を失わせる。新規採用をしないということは空気を変えることができずDXの機会を失わせることになる。一時休業をするくらいなら、やめた方がよいこともある。希望退職者は、普通でもやめていくのに、組織がガタガタになるだけである。転籍配転はお荷物をどこが引き取るのかというレベルの話になる。一番やってはならないのは、既存のメンバーの給与を下げる愚行である。これは、組織を簡単に崩壊させるものになる。それだけ高い給与を払うのではなく賞与という形で予め処理しておくべきことだ。

裁判所においては、DXの必要性を感じることは稀ではある(IT裁判化はあるがそれは経営者目線の話ではない)。非正規雇用の雇止めなど、裁判所が非正規雇用などの奨励をするのは如何かと思う。これは正規労働者の既得権化(身分制)でしかない。そもそも、合わない人をやめてもらいたいというのが経営者の本音であり、整理解雇にしているのは無用に相手方を傷つけないようにすることに目的がある。無用に傷つけないことで、次の転職先を見つけることは可能になるが、雇用者と被用者で傷つけあって誰が次雇うのであろうか。

同一賃金同一労働は単なるスローガンであって、場当たり的だ。待遇を同じようにするなら、正規雇用変化なし、非正規雇用の引き上げと、正規雇用引き下げ、非正規変化なしとあるが、最終的に解雇でかかる結果になるのであれば変わらない。後者の方が納得感があるのではないか。

③人選の合理性

基準を策定してその基準を公正に適用して非解雇者を決定を要求されるが、そもそも整理解雇の崖っぷちにおいて赤字を垂れ流しつつ、完璧に公正に決めることなどできるのだろうか。何度も言うが、DXは、差し迫った状況であり、DX化されていない事項は技術的な負債ともいえる。

誰がDXに協力するかという非常に大事な事項であり、もし責任感や協調性というものを基準にしなければ、何を決めることになるのであろうか。

一つ一つが綱渡りであり、組織を壊しかねない状況である。もし、大事な主要部が欠けたら存続の可能性も無くなる場合もある。裁判所の公正さほど、経営者にとって後付けであり、衡平に欠くものはないと評価されることになるであろう。一寸先は闇であり、潰れて皆が割を食うのが幸せなのか、それともその内部のものに納得できる理由があればよいのか(つまり、大体の場合あいつは辞めさせてしかるべきだったと他のメンバー評価していることが多い)、全然異なるものであろう。

経営者に対する安易な反対は、経営者に対するやる気を損なわせ、雇用機会の拡大を損なわせるものになるであろう。勿論、そうした企業を潰すために、この解雇制限はあるのだという合理性も否定できない。多くのブラック企業は潰す価値のあるものだ。しかし、DXへの変革が、今の人材とのミスマッチによって推進できない場合、日本の企業の競争力は圧倒的に削がれていると認識すべきだろう。

④手続きの妥当性

手続の妥当性は、もちろんあった方がよいであろう。プロセスとしては、当事者が納得できる程度のものである必要があり、一定の妥当性は要求されてしかるべきである。

以上の通り、裁判所は、徐々に手綱を緩める時期(判断について謙抑的になるべき時代)に来たのではないか。そうでないと、DX化の流れに日本はついていけなくなると思われる。

2.これからの時代においてのベーシックインカムの在り方

過去は以上の通り、会社がベーシックインカムを供給し、判例の通りに対応されていた。それをDXの動きと異なると反対意見を述べた。代替案は何かということが大事になる。

DXは変化の流れ、解雇制限は変化への制限と、方向性が違うのだ。

解雇が容易にできるという土台に立つと、①今後は入る前と出る前でスキルアップにつながる必要がある。②副業が必要になる。③転職が通常の流れになる。④失業手当はやはり必要になる。ベンチャーが育つ仕組みをより作る必要がある。⑤ブラック企業がつぶれる仕組みづくりを意図的に作る(結局はクチコミになるのではないか)。⑥教育によるリカレント、⑦年をとっても働ける環境づくり。

寄り掛からない生き方をする方が、雇用者被用者も健全な生き方ができるだろう。





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