Foundationモデル(基盤モデル)と著作権
文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回)で著作権関係の話がされています。
変わったこと:より詳細に検討されることになった。
変わらないこと:基本はユーザーは「インプット段階で著作権侵害の意図をもって入力してはならない」「アウトプット(生成物)につき疑わしきものは会社外部に出さない」「浮動的な部分はあるので、安易に厳格なルールを決めすぎない」というポリシーが適当ということは変わらないということになります。
文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回) | 文化庁 (bunka.go.jp)
大事なのは資料3です。以下の図が大事です。
これを読むと、何が分かるか。
ほんの10日前(2023年7月26日)まではAI開発と学習段階と生成利用段階を分けましょうねで終わっていました。
今回のPPTで分かったのは、
①すべてを30条の4で解決しないということ。とはいえ、30条の4はユーザーサイドでも主張できるということ。
②より分析的に見ていく必要があること。
③とはいえ、基本はユーザーは「インプット段階で著作権侵害の意図をもって入力してはならない」「アウトプット(生成物)につき疑わしきものは会社外部に出さない」「浮動的な部分はあるので、安易に厳格なルールを決めすぎない」というポリシーが適当ということは変わらないということになります。
さて、今回のパワポは何が違うのか。
AI開発者、AIサービス提供者そしてAI利用者と分けている。AIサービス提供者とAI開発者は必ずしも一致しないということで分けているのであろう。
そのうえで、AI開発段階とサービス利用段階とを分けることをしている。
1.AI開発段階
情報解析の30条の4のみが検討されている。
その際は、生成を予定していない。
「基盤モデル」と「生成AI」(推論用プログラム)はイコールではない。
収集加工段階と入力段階とを分け、両方とも30条の4適用とする。
2.AIサービス提供準備
1)享受目的がない場合
AI開発での基盤モデルは配ることができたりする。これをダウンロードし、追加学習データセットを入力し追加学習用のプログラムを作成したうえで、追加学習済みモデルを作成することは予測される。その段階も同様に30条の4適用とする。
2)享受目的が併存する場合
30条の4が適用されない場合、以下の47条の5の適用(準備行為)を考慮する必要がある。
電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出することによつて著作物の利用の促進に資する次の各号に掲げる行為を行う者は、
公衆への提供等が行われた著作物について、当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、いずれの方法によるかを問わず、利用(当該公衆提供等著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る。以下この条において「軽微利用」という。)を行うことができる。
なお、「本資料では、AI利用者が行う追加学習として、主に数十~数百点程度の追加学習データを用いて行うもの(数億点規模の追加学習データを用いて主に事業者が行うもの以外のもの)を想定している。」との記載は、47条の5当該公衆提供等著作物に係る公衆への提供等が著作権を侵害するものであることを知りながら当該軽微利用を行う場合その他当該公衆提供等著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。又は当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度に対応しているのではないかとも思われる。
3.AIサービス提供段階
1)入力をし生成する
①ユーザーがインプットするときにそれが著作物の場合、私的利用(30条1項)か非享受利用かを検討する。会社の場合非享受に該当する必要がある。
②ただし、単純なインプット(コマンド)など著作物が生成される蓋然性が高いなどの事情がある場合は、AIサービス提供者の責任になるであろう。
「演奏の形態による音楽著作物の利用主体の判断に当たっては、演奏の目的及び態様、演奏への関与の内容及び程度等の諸般の事情を考慮するのが相当である。」
そして、その場合には47条の5第1項2号に該当するか否かを検討することになろう。
そしてかかる著作物をオンラインにシェアするなどの行為をすれば、原則著作権者の許諾が必要になる。
③AIサービス提供者の責任にならない場合で、コマンドが著作物そのものや類似したものを呼び起こすものである場合は、30条1項や30条の3に該当するかを検討することになる。そして、万が一、かかる生成物をオンライン上にシェアするなどの状況は著作権者の許諾が必要になる。
2)追加学習プログラムを作る
ユーザーとしての立場もありながら、追加学習プログラムを組み立てることも十分考えられる。
ア)追加学習プログラム組み立て
①一般の私人の場合
AI利用者は、AIサービス提供者が配布した生成AI(推論用プログラム)を教育するために、追加学習データセットを自前などで収集加工し、入力する場合もある。その場合は、一般の私人の場合は、30条1項に該当することをまず検討することになるであろう。一般にこうした追加学習用プログラムを頒布する目的の場合は、その適用を受けない可能性もあり、30条の4の該当性も検討することになる。
②会社の場合
30条1項の私的複製に該当しないケースになるので、30条の4の該当性を検討することになるであろう。つまり、その時点で享受の目的がないことを立証できるように備えおく必要がある。
イ)入力出力時
入力では私的複製や非享受利用を検討する。
出力した場合は、私的複製30条1項や検討過程利用30条の3を検討する。
なお、その生成物をオンライン上にシェアする場合は原則著作権者の許諾が必要になる。