スタートアップ保険
スタートアップ保険なる制度は興味深いが、活用されるか。
スタートアップ界隈は、通常の会社のロジックと異なる。通常の会社は、ベーシックインカムとして、社員の心理的安全性を確保する設計ができている。これに対して、スタートアップは如何に成長するかの設計がされている。なぜ、新規事業が成功しないかといえば、スタートアップを理解しない会社がいきなり新しいことをやれと言われてもそんなに簡単にうまくはいかない。
保険の内容として以下のことが記載されている。
スタートアップ保険には3つの種類がある。R&D 費用を最大1,000万人民元(約1.5億円)補償するもの。起業家の生活費を最大3万人民元(約46.3万円)補償するもの。特定の理由により失敗した研究プロジェクトの損失を最大1,000万人民元(約1.5億円)補償するものだ。
確かに、事業家は、失敗して失業しても失業保険はない。借金をして生活に苦しいのにだ。その意味で、保険を付保したい気持ちはわかる。
R&Dはいつでも欲しい。どんどんお金を溶かしてしまうのがR&Dだ。キャッシュフローがつらい気持ちからすると、ついつい保険に目が向くだろう。しかし、その点は、銀行や取引先を信用の広さとして考えておくべきで、日ごろから信頼関係を作っておくべきと考えている。
ほぼすべての研究プロジェクトは、失敗する可能性が高い。継続をしなければ、潰れる。やるべきは如何に撤退ラインを築くか。引き戻せないようになるまで突っ込むべきではないというのが、起業家としてあるべき姿なのだろう。常に生存するためのお金を残しておく。
ここまで聞くと、保険は必要ではないという結論を出すことになりそうだ。しかし、保険は違う形になっている。それは、スタートアップをコミュニティとしてとらえ、お互いが助け合う仕組みにしておくこと、関係を広く持つことで雇用の確保ができやすい仕組みを作ること。スタートアップ倫理を構築すること。失敗をシェアできる仕組みを作ること。そうしたお金を惜しまないこと。共済のようにして、なんらかの事故があったら相互に保証をして、再建をできるようにしておく。
実は、ファミリーがユニークなのは、家族の一員になるため起業家に対し株式5%の拠出を求めていることだ。つまり、株式が“入会金”代わりとなるわけだ。メンバーが増えるほど、ファミリーは巨大な“持ち株会社”のような組織になる。現在、メンバーの企業価値を合計すると10億ドル(約1110億円)以上の価値が生まれているといい、決してあなどれない。
日本において必要なのはこうした仕組みづくりではないだろうか。失敗を共有する仕組みづくりを作る必要があり、かつ、失敗を称賛できる雰囲気作りが必要だ。