コロナ時代でのリーガルインパクト(官公庁は、どのような判断を下しているか)
0.参考
各所管官庁から次々とリーガルインパクトのある判断が出てきています。
勿論、最終的には裁判所で決めるものではあるのですが、裁判所は、現在遅延する方針です。
本来は、国会が決めるべきところではありますが、時間がありません。そして、裁判所も期待できません。そこで、行政が積極的に判断をしている状況です。
1.建設業者に対して(国交省)
「自治体に対しては、緊急事態宣言の対象地域内で実施中の工事・業務について、受注者からの申し出があった場合に、受発注者間で協議を行った上で、工期の見直しや請負代金の変更、一時中止など必要な措置を講じるよう要請。対象地域外で実施中の工事・業務に関しても、人材・資機材の調達が困難であるといった受注者からの申し出をもとに個別事情を確認し、適切な措置を講じるよう求めた。」
これにより、河川や道路などの公物管理や公共工事など社会基盤の維持に関わる事業者以外は、「不可抗力」に該当する解釈が継続して適用されることになる。
2.家賃支払いの遅延(法務省民事局)と免除の場合の損金扱い(国交省)
①同様に、テナントが3か月家賃を支払えない状況になる場合に信頼関係が破壊されたものと原則認めない状況になった。
「 日本の民法の解釈では、賃料不払を理由に賃貸借契約を解除するには,賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されていることが必要です。最終的には事案ごとの判断となりますが, 新型コロナウイルスの影響により3カ月程度の賃料不払が生じても、不払の前後の状況等を踏まえ、信頼関係は破壊されておらず、契約解除(立ち退き請求が認められないケースも多いと考えられます。」
meti.go.jp/covid-19/pdf/yachin_shien.pdf
さらに増えてQ&Aになりました(2020年5月24日加筆)
http://www.moj.go.jp/content/001320302.pdf
②損金扱い
勿論、申し訳ない気持ちもあると思いますが、オーナーサイドは特例を認めたとしても、寄附金に該当しないと明確にきまりました。
この点だけでも、余計な交渉を減らす理由はあると思います。
(災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除等)
9-4-6の2 法人が、災害を受けた得意先等の取引先(以下9-4-6の3までにおいて「取引先」という。)に対してその復旧を支援することを目的として災害発生後相当の期間(災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいう。以下9-4-6の3において同じ。)内に売掛金、未収請負金、貸付金その他これらに準ずる債権の全部又は一部を免除した場合には、その免除したことによる損失の額は、寄附金の額に該当しないものとする。
既に契約で定められたリース料、貸付利息、割賦販売に係る賦払金等で災害発生後に授受するものの全部又は一部の免除を行うなど契約で定められた従前の取引条件を変更する場合及び災害発生後に新たに行う取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様とする。
3.休業手当と賃金(厚労省)
「新型インフルエンザ等対策特別措置法による対応が取られる中で、協力依頼や要請などを受けて営業を自粛し、労働者を休業させる場合であっても、労使がよく話し合って、休業中の手当の水準、休業日や休業時間の設定等について、労働者の不利益を回避する努力をお願いします。
また、労働基準法上の休業手当の要否にかかわらず、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対しては、雇用調整助成金が、事業主が支払った休業手当の額に応じて支払われます。今般の新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、全国において、解雇等を行わず、雇用を維持する企業に対して、正規雇用・非正規雇用にかかわらず、助成率を中小企業は90%、大企業でも75%に引き上げるなどの特例措置を講じています。さらに、都道府県知事から休業等の要請を受けた中小企業が解雇等を行わず雇用を維持している場合であって、100%の休業手当を支払っているなど一定の要件を満たす場合には、休業手当全体の助成率を特例的に100%にするなど、事業主の皆様を積極的に支援していきます。
なお、新型インフルエンザ等対策特別措置法による対応が取られる中で、協力依頼や要請などを受けて営業を自粛し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません。
労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありませんが、不可抗力による休業と言えるためには、
①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること
という要素をいずれも満たす必要があります。
①に該当するものとしては、例えば、今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく対応が取られる中で、営業を自粛するよう協力依頼や要請などを受けた場合のように、事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因が挙げられます。
②に該当するには、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要があります。具体的な努力を尽くしたと言えるか否かは、例えば、
・自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
・労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか
といった事情から判断されます。」
4.マスク関係の販売について(公正取引委員会)
「新型コロナウイルス感染症の流行に伴い,マスク,除菌剤等の小売価格が高騰しないよう,これらの商品について,メーカー等が小売業者に対して一定の価格以下で販売するよう指示する行為は,独占禁止法上問題となりますか。
1 メーカー等が小売業者の販売価格を拘束する行為は,正当な理由がない場合には,独占禁止法上問題となります(再販売価格の拘束)。
2 しかしながら,新型コロナウイルス感染症の感染拡大が進む中でマスクのような商品について,小売業者が不当な高価格を設定しないよう期間を限定して,メーカー等が小売業者に対して一定の価格以下で販売するよう指示する行為は,通常,当該商品の購入に関して消費者の利益となり,正当な理由があると認められるので,独占禁止法上問題とはなりません。
3 なお,一定の価格以下で販売するよう指示することにより,かえって商品の小売価格の上昇を招くような場合には,正当な理由があるとは認められません。」
独占禁止法第2条第9項
四 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること