戦略法務とは何か。DXその51 儲ける法務その16
1.戦略とは
戦略とは、戦術とは異なり、勝たずに敵に勝つことである。
非常識のストーリこそが、勝ちパターンになることは多々ある。
ストーリーとしての競争戦略 Hitotsubashi Business Review Books 楠木 建
マブチモーターは「標準化戦略も継続されたのですね。自動車業界は顧客企業が強くて、部品メーカーは顧客の要望に合わせてカスタマイズすることが多いという印象」という通念に対して、「標準化により低コストと高品質を同時に実現することが当社の基本戦略」というスタンスで立ち向かった。
下請けであるという弱みがあったものの、結果的に、標準化を通して、強みとした。
サウスウェスト航空は、「ハブ・アンド・スポーク方式」という従来型から、「路線バスという位置づけにし、サウスウェスト航空は、それでも低価格でも回転率を上げることで利益を上げることができるはずと考えた」
まずは、自分たちの弱みは何かを確認する必要がある。
マブチモーターは、モーター会社としては強い部類ではなかったが、あえて標準化を選び、融通が利かないという形にした。「事前にマーケティングをおこない、先に標準品を作りました。その標準品を持って、お客様に「現在ご使用中のカスタマイズ品と比べて、当社の標準品は小型・軽量ですが同等のトルクを実現しています」と提案し、ご検討いただきました。実際に当社の標準品を確認していただくため、何度もお客様のもとに通いご納得いただいたのです。」プライスリーダーシップをとり、客に納得してもらう仕組みを作った。
サウスウェスト航空は、後発という弱さを、低価格でも回転率を上げることで利益を上げるという形で勝負した。
以上の通り、引き算を使い、自らの強みを作っていった。
2.SDGsやESGという大きな波
SDGsやESGは経営者にとっては頭痛い課題である。
①現行のステークホルダーマッピングを作る。
②その上で市場の策定を再度自らの弱点(弱点を寧ろ強みする点)とともに考える。その際、自らのビジョン、バリュー、ミッションから考えていく。
自らのサービスについて名詞である製品ではなく、サービスとしてとらえなおす。例えばガリバーの場合、製品は中古車であるが、現在はサービスとして移動をサービスとしてとらえていると認識している。
その上でPR、マーケティング、営業のプランニングを変えていく。
その際、SDGsを付加価値とするのではなく、引き算によってそれがフィットする形にすることが、望ましい。目的の策定から考えていくと、必然として、SDGsやESGに近いものになり、PRとしては苦労しないものになるであろう。ハブアンドスポークを避けたことで、過当な競争からさけ、効率化まで考えることができたサウスウェストは参考になる。
③戦略そのものが、ストーリーテリングである必要があり、余白を作る。誰が弱者なのかを見極めて、その者たちを保護する立場をとる。
例えば、Waymoは以下の戦略をとった。
④収益性がある、コストもかかりにくい、他の誰かがやるというリスクを考えて、決断を早期に下す。
3.空気感を作る
いきなり、国政に言っても相手にされない。国政者の仕事は、票田をあつめることであり、貴社を助けることではない。
婚活は空気感から作られていったことを聞いたことがある。
人間は、ロジックのみで動くわけではなく、まず空気感、つまり、感情で動く事を理解すべきである。例えば、自動運転は効率的だが、それだけでは人は動かず、アーリーアダプターで止まる可能性があり、アーリーマジョリティ、レートマジョリティまで行きつくことが難しい。
何が外敵かを認識することから始める必要がある。利益を追求することを前面に出してしまうと、誰も共感されず、結果的に独りよがりのサービスになってしまう。
日本タクシーとUberの戦いは、まさにUberが誰かを救うイメージを出さないため、利益を優先するイメージが先行した可能性がある。
公的なニーズのタイミングとフィットし、興味深い場合で共感しやすい場合は、ローカル、全国と広がりやすい。これに対して、オペレーションが強くない場合、ひそかに進めていく必要があるであろう。なぜならまねされると成長が止まる可能性があるからだ。この点は、一般化できるものではない。
例えば、当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となるものと解されることとされ、それ以外は禁止されていない。こうしたものは、マネされやすい部分があるので大体的にやるよりも、急速な拡大戦略をした方が良いように思われる。これは空気感が元々あった事例とも考えられる。
4.行政にアクションをとる
①グレーゾーン解消制度
②ノーアクションレター
(①②の違い)ノーアクションレター制度の確認対象が、各府庁が指定した法令(条項)に限定される 。事業者が直接規制所管省庁に対して確認をする必要がある。グレーゾーン解消制度においては、対象となる法令に制限はない。事業者の申請に応じて事業所管省庁がサポート役となり、規制所管大臣との協議を行う。結果的にグレーゾーン解消制度の方が便利である。
新技術等実証計画が、事業化に先立って新技術等の実用化の可能性について行う実証であって、限定された期間において、限定された参加者等に対して、実証を適切に実施するために必要な措置を講じた上で、認定証を提示し、同意を得て実施することに配意(基本方針第三2.(2))すれば、例えば、下記の方法により、個別の新技術等実証計画が新技術等関係規定に違反しないものとして構成することができるとの認識に立ちつつ、主務大臣の見解を聴き、調査審議を行う。
例1 当該実証計画の内容が、新技術等関係規定の定める事業の定義や要件に該当せず、規制の対象とならないものとして構成する方法
例2 期間や参加者が限定されており対公衆性を有しない等、新技術等実証の特性に配意して、事業等(「業として行う」、「業とする」、「営業」、「事業」等)として行うことを規制する法律(いわゆる業法)における規制の対象ではない(「業として行うものではない」、「営業ではない」等)ものとして構成する方法
例3 当該実証の内容が、法令またはそれらの解釈の適用除外の要件(人数、金額等)、例外規定(個別の許認可、要件や基準の緩和等)に実質的に該当するものとして構成する方法
例4 規制法における新技術等の位置付けが確定していない中において、実証の内容が規制の対象となるかについて個別具体の事例に応じた柔軟な判断をすることができるものとして構成する方法
例5 従来の指針や通達には合致するものではないものの、新技術等の性格、当該実証の内容等を踏まえれば、法律の規定には必ずしも違反するものではないものとして構成する方法
例6 当該実証の内容に対して、業務の範囲や期間、事業の内容等について限定した条件を付けた許可、免許等を受けるものとして構成する方法
例7 主務大臣が特別に規制の適用を除外することができる旨の規定がある場合において、当該規定に該当するものとして構成する方法
例8 試験・研究開発に関する規定又は試験・研究開発に該当する場合には規制の対象とならないとする解釈論に該当するものとして構成する方法
特例措置の整備を要望することも可能である。これを使われたのは、「個人が少額を拠出し合って相互扶助するP2P保険に関する実証」
(新技術等実証に係る新たな規制の特例措置の求め)
第九条 新たな規制の特例措置の適用を受けて新技術等実証を実施しようとする者は、主務省令で定めるところにより、主務大臣に対し、当該新たな規制の特例措置の整備を求めることができる。
2 前項の規定による求めを受けた主務大臣は、当該求めを踏まえた新たな規制の特例措置を講ずることが必要かつ適当であると認めるときは、遅滞なく、その旨及び講ずることとする新たな規制の特例措置の内容を当該求めをした者に通知するとともに、講ずることとする新たな規制の特例措置の内容を公表するものとする。
3 第一項の規定による求めを受けた主務大臣は、当該求めを踏まえた新たな規制の特例措置を講ずることが必要でないと認めるとき、又は適当でないと認めるときは、遅滞なく、その旨及びその理由を当該求めをした者に通知するものとする。
4 主務大臣は、第一項の規定による求めに係る新技術等実証について新たな規制の特例措置を講ずるか否かを判断するに当たっては、革新的事業活動評価委員会(第三十一条に規定する革新的事業活動委員会をいう。以下この節及び次節において同じ。)の意見を聴くものとする。
④新事業特例制度
新事業活動を行おうとする事業者による規制の特例措置の提案を受けて、安全正当の確保を条件として、「企業単位」で、規制の特例措置の適用を認める制度
実際にグレーゾーン解消制度の照会書を作成して申請を行った後に「規制に抵触している可能性がある」という回答を受けた場合にも活用できる制度
⑤これらの様式等
5.裁判による変革
ケンコーコム
タトゥー施術に関する医師法違反事件最高裁決定
コスト、不確実性など疑義があるが、行政に聞くまでもなく、既得権化しているもの、又は、秘して拡大する必要がある場合は、この手法も使うことが可能と思われる。
この手法は、自己資本の方が好まれるだろう。行政がイノベーションに協力的である昨今では、社会から共感を得にくいものについてこの手法が使われるように思われる。
スキ、その他の行為は、元気玉として有効利用させていただきます。皆様のお力を少しでも世の中の改善に使わせていただきます。