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起業バーンアウトしないために 〜起業初期に心得ておきたい5つの視点
数多くの起業を支援してきている中で、起業が成功に導く人とそうでない人の差に、生活面での環境の違いが大きく関わっていると感じます。
起業をすると、予想もしないことが、たくさん出てきます。
特に時間とお金は、無尽蔵に食い潰されていき、最終的にメンタル面に影響をしてきます。
自身の経験と支援をしている中で、起業バーンアウトを何度も見てきています。
そうならないように、心得てておきたい5つの視点をまとめておこうと思います。
1.生活水準を見直しておく
就業をしていた人が起業をすることがほとんどかと思いますが、こうした場合、生活水準を見直しておくことをオススメします。
起業しても事業が軌道に乗っても、経営者の報酬はかなりの期間、不安定になります。
事業がうまくいかず収益が不安定になったり、資金調達がうまくいかなかったりなどした場合、まず最初に、役員の報酬が遅延となります。遅延した後で戻ってこれば良いですが、必ずしもそうとは限りません。
これは起業初期の会社経営と同じかもしれませんが、
個人の生活も、固定費を減らし変動費にしておきましょう。
また、その変動費も、できることなら最小化しておくことが必要です。
マンションや車のローンなど、定額で払い続ける必要がある場合もあるでしょう。会社の借入金の支払いのほうがどうしても優先される中で、報酬が滞るとそうした支払いができなくなる可能性があります。
そこで借入をする必要が出てくると、会社と個人の両方で借入という二重苦の状態となってしまうため、個人や家庭は会社からの影響を受けにくい状態にしておくことは大切です。
たとえば、生活する拠点を郊外に移して生活コストを下げたり、ローンを事前に返済したりなど、事前に月々の出費を減らす準備をするようにしてきました。
サラリーマンという生活は収入がある程度保証されているので、来月の給与が入らないということは滅多にありませんが、経営者の場合には十分に考えられるので、そうした想定をしておくことは十分に必要です。
2.家族や生活環境の優先順位を確認しておく
家族の環境は、起業家にとっても大きな影響を及ぼします。
たとえば子どもが小さかったり、介護をしていたり、個人の健康に課題を抱えていたりなど、様々な障壁によって時間の都合がつかないことがあります。
こうした状況を強行的に突破をしていく人も中にはいますが、ほとんどの場合、何かしらの代償を受けることになります。
やはり家族に大きな負担をかけたり、無理をして身体を壊したりすることもあります。
また、子どもや親と過ごす時間は取り戻せませんから、後になって、あーしておけば良かったと思っても遅いのです。
かといって、小学校に入れば時間ができるとか、中学校に入れば自由になれるとか、そうでもないことが多くあります。
私自身もそんな甘い考えを持っていましたが、多少は時間の都合はつくものの、実際に取られる時間は幼少も小学校から中学校あたりまでは、変わりません。
もちろん、送り迎えが無くなったり、自分でやれることは増えるかもしれませんが、そのぶん、時間が読めなかったり、習いごとの送り迎えが発生したり、受検などで時間が別途増えることがあります。
それが終わると、介護が待っているかもしれません。
それらを待ってから始めるといっても、機を過ぎてしまうかもしれませんので、何もせず待つことはできません。
でもそうした環境でありながらもできること、準備していくことはたくさんあります。
また、どうしても全部を自分でやらないといけない症候群に駆られることがありますが、そうでもないことがたくさんあります。
自分の理想の事業は次のステージで実現すると割り切って、そのための準備としてのコミュニティを作ったり、協働プロジェクトを始めたりすることも、確実な起業への一歩だと思います。
あくまでもそうした環境に合わせながらやっていくことも、とても大切だと思います。
3.クロスフェードしながら移行する
会社を辞めて起業をする、そうした飛び込み型の起業をする人もいますが、私はあまりオススメをしません。
会社に居るからこそできる準備はたくさんありますし、副業が禁止でも実際には多くの準備をすることが可能です。
会社にバレたり評価が下がったら困るからと思うかもしれませんが、どうせ最後は起業するのですから、時には不良社員になる選択肢だってある、と思って開き直ることも必要だと思います。
何かを断って飛び込む…というのは、後に戻れないということです。
もちろん、平行してズルズルといつまでも続けることもオススメしませんが、クロスフェードをイメージして、自分の軸足を移していくことはとても大切なやり方です。
完全に両足を企業の中に置いていては、何かあったときに選択肢がないので、依存するしかなくなります。
それがたとえ起業であったとしても、起業した会社にコミットはしつつも、最初は収入をアテにしすぎて依存しすぎると、うまくいかないことが多くあります。
それは一緒に働きたいという人も同じです。
どんな起業も、最初は不安定ですから、そこに依存するというのは危険です。
一緒に働きたいという方もまた、コミットしてほしいという気持ちは持ちつつも、やはりクロスフェードしながらということが理想といえます。
4.起業家の繋がりを絶やさない
会社に所属をしていると、必ず誰かと繋がり、誰かと顔を合わせるでしょう。
それは会社の仲間だったり、取引先であったり、顧客であったり。
でも起業をすると、仲間も、取引先も、顧客もいない状態からはじまりますから、誰かとの繋がりというのが途絶えている状態なのです。
人の欲求の一つは所属です。集団欲によって心の安心や安定が満たされるものであり、いくら一匹狼のように振る舞っていたとしても、仲間が必要です。
そして、起業家でないと通じない会話、言語、心境などがありますから、同じ立場で話す何気ない会話であっても、話せる相手が居るのと居ないのでは心理的な面で大きく変わります。
ただ、起業家はそれぞれに、自分のやるべきことに必至ですから、いくら仲間であっても、会社の仲間の様な繋がりを求められるものではありません。
それでも、同じように頑張る姿を見たり、同じような悩みを抱えていたり、孤独で視野が狭くなったときに広げてもらう役割など、様々な繋がりが必要です。
最も良いのはメンターを見つけることでしょう。
私も、会社の顧問や社外役員になることがたくさんあります。
それがたとえ少額や無償であったとしても、将来的にビジネスが大きくなっていく過程の中で、学びになったり、お金だけではない価値や繋がりを得られることもたくさんあります。
私自身の経験そして相談を受けている中で、この起業家の孤独が、起業がうまくいかない、事業化が進まない一番の原因ではないかと思っています。
5.撤退期限と選択肢を用意しておく
誰もが無限に資金も時間もあるわけではありません。
特に家族がいれば、生計を共にする人として、気が気ではないでしょう。
ですから、損失可能な範囲を設定しておく必要はあります。
時間的、資金的、信用を含めて、どこまでこの機会に踏み込むのか、ということです。
私がこの機会にと書いたのは、起業は何度も機会があるということを知っているからです。
そう、何度だって、あります。
今しかない!と思いがちですが、そういう時は視野が狭くなって、時間的に焦っている時かもしれません。
そうすると、できることが限られてしまって、うまくいかないこともあります。(もちろん、だからこそうまくいくこともあります)
もしうまくいかないのであれば、1度撤退をするということも必要です。
つまり、業務委託や別の仕事をして生活費を稼ぎながら、新しいチャンスを伺うということです。
撤退といっても、表立って「撤退します」と言う必要がなければ、ひそかに気持ちだけ撤退してても良いのです。
私も起業しながら、就職をしたことがあります。
そのときも、代表をしながら、役員もやっていましたが、それでも一旦、就職という選択肢をとりました。
つまり副業的に起業をしている状態になりますから、よくある兼業やプロボノと同じようなスタイルです。
いまの時代は、どんな選択肢も可能なのです。
まとめ
起業は、気合いと根性も必要ですが、それだけでうまくいくものでもありません。
まずは現状を客観的に見て、リスクを減らしておくことは必要です。
生活水準が高い状態を一時的にでも下げるのは、なかなか難しく家族の理解も時間がかかります。
時間は予想以上に空かない中で、その環境をうまく利用しながら、自分だけでやらない選択肢も入れて、段階を踏んで進めることが大切です。
家族の都合、自分のモチベーション、経済環境、セレンディピティなど、あらゆることが重なって乗っていくものです。
無理をしすぎて、迷子になって、バーンアウトしてしまう人もたくさん見ています。
起業はそんなに想い通りに進むわけでもありません。
もちろん、気合いも根性も必要な時があり、タフにならざるをえないこともたくさんあります。
でも、起業のチャンスは、継続をしてちゃんと準備をしていれば、ふと訪れるのです。
私もそうやって自分の思い通りにならない時間を、今でも過ごしています。
ぜひ多くの人が起業という道を諦めず一歩でも進めるようにと願っています。