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気分で

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洗って

雨が降った時に聴きたい曲がある。 塩入冬湖さんが歌う「洗って」という曲だ。 雨が降った時と言えども、雨に打たれながらではなく、街中を歩きながらでなく、部屋の中から窓に雨粒が這っていく様子を眺めながら聴きたくなる。 窓越しにシトシトと降る雨を見つめていると、世界と遮断された気持ちになる。湿り気を帯びていく街並みが、窓を一枚隔てただけではなくて随分と距離があるように感じる。 自分にとって、出会いと別れの情景はこんな感じだ、と感じる。 青空に映えるピンク色の桜ではなくて。 気

    • 屑箱

      男だからとか女だからとか、根拠もないくせにそれらしい理由を並べて身を守る人々は、誰かを傷つけることに罪悪感を持たないよう実態のないものを吊し上げて自分の無罪を主張する。 大衆の中に自分を隠して口元抑えて声を上げ、指されぬようにと目を逸らしながら刺されぬようにと腕を組む。 そんな貴方をこんな世の中だから仕方ないと優しさで包んで屑箱へ。

      • 「幸せになって」だなんて最悪の別れの言葉だ。無関係の所から傍観するだけの幸せは色味も温度も無くて、そこには漠然とした距離だけが在る。 安らかに弾むような抵抗を受けながら、流れに抗う息苦しさは当事者だけのものだし。 画面越しに見るフィクションみたいな悲惨な情景や、沢山タップされるまやかしみたいな笑顔と並べられる程度の幸せを願われるよりもただ、日常の挨拶と名前が肩を並べていられたらそれで良かった。 甘くてぬるい言葉を今日も吐きながら誰かよりも自分の幸せを願い続ける。

        • 34

          歳を重ねていくたびに、摩耗しない生き方ばかりが染み付いている。 有限の感情を奮い立たせないように、虚像に騙された振りをしている。 口裏合わせて口実作って口内交わして夜はいつでも味気ないから昼に満たされている。 与え合って分け合いながら誤魔化し合って交わした約束の中に潜む自分の表情は思い浮かべたくもないから偽っていようよ。身勝手に振る舞いたいから、使い古した優しさばかりを性懲りも無く提示する。

          Hello,good-by

          はじめましてを繰り返して 何度も新鮮な気持ちを味わいたい 気づいた時には期限が切れてて 大切にしてたのに無駄になる はじめましてを積み重ねて 何度も生まれ変わる姿を見たい 見つめた先には光が切れて 盲目でなくとも暗くなる 恍惚でいさせてよ 気持ち良い夜で終わりたい 期待に膨らむ朝を迎える時は 隣に君はいないでほしい

          Hello,good-by

          キャッチボールとオセロ

          口実を理由にするほどの温度を 持ち合わせていないことは 冷えた指先の鈍い動きで とうに実感していたけれど 年甲斐もなくどこか浮き足立ちながら 傘を持ってでも知らない地面を 歩いてみたかった。 変わらない景色に変化を見出して 明日の朝まで温度を保って 構える前にボールを投げて。 不安定にひっくり返る 逆転した夜が待ち遠しいから 眠気を堪えて消耗ばかりの しょうもない思考は横に置いとく。 明日の朝の天気を話したい。

          キャッチボールとオセロ

          指切り

          約束に呪われる 月日の経過とともに形が崩れていくのを ただただ見ていることしかできずに 感情がまるで剥がれ落ちたメッキみたいだ 指先で触れた時のざらりとした触感が 自分の心に触れたかのように錯覚させる 果たされなかった約束に 足を取られて動けずにいるのは 呪われているようで 呪っているのかもしれない 呪いの先には 相手がいるのか自分がいるのか 視界が霞んでわかりやしないけど

          指切り

          ジレンマ

          天井をただ眺めながら自分を持て余していた 視界の端が少しずつ狭まりながら 心身ともに湿り気を帯びていく中で 思考は何の役にも立たずに 行き場を見失う感情が渋滞を起こす 今ではワゴンに並んでいる ありきたりで安売りな言葉が あの時は確かな価値を持っていた 景色が変われども距離は変えられず 少しずつ軌道を逸らしたつもりで 抗えない引力を確認しただけだった 絶望の振りと物足りない毎日に飽きながら 文字を響かせて雑音に包まれたり まともに悲しめる自分に少し驚いたり 懲りずに与

          ジレンマ

          ドーナツ

          帰り道衝動的にドーナツをいくつも買った 何かに抗ってみたくなったのだけれど ドーナツを食べたい欲求には 素直に従ってしまっていたことに 食べ終えてから気づく 食べきれない量を買うつもりだったのに 結局食べ切れる量だったのが 抗う気持ちに比例しているみたいで いつだって利口でいれば きっと良いことがあると思っていたし 積み上げた塵が山になることを ただ呆然と待ち侘びていた 迂闊に息を吹かなきゃよかった 浅はかさが体温に混じっていた 今日もなんだか塵みたいな一日で ネオンの光

          ドーナツ

          吐瀉

          まるでほつれた穴を広げるように 感情というデリケートな部分を 遠慮なく掻き乱すあの子や 他人を自分のエピソードのスパイスにして いつまでも煮え切らない鍋を掻き回すあの子 深夜に一人で口に運んだケーキの味は 全く求めていない味だった 共感を強いられた時 どうして他者の幸せに 自分の気持ちを重ねられるのか不思議に思う そもそも共有していないのだから 共感の生まれようがない 浅はかさが愛おしい時もあれば 愚かさに救われる時もあるけれど 心が硬く縮んでも譲れない時がある 理解さ

          吐瀉

          フラペチーノ

          フラペチーノを飲み干すことができない 必ず最後にクリームが残ってしまう ズズズっと不快な音を立ててしまいながら 懸命に啜ろうとしても どうしても飲み干すことができない 何だかそれは感情みたいだ 消化できずに沈殿していく感情 数分前の状態とは違う扱いをうけてしまう 惰性で繰り返される行為には 消化だけが目的に掲げられていて 味わいも何もない 発せられる不快な音が 得られるモノより大きすぎて 価値などとうに失ってしまっている ストローで押し潰すかのように混ぜてみる 綺麗

          フラペチーノ

          ラミネーター

          ラミネーターから吐き出される ぐしゃぐしゃになった物体はもう ゴミ以外の何でもなくて ポケットに手を入れると 指先で確認できたいくつかの穴 まるで心を象徴しているかのようで 辟易とする平日の慌ただしさに 溺れながらの駄作の生産 未来を照らす過去のあなたが 今日も私を突き動かしてく 唇は乾燥してるし 喉の奥には疲労が溜まるし 無造作に伸びた髪の毛に 絡まっているかのような脳内 アクセル蒸して ライトで照らして ウィンカー鳴らして ハンドル切って 法定速度なんて誰にも

          ラミネーター

          フィルター

          先日従兄弟が他界した。 糖尿病を患っていた彼は コロナに感染後容態が悪化したらしい。 昔、従兄弟から譲り受けた PS2はどうしただろうか。 初めてパソコンを買いに行く時は 銀座のApple Storeに連れて行ってもらい 初期設定もいじってもらった。 父が亡くなった時、従兄弟は遺影の前で 顔を赤くしながら泣き続けていた。 従兄弟は俺の秘密に 気づいていたのかもしれない。 以前から日常を取り戻すという言葉に 不快感を抱いていた。 似て非なるものへと変化を重ねている

          フィルター

          花粉症

          やりたいことだけを積み重ねて 単純な日々を消費してる 花粉の辛さは毎年のことで 春の気候に高揚する気持ちと また一つ終える季節への寂しさも毎年のこと あと何回春を迎えるのかわからないまま 桜の開花を待ち侘び木の枝を眺める 風の強さに舞い上がる砂埃 シャンプーの匂いを嗅ぎたい夜 瞳が赤いのは決してあなたのせいじゃない

          花粉症

          散髪

          美容院に行くたびに 切り落とされていく髪の毛を目で追う さっきまで自分の一部だったものが 床に乱雑に散らばっていく 軽快なリズムと心地よい音で 自分の一部が次々と自分で無くなっていく その光景がなんとも不気味である 一箇所にまとめられていく 髪の毛はいつしか形を成して 動き始めるのではないか、などと 陳腐な妄想に駆られる 自分から自分を切り捨てている 感情が断ち切られることを望むかのように 切り落とされた髪の毛が 自分の醜悪な部分を語りかけてくる気がした

          散髪

          めでたさない

          「めでたしめでたし」の後に待つのは いつだって幸せなわけではない。 そんな一言で締め括らないで欲しい。 誰しもの未来には安らぎと苦悩が入り乱れて その中をもがくように生きていく。 自分を肯定するために許しを乞う行為を 哀れだと言うあなたは気づかないだろうけれど いつだって世間が人を傷つけている。 許しを乞うように詫びの言葉を並べる私は 世間から見たら哀れでしかない。 感情は身勝手でしかないけれど その身勝手を許されたいと願うことを あなたはどう思うのか。世間はどう思うのか

          めでたさない