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朝4時に起きてつなぎを着て大阪に向かい、号泣してたこ焼きを抱えて戻って来る話
※このnoteはミュージカル『ビリーエリオット』への思いが溢れすぎた勢いで書いています。
2024年11月23日
午前4時5分
エルトンジョンのLooking Upが鳴る。
夜明けにもまだまだ程遠い朝。
私はいそいそと布団を抜け出す。
隣では娘が布団にくるまって口を全開にして寝ている。
マイルで取った航空券は、始発の6時20分発しか空きがなかったのだ。
4時起きというプレッシャーと闘った私の目元にはいつもの5倍くらいの濃さのクマが鎮座していた。
大丈夫。
私のクマの事など誰も気にしていない。
ドレスを着たって誰も死なないし
ひどいメイクも誰も気にしない
マイケルが教えてくれたから。
5分で化粧を終え、水筒にはパリで買ったストロベリーティーを淹れ、つなぎを着て、デビーを意識して三つ編みをして家を出た。
安心召されよ、おさげではない。後ろに編み込みの1本だ。(娘が転がっている寝室にヘアオイルを取りに行くのが面倒だったのでハンドクリームをヘアオイル替わりにしたことは黙っておいてくれ)
始発を待つ酔っぱらい、タクシーで帰ってきた酔っ払い、まだまだ呑んでる酔っ払いを横目に私は羽田を目指す。
空にはオリオン座。もう冬はすぐそこだ。
5時35分羽田に到着。
私は空腹だった。
空港で何か食べればいいやと思っていた国際線かぶれの私は羽田にてことごとく食いっぱぐれる。
ら、、ラウンジは6時からだと…?
ANAフェスタも6時からだと…?
圧倒的なリサーチ不足の私は仕方なくストロベリーティーを飲んで凌ぐことにした。
舌を火傷した。
当然だ。
「熱い飲みものは、やけどに注意して飲んでください」
水筒は私に注意を促していた。
グッラグラに煮えたぎった熱湯で淹れたストロベリーティーは未だにアッツアツだった。
THERMOSさん、流石です。
6時20分
朝焼けとともに伊丹へ向けて離陸した。
機内サービスが始まる。
昔から大好きなコンソメスープを飲む。
やっぱり美味しい。そしていい温度。
熱々すぎず、かといって飲み終わるまでに冷めちゃったね…となることもなく。
7時30分
伊丹に着陸。
羽田ー伊丹間はあっという間だ。
本日の日帰り弾丸大阪行きの目的は
ビリーエリオット。
東京大千秋楽でもうこれ以上ないくらいの満足感、いや、達成感?いや、幸福感?もう言葉では表せない感情を味わったはずなのに。
気がついたら大阪公演のチケットをチェックしていた。交通費はマイルで賄えばいい。
こういう時のためにマイルを貯めていたのだろう?と思い込んだ。
私にとって今季の初ビリーは春山嘉夢一くん。
カムイビリーのどこまでも伸びる澄んだ歌声、しなやかな踊り、ビシィッと響くタップに度肝を抜かれた。
もう、カムイビリーに夢中だった。
もちろんリョウマビリーもウイチロウビリーもエイトビリーも見た。
リョウマビリーの絶対王者のオリンピアンを見るような感じも
ウイチロウビリーのダイナミックでウイチロウだけのスペシャルな公演も
エイトビリーのもはやビリーなんだかエイトなんだかわからない感じも
同じ演目なのに全然違う、毎回全力で見た。どの回も信じられないくらい泣いた。
それでもやはりカムイビリーが私のスタンダードになっていた。
彼がビリーでいられる最後を見に行かずにはいられなかった。
もう、二度と彼のビリーは見れないのだから。
伊丹に着いた私はいそいそとラウンジに向かった。
羽田で食いっぱぐれた私は学んだのだ。
朝7時半に大阪に着いたところで食い倒れはできないであろうと。
ラウンジで個室のようなゆったりソファに腰を掛け、コーンポタージュを飲み、図書館で借りた岸田奈美さんのエッセイを読んだ。
贅沢だ。
大人になった気がした。(33歳、一児の母)
それでもじっとしているのが苦手な私は思いついたように立ち上がり、とりあえず大阪駅に向かうことにした。
9時15分
阪急梅田駅にたどり着く。
いよいよ空腹でどうしようもない私は立ち食いうどん屋さんへ向かった。
お出汁が美味しい。最後までホッとする温かさで今日初めてお腹を満たした。
9時45分
まだまだ時間はある。さて、何をしよう。
土地勘もないところでゆっくりできる場所も見つけられず(なんせまだ朝9時台)思い立ったようにユニバーサルシティを目指してみた。
10時10分
ユニバーサルシティに着いた。
ユニバには2年前に0泊2日の弾丸夜行バスで行ったがそれっきり。
娘にマリオグッズを買って帰ろうと思った。
マリオが土管から出てくる入れ物に入ったお菓子が割引になっていた。
2年前も買おうか迷ったコインチョコが入ったゴールデンキノコも売っていた。
2年前にも買ったおせんべいが入ったボム兵もあった。ボム兵を並べて置いてもかわいいかなと思った。
いや、勉強しろよ?とシャーペン(我らがDr.グリップ)もあった。
散々迷った結果、光るテレサのキーホルダーを選んだ。
永遠の5歳児の14歳はやっぱり今でも光るおもちゃが大好きだから。
無事に娘にもお土産を買い、大阪駅へ戻った。
おうどんはいい感じに消化されていた。
時刻は11時10分。
いよいよ大阪の街も食べ物屋さんが続々とオープンし始めた。
一番skyシアターに近そうなお好み焼き屋さんを目指し、元気いっぱい1人です!と入っていき豚玉と生ビールを注文した。
ビールはお料理と一緒にされますか?
なんと気の利くお姉さんだこと!
ビールをさっさと飲みたい気持ちはあるけれど、料理を待つ間にビールなくなっちゃうんですけど!と料理を待ちぼうけるのは好きではない。
しかもこれから観劇だ。今はビールは1杯しか飲めないのだ。(尿意に負けてる場合ではない)
待つこと15分程。
アッツアツの豚玉と冷っえ冷えのビールが出てきた。
舌をヒリヒリさせながらアッツアツの豚玉を頬張り、ビールを流し込む。
大人になってよかった。
幸せは美味しいものでできている。
時刻は12時少し前。いよいよskyシアターへ向かう。
KITTE大阪はそれはそれはステキな複合ビルだ。
アンテナショップがこれでもかと入ってる。
うっかり京都屋さんでも北海道屋さんでソフトクリームを買いそうになる。
気をつけろ。これから観劇だぞ。
skyシアターはKITTE大阪の6階にあった。
ロビーにはステキなカフェもある。
気をつけろ、これから観劇だぞ。
お腹をタプタプにしてどうする、自分。
トイレに2回行き、席に着く。
オケのチューニングに浸りながらその時を待つ。
皆さん、ビリーエリオットへようこそっ♪のアナウンスにもう涙。
スモールボーイが出てきただけでもう涙。
ビッグデイビーの歌い出しで涙。
もう水道業者もびっくりな涙腺からの漏水が始まる。
ビリーが登場する。
あれ、なんか背が伸びた気がする。
あれ、なんか表情がちょっと青年っぽくなった気がする。
ぼぉくをっ、抱きぃ上げって、高くっ♪空へとっ♪
どこまでも伸びていく柔らかい声。
私が聴きたかったのはこの歌だった。
歌声だけじゃない。オケの響き、深み。優しいの。とにかく。
カムイくん自身、今日がビリーになれるのが最後の日だ。
どんどん進化してきた。今日が完成形だった。
ここに辿り着くまでどれだけの努力をしたのだろう。
どれだけのプレッシャーと闘ってきたのだろう。
今までで一番不機嫌で、一番悲しんでいて、一番怒っていて、一番嬉しそうで、一番楽しそうだった。
ビリーはやっぱり輝く星だった。
ビリー、おめでとう。
ビリー、本当にありがとう。
ビリーになってくれて本当にありがとう。
ミュージカルビリーエリオットは
ビリーの成長する物語であり、
ビリーになっていく少年のドキュメンタリーでもある。
そこにあるのはただただ全力で挑む姿。
最初から完成された作品ではない。(もちろんオープニング公演から素晴らしいが)
千秋楽に向けて進化し続けて行くのだ。
だからこそ、だからこそ。
いつの日か再演をしてほしい。
ビリーが進化し、オールダービリーとして、トニーとして、炭鉱夫として、何だっていい。戻ってくるまで。
15時40分
グチョグチョになったハンカチをカバンに詰め、晴れやかな気持ちで劇場を後にする。
阪急の近くでたこ焼きを買い込み、伊丹空港でもまたたこ焼きを買い、東京へ戻った。
21時05分
娘と夫と、たこ焼きを温め直して食べた。
せっかちな私はアッツアツになるまでレンジを待てなかったが。
2024年11月24日
午前0時25分
私は11月23日をもう20時間近く活動し、日をまたいだ。
これ以上にない全力を浴びてきたのだから、私も全力でこのnoteに書いている。
ぬるくなったストロベリーティーを飲みながら。
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やっぱり買ってしまった。