地獄の反逆者 松村喬子遊郭関係作品集
1926年、今から98年前に遊郭から脱出した女性がいた。
松村喬子の、遊郭から4人の遊女が脱出するまでを描いた作品。
解説によると「婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約」に日本が調印したのが1925年。女性や子供の売買が禁止されてから百年も経っていないというのが驚きだった。
本文では、遊郭内での人間関係(主人のお気に入り・手駒になっている女性もいればそれに反発するものもいる)が描かれており、まさに群像劇といった様子。
特に集中して読んだシーンは、小波・歌子・川柳・新高の4人が店から逃亡する場面だ。音をたてないように慎重に裏口の鍵を開け、細い路地を抜けてそれぞれ東京・大阪に逃げていく。通りすがりの車や偶々起きていた他の店の主人に、追手ではないかとおびえながら、何とか都会行きの切符を買って安全な場所へと逃げていくのだ。
理不尽な環境や辛い環境から逃げる強さを女性は持っていると思う。ただ、それを実行するためには、社会の助けや自分の思いに同意してくれる誰か、そして自分と同じ理不尽な環境におかれながらもそこから離れた女性たちのロールモデルが必要なのだ。成功例が無ければ、今までの環境に再度とらわれるだけでなく、よりひどい待遇に置かれることもあるのだから。
理不尽な事ばかりの世界で、自分が生きやすい場所を見つけたい。
それは今も昔も変わらないのだと思う。