篠塚辰樹 vs. 冨澤大智とブレイキングダウンが嫌われる理由について

RIZIN大晦日大会のカードが揃ってきており年末なんだなぁというのを感じています。
発表されたカードで気になったのが篠塚辰樹 vs. 冨澤大智の1戦です。
想像できるところではありましたが、冨澤のRIZIN参戦についてはやはり否定的な意見が多くありました。

篠塚は10月のKrushで新しくチャンピオンになった選手であり、トップクラスのキックボクサーと言ってよい存在です。
一方、冨澤に関してはKrushで2戦した後にブレイキングダウンに参戦した人で篠塚とはキャリアに雲泥の差があります。

個人的な感情だけで言えば冨澤のRIZIN参戦は気分が良いものではないというのが事実ではあります。
しかし、個人的な感情で気に入らないというだけではただの感想になってしまうので彼自身やブレイキングダウンがなぜ格闘技ファンから嫌われるのかをもう少し言語化しようと思いました。

ブレイキングダウンは朝倉未来が不良であっても、1分であればそれなりに良い動きができるのではないかということで、実験的に始めた企画であったと記憶しています。
おそらく朝倉未来自身がここまで跳ねることになるとは予想していなかったのではないかと思います。
今となっては彼自身についての動画よりもブレイキングダウン関連の動画のほうが数字を持っています。

ブレイキングダウンについては前科者が出場したり、出場者が逮捕される、会見で流血騒ぎなど他の格闘技イベントと比較すると明らかに治安が悪いイベントで現役のファイターや魔裟斗など格闘技界のOB達、格闘技ファンが嫌っているのはXなどを見ると容易にわかります。

この中で特に格闘技ファンがなぜブレイキングダウンを嫌うのかについて構造を解説しようと思います。

ブレイキングダウンは格闘技界で今最も数字を持っているイベントであることは間違いありません。
ただ、そのイベント内で行われている試合のレベルはお世辞にも高いとは言えず、キャラと乱闘で数字を稼いでいるイベントです。

レベルが低いけど売れているという現象は格闘技界だけではなく、他の業界でも起きることだと思います。
私が最初に思い浮かんだのが、音楽業界のAKB48になります。

AKBは2010年代のCDが売れなくなったと言われた時代にミリオンヒットを連発していたグループではありますが、その歌唱力に関して言えば決して最もレベルが高かったわけではありません。
最も歌がうまかったわけではないけど売れていたグループということになります。
ブレイキングダウンは最もレベルが高いわけではないけど売れているという点で近しいものがあると思います。

ただ、ブレイキングダウンとAKBの違いとして、本業の人たちに対しての敬意があります。
例えば、AKBのメンバーやファンが椎名林檎や宇多田ヒカルよりもAKBの方が歌がうまいなんて絶対言わないと思います。
しかし、ブレイキングダウンに関して言えば一部の出場者はRIZINに出ている本業ファイターの選手に対戦要求を行うようなことがあります。
格闘技ファンからするとその点が一番気に障るのではないかと思います。

今回、RIZINに参戦する冨澤はブレイキングダウンで連戦連勝をあげて、皇治に対して対戦要求を行いました。
皇治は以前から対戦要求されることが多い選手ですが、今までは相手にしていない様子を見せても反応は示していました。
ただ、今回は反応すらしていません。
これが本当の「眼中にない」ってやつなんだろうと思います。

ブレイキングダウンで暴れているだけであればよいものの、レベルが低いものを勘違いして、自分より上位というか全く次元が違う舞台で闘っている選手に喧嘩を売る部分がファンの気に触れる部分だと思います。

だからと言って冨澤がブレイキングダウンに出ること自体を非難するのは個人的に違うという考えでもあります。
彼は結婚して子供もいます。
生活を送らないといけないということを考えると、Krushあるいは他の団体でも格闘技だけではなかなか稼げないという現実は変わりませんし、仮にその道を選んでいたとしたら今の知名度や大晦日の試合は無かったでしょう。
しかもキックボクシングで金を稼ぐには他のプロのファイターを叩きのめし、名をあげる必要があり、並大抵のことではありません。

そう考えると今の自分のスキルで一番稼ぎやすい舞台を探してブレイキングダウンに辿り着くのもわからなくもないです。

そして現に相手が素人だらけとはいえ、Krushでは絶対に得られなかった強者のキャラを手に入れています。

ここまでで終わっていれば、彼へのヘイトが向くことはなかったと思いますが、勘違いしたのか本業のトップファイターに絡んでしまいました。
まぁ結果的に篠塚と大みそかに闘えるので成功と言えば成功なのでしょうが・・

現在の冨澤の立ち位置としては「回転ずしに並ぶ大トロ」みたいなもので回転ずしチェーンが高級寿司屋に喧嘩を売っているようなものですね。

まぁRIZINとしては話題になるので良いカードということなのでしょうが。。