オーダーメイド推し概念香水を作った話
作っちまったんだよ、俺の思う推し香水ってヤツをさ……
ちょうどずっと愛用していた香りが1本無くなり、同じものを買い直そうか迷っていたところでもあったため、ならばいっそと須郷さんのイメージを踏まえた自分用普段使い香水をオーダーメイドしてきました。
そう、俺の思う俺が使えるキャラ香水を作ったぞという話です。
須郷徹平キャラ香水に思うこと
さて須郷さんには、というか須郷さんにも、公式から発売されたキャラクターイメージの香水は既にあるわけです。
あるわけですが、あれ(特に女性が)肌に乗せて普段使いしようと思うと絶妙に難しくありませんか……?(そもそもあの手の商品は使うことを前提にしていないのではないかという議論は、今は横に置いておきます)
少なくとも私には少々難易度が高かった。あの香りをジムに通う男子が纏っていたら爽やかで微笑ましくてグッとくるんですけど、自分でやると私服でもオフィスカジュアルでも、絶妙にこう、年の離れた弟【21歳、大学とバイトの合間に近所の少年サッカーチームのコーチのボランティアもしてる】がちょっと色気づいて買った愛用香水を出がけにうっかり間違えてプッシュしてきた感が否めない……。
何というか、キャラ香水ってやっぱりいわゆるアニメファンをターゲットにしていると思うので、そのキャラのイメージはキープしつつも、ある程度無難な……というか万人受けを目指して作られているのだろうなと思うわけです。もちろん価格面から考えても、マニアックな香料はおそらく使いづらいでしょうし。
それは別に悪いことではない。大抵の日本人は無難なものが好きだし、例にもれず私も無難は大好きです。
が、その「無難」の枠の中でキャラクターイメージの香りを表現するとなった場合、『見た目的にも内面にもワンセンテンスで言い表せるような個性やエピソードがないキャラ』だと、いくらイメージ香水とはいえ、どうしても表面的な要素を描くのみにならざるをえないのかなと。
これは別に、須郷さんを下げる意図があるわけでは断じてありません。が、実際彼はアニメキャラとして見るとものすごく地味というか、どちらかといえば二次元っぽい個性をあえて排しているだろうPSYCHO-PASSキャラ全体においても、生々しい複雑さがあるというかキャッチーさに欠けると思うのです(比較すると狡噛、宜野座、輝はまだしもだいぶキャッチーだし、槙島、縢、灼あたりはキャラとして確固たる強さがあるなと感じます)。
それゆえいざキャラ香水を作るとなったら、やはり実直真面目な青年の最大公約数的なものになってしまうのかなと。
いやだってちょっと羨ましかったですもん輝香水の説明にある「火薬の残り香」とかティーノート(これはロシア系のアイデンティティの表現だと思う)とか……あれができるなら須郷さんにだってあっても良かったじゃないですか仄かなエンジンオイルをイメージしたにおい(あるのかそんなの)とか大友さんのブランデーとか、そうせめてブランデーとか沖縄要素とかそういう彼ならではのものが。あるんだよなのに何でそっち採用しないんだよノイタミナアパレル。
ようは何が言いたいかというと、使うにしてもキャラクターの表現にしても、やや爽やか青年っぽさが過ぎるな、と感じてしまったんですよね。
最初はまぁありかなとも思ったのですが、考えれば考えるほど、須郷徹平としてあの香りはちょっと『物足りない』。なるほど朗らかな大型犬の子犬のような大尉時代の彼のイメージにはピッタリだと思うものの、個人的に彼にはもう少し翳りというか湿気というか苦みというかくすみというか、ともかくそういう確かな陰の要素があってほしい。だって、それらを内包してこそ須郷徹平なのだから。
というわけで冒頭の文章に戻ります。いざ往かんオーダーメイド香水の道。
そもそもオーダーは以前から気になっていた
実は須香水のオーダー自体は、公式からの発表前にもオタク向け推し香水オーダーサービスのScentlyさんでやったことがありました。
Scently
こちらは対面ではなくネットオーダー式(ちなみにキャラ香水専門なのでオーダーシートの質問もイメージカラーだの何だのと完全にそっち方面に則っています)なのですが、一方通行で須郷徹平の概念をオーダーすると、やはりどうしてもファッションブランド系の無難なメンズフレグランスが出来上がるんですね。スポーティーなビジネスパーソンが使いやすいような(ほら最大公約数!)。
それはそれで悪くないし、調香師さんチョイスで伝えたイメージを形にしてもらえる楽しみもあったのですが、今回は「推し概念も感じつつも自分が日常的に使うもの」を作りたいな~という気持ちがあったため、別の場所で対面でのオーダーをしてきました。
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、『リベルタ・パフューム』というフレグランスブランドで、調香師さんと一緒に自分の香りを作れるというサービスを行っています。香水沼の人々が足を踏み入れるような場所なので、こう言っちゃなんですがかなり本格的です(ゆえに値段は推して知るべし)。
リベルタパフューム フルオーダー
今回はこちらで、概念香水をお願いしました。
いざオーダー!そしてマイ須香水完成へ……
……とはいえそこは泣く子も黙るお洒落プレイス中目黒の、しかも目黒川沿いの路地を入ったところにあるこれまたお洒落なスペースで「推しキャラ概念香水」という単語を出すのは憚られたため(しかも作成時は調香師さんと1対1なので余計に)、オーダー時は己の目指すイメージをふんわりぼかして言語化※ しつつ、かつ自分の好みの香りの系統になるようベースを選んで調整していきました。
リベルタパフュームでのフルオーダーは、まず骨格となるベース香料を選び(シトラス系、ウッディ系、フローラル系といったシングルノートのブレンド香料が18種類用意されています)、そこに好みでオプションの香料をトッピングしていく形式です。
調香の持ち時間は1時間で、その間に最大5回(5パターン)までブレンドを変えて調香してもらいます。基本的には最初の1回ないし2回で骨格を決め、残りでトッピングや割合を変えて調整する感じです。ベースやオプションの割合は調香師さんと相談しつつ決めていきます。
もちろん調香師さんはプロなので、自分で決められない部分はお任せで進めても問題ないと思います。が、特に自分が使う・身に纏いたいものを作るつもりでオーダーするのであれば、苦手な香りはしっかり伝えた方がいいです(これは実際のオーダー時にレコメンドしてもらったものでも同様で、NGの時はきちんと伝えた方が後悔がない)。
私は瓜っぽいにおいが苦手なのと、昨今のお洒落ピープル御用達メゾンの香水(ディプ…とかイソ…とかですね)(もちろん両ブランドとも好きな香りもあるけれど)で使われがちなTHEウッディな感じ……ようはベチバーとかシダーウッドとかだいたい絶対ベースに入ってると思うのですが、あれらもなかなか上手に香らせられないため、その辺りは事前にしっかり話しておきました。
上記を含め、イメージ以外で伝えたことは以下のとおりです。
・ユニセックスで気負わず普段使いできるものにしたい
・奇をてらった感じよりも肌に馴染む感じ
・甘すぎない、重すぎないものがいい
・実際好きで使っている香水の銘柄
・苦手な香り、避けたい方向性
こんな感じのことを担当の調香師さんと1対1で話しながら、1時間かけてマイ須香水を作り上げていきました(完成品の詳細は次セクションで)。
なおリベルタパフュームは対面とオンライン2パターンのフルオーダー方法があるのですが、店舗で対面オーダーの場合、1時間の調香タイムの後更に1時間待てば、当日中に完成品を持ち帰ることが可能です。
今回の構成とその他須香水との比較
というわけで、実際に作ったものについて詳細を述べます。
そしてついでに過去にオーダーしたもの(参考①)や、公式ノイタミナ公式のキャラ香水(参考②)の構成と感想も掲載しました。こうして比較してみると、シトラスに始まりウッディに落ち着くのはすべて共通なのですが、重なる部分もあれば異なる部分もあって興味深いなと感じます。
今回のオーダー
⇒トップ・ミドル・ラストという構成で作っていたわけではないため正確に分けるのは難しいのですが、あえて言うなら、
・トップ:最初にファーストガーディアン時代のあの爽やかお化けみたいな親しみやすいシトラスがわっと立ちのぼって、
・ミドル:その後はトップの残り香にクローブがピリッとした棘と苦みを加えてしばらく漂い、
・ラスト:徐々にTHE東地さんボイス的甘く暖かなウッディノートに落ち着いていく……でもアガーウッドのほんの少しザラッとした寺?諸行無常?っぽさもあり……
みたいなそんな感じ。バニラが入ってるのはわからなかった。ミドルのクローブの「少々とっつきづらさは感じるけれど冷たすぎるわけではない、むしろ冷よりは温よりな塩梅」がいわゆる初期郷さん時代ですね。クローブの後ろに甘さが顔を出し始めるとみるみる安定感が増して、今に至る後期郷さん的な印象になってきます。
なお上記の構成から想像つく方もいらっしゃると思うのですが、おそらく100%須郷徹平かと問われたら少し違うかもしれません。須郷さんなら、本当はもう少しドライなウッディでもいいかなという具合です。
これは前述したように「私自身が日常的に使える」ものを作ることも目的のひとつだったためで、それゆえ須郷さんっぽさからは少々離れるものの、苦手な辛口のウッディノートはあえて避けました(でもパチュリぐらいは試しても良かったかも)。あと沖縄感というかアクア、マリン的なものも場合によって瓜っぽくなるので候補にあがらず。結果この組み合わせに落ち着いた次第です。
後から考えると、リーフィーシトラスをドライレモンかハーバルグリーン+ユズにしても良かったかもしれない。あとこれも今更気づいたんですが、季節限定で竹ベースなるものがあったらしく、そちらを試せなかったのは残念。
そして実はトッピング香料にコニャックオイルがあり、ちょっと待って大友先輩の形見のブランデー要素追加できるじゃん!!!!!とも一瞬思ったのですが(これは実際に調香師さんもオススメしてくれたし、えぐみを足す意味ではアリだった)、5秒検討して今回は見送りました。なぜなら私の中でコニャックといえば大友さんより先にアレックス・キャゼルヌなので……いつかキャゼルヌ先輩のイメージで作る時があったら使おうと思います……それこそどエロい大人の男みたいな感じになりそうだけど……。
参考①以前Scentlyさんで頼んだもの
⇒モブ系メンズ香水っぽい中にピリッと光るジンジャーのスパイシーさが、なるほど須郷さん要素なのだなぁと感じた構成でした。ウッディーが辛口よりなのは、ユニセックスではなくキャラクターに寄せたからなのかなと想像します。
参考②ノイタミナ公式キャラ香水
⇒香料だけ見ると、ミドルが完全に燐さんであり青柳さんなんですよね……いやそれはそれでとんでもなく萌えるんだけど。そしてこの要素のどこに起因するのかわからないのですが、公式須香水、なぜかトップからずっとテンション高めの瓜っぽさを感じました(それもあって使いこなせなかったのもある)。
ちなみに投票で選抜落ちしたAはラベンダー、サイプレス、ヒノキ、サンダルウッド、ムスクでしたが、個人的にはそちらの方が好きでした。
フルオーダー香水、けっして安い買い物ではない、何なら富豪の遊びに近い行為だけれど、出来上がった瓶を抱えて駅までの道を歩くのはちょっと顔がにやけてしまうぐらい楽しかったので、1年ぐらい経って今のストックを使い切ったタイミング等でまたチャレンジしてみたいなとも思っています。
オレンジグリーン(オレンジ・グレープフルーツ・ガルバナム)やロマンティックローズ(ローズ、コリアンダー、イリス)を使って霜月美佳ちゃんイメージとかも作れそう。
色々考えるだけでも楽しいので、ご興味ある方はぜひ試してみてください!